法人の税務調査で指摘されやすい6つの経費処理

法人の税務調査では、「経費という科目名になっているか」ではなく、その支出の内容や取引の実態に問題がないかが確認されます。
特に、次のような経費処理は事実関係や税務上の取扱いを確認しておきたい項目です。
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経費処理 |
主に確認したいポイント |
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社長・役員の個人的な支払い |
会社の事業との関係 |
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架空・水増しした経費 |
取引の実在性、実際の金額 |
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接待・会食費 |
相手、目的、金額、事業との関係 |
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修繕費 |
原状回復か、資産価値を高める工事か |
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外注費 |
契約だけでなく実際の働き方 |
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決算時に計上した費用 |
決算日までに債務が確定しているか |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
社長や役員の個人的な支払いを会社の経費にしている
法人と社長個人のお金は分けて考える必要があります。
たとえば、家族との私的な食事や個人で使用する物品の購入など、会社の事業とは関係のない支出を会社の経費にしている場合は注意が必要です。
会社のクレジットカードで支払ったからといって、自動的に会社の経費になるわけではありません。
役員が個人として負担すべき支出を法人が負担している場合、その内容によっては役員に対する給与として扱われることがあります。
その場合、法人税だけでなく、役員給与としての損金算入の可否や源泉所得税など、別の税務上の問題につながる可能性もあります。
会社と個人の支払いが混在している場合は、決済方法ではなく「誰のための、何の支払いなのか」を整理することが大切です。
架空の支払いや水増しした金額を経費にしている
実際には存在しない取引を帳簿に計上したり、実際より大きな金額を経費にしたりする処理は認められません。
たとえば、実際には50万円しか支払っていないにもかかわらず、100万円を支払ったことにして経費を計上するケースです。
領収書や請求書だけを用意しても、取引の実態がなければ適正な経費にはなりません。
税務調査では、帳簿だけでなく、請求書、契約書、銀行口座の入出金などを組み合わせて取引内容が確認されることがあります。
また、申告内容の正確な事実を把握するために必要と判断された場合には、取引先などに対する反面調査(※取引先側の資料などから取引の事実を確認する調査)が行われることもあります。
接待・会食費について参加者や事業目的の記録がない
接待や会食の支払いについては、「飲食店の領収書があるから大丈夫」とは限りません。
誰と、何の目的で会食したのかが重要です。
たとえば、
- 会食した年月日
- 参加した取引先などの会社名・氏名
- 自社との関係
- 飲食店の名称・所在地
- 支払金額
- 会食の目的や事業との関係
などを記録しておくと、後から内容を確認しやすくなります。
国税庁も、一定の飲食費について、年月日や参加した得意先等の氏名・名称、その関係、飲食店の名称・所在地、金額などを帳簿書類へ記載することを求めています。
なお、交際費等については法人の規模や飲食費の金額などによって損金算入の取扱いが異なります。現在は、一定の要件を満たす1人当たり1万円以下の飲食費は交際費等の範囲から除かれる制度があります。
「接待交際費に入力してあるから経費になる」と判断せず、取引の内容と適用要件を確認しましょう。
参考:交際費課税の特例
資産の価値を高める工事を一括で修繕費にしている
建物や設備の工事代を「修繕費」として一括で経費にしている場合も、税務上の取扱いを確認する必要があります。
一般的な維持管理や原状回復のための費用は、修繕費として損金に算入できます。
一方、固定資産の使用可能期間を延長したり、価値を高めたりする部分は、原則として資本的支出となります。
資本的支出とは、簡単にいえば、支払った年度に全額を経費にするのではなく、原則として資産として計上し、減価償却を通じて費用にしていく支出です。
たとえば、単に壊れた部分を元に戻したのか、新しい設備を追加して建物の機能を向上させたのかでは、判断が変わる可能性があります。
工事会社の請求書に「修繕工事」と書いてあるだけで決まるわけではありません。工事の名称ではなく実際の工事内容から判断することが重要です。
関連記事:法人の借入金返済は経費になる?借入金を活用した税金対策と勘定科目を解説
契約書では外注でも実際の働き方が従業員に近い
業務委託契約を結び、「外注費」として処理していても、契約書の名称だけで税務上の取扱いが決まるとは限りません。
実際の働き方が雇用契約またはそれに準ずるものであれば、給与として取り扱われる可能性があります。
国税庁は、給与か請負による報酬かが明らかでない場合の判断材料として、
- 他の人が代わりに仕事をできるか
- 仕事をする際に指揮監督を受けるか
- 完成前に成果物がなくなった場合でも報酬を請求できるか
- 材料や仕事に使う道具などを誰が用意しているか
などを挙げています。
実際には複数の事情を総合して判断されます。
外注費として処理していたものが給与に該当すると判断された場合、消費税の仕入税額控除だけでなく、源泉所得税などに影響する可能性があります。
外注スタッフを継続的に利用している会社は、契約書だけでなく、実際の指示方法や勤務実態まで確認しておくことが大切です。
サービス提供前や金額未確定の費用を経費にしている
「いずれ支払う予定だから」という理由だけで、決算前に費用を計上できるわけではありません。
法人税では、販売費や一般管理費などについて、その事業年度終了の日までに債務が確定していることが原則として必要です。
国税庁は、債務が確定しているかどうかについて、主に次の3つを要件としています。
- 決算日までに債務が成立している
- 決算日までに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
- 決算日までに金額を合理的に算定できる
そのため、契約しただけでサービスの提供を受けていない場合や、金額を合理的に算定できない場合には、その年度の費用として認められないことがあります。
特に決算直前に計上した多額の外注費、広告費、コンサルティング費用などは、「いつサービスを受けたのか」「金額はいつ決まったのか」を確認しておきましょう。
関連記事:合同会社の決算は自分でできる?自分でするデメリットとスムーズにするやり方
税務調査で「バレる経費」は取引内容や事業との関係から判断される

税務調査で経費を確認するときは、領収書だけを見るわけではありません。
帳簿、請求書、契約書、入出金など複数の情報から、申告内容と実際の取引が一致しているかが確認されます。
「領収書があるから認められる」「領収書がないから必ず認められない」といった単純な判断ではないことを理解しておきましょう。
経費はなぜ税務調査で「バレる」のか
税務署は会社が提出した申告書だけで判断しているわけではありません。
国税庁は法定調書をはじめ、情報照会や税務調査などを通じてさまざまな資料情報を収集し、調査・指導に活用しています。
そのうえで、実際の税務調査では帳簿や証拠資料などから取引内容が確認されます。
申告内容や各種資料情報から調査先が選ばれるから
国税当局では、申告内容や収集した資料情報などを分析し、税務調査に活用しています。
そのため、「税務署は自社が提出した決算書しか持っていない」と考えるのは適切ではありません。
取引先などから提出された法定調書や、過去の調査などで得られた資料情報が確認に利用されることがあります。
ただし、特定の経費があるだけで税務調査の対象になるとは限りません。
税務調査の対象はさまざまな情報を踏まえて選定されます。
帳簿と領収書・請求書・契約書の内容が一致するか確認されるから
税務調査では、総勘定元帳などの帳簿と、その根拠となる資料を照らし合わせて確認されることがあります。
たとえば、100万円の外注費があれば、
「誰に支払ったのか」
「何を依頼したのか」
「契約書はあるか」
「請求内容と支払額は一致しているか」
「実際に業務が行われているか」
といった事実関係を確認していきます。
領収書や請求書を保存するだけでなく、帳簿から実際の取引内容まで説明できる状態にしておくことが税務調査対策になります。
会社の口座と代表者名義の口座が確認されることがあるから
税務調査では、調査に必要な範囲で預金の動きが確認されることがあります。
特に会社と社長個人のお金が混在していると、取引の内容を確認するために説明や資料が必要になるケースがあります。
たとえば、会社の売上代金が代表者個人の口座に振り込まれていたり、会社の経費を個人口座から頻繁に支払っていたりすると、会社と個人の取引を整理する必要があります。
法人と代表者は別の主体です。
普段から会社用と個人用の口座・クレジットカードを分けておくと、経理処理だけでなく、税務調査で取引を説明するときにも整理しやすくなります。
必要に応じて取引先へ確認されることがあるから
会社側の資料だけでは正確な事実を把握することが難しい場合、取引先などへの反面調査が行われることがあります。
国税庁も、納税者の申告内容について正確な事実を把握するために必要と認められる場合には、取引先等への反面調査を実施することがあると説明しています。
たとえば、自社では「100万円を外注費として支払った」と記録していても、取引先側の記録や入金額と大きく異なれば、その理由を確認する必要があります。
税務調査を意識して帳簿だけを整えるのではなく、実際の取引内容と一致した経理処理を日頃から行うことが重要です。
経費を指摘された場合に影響する税金と加算税

経費の処理に誤りがあった場合、影響するのは法人税だけとは限りません。
取引内容によっては消費税や源泉所得税にも影響します。
また、申告した税額が本来より少なかった場合には、本来納付すべき税金に加えて加算税や延滞税が発生することがあります。
法人税だけでなく消費税や源泉所得税にも影響する
たとえば、経費としていた支出が社長個人への給与に該当すると判断された場合、法人税だけでなく源泉所得税にも影響する可能性があります。
また、外注費として処理していた支払いが実態として給与だった場合には、消費税の取扱いにも影響する可能性があります。
つまり、1つの経費処理の誤りが複数の税目へ影響することがあるということです。
不安な経費を確認するときは、「法人税で経費になるか」だけではなく、消費税や源泉所得税への影響も含めて確認する必要があります。
誤りの内容によっては過少申告加算税などが生じることがある
経費の計上誤りによって法人税などを少なく申告していた場合には、追加の本税に加えて、過少申告加算税や延滞税が発生することがあります。
税務調査を受けた後の修正申告などでは、過少申告加算税は原則として新たに納付する税額の10%です。一定額を超える部分については15%となる場合があります。
さらに、事実の仮装・隠蔽が認められる場合には、過少申告加算税に代えて重加算税の対象となる可能性があります。
一方で、税務署から調査通知を受ける前に自主的に誤りを確認して修正する場合は、加算税の取扱いが異なることがあります。
そのため、不安な経費を見つけたときは放置せず、まず事実関係と過去の申告内容を確認することが大切です。
不安な経費があるときの対応
「税務調査でバレるかもしれない」と不安になったときに、証拠資料を捨てたり、帳簿を事実と異なる内容に変更したりしてはいけません。
まずは、実際に何があったのかを整理することから始めましょう。
調査連絡の前か後かによっても、取るべき対応が変わります。
調査連絡前は取引の事実関係を8項目に整理する
税務調査の連絡を受ける前に不安な経費を見つけた場合は、次の8項目を整理してみましょう。
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確認する項目 |
内容 |
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1. 支払先 |
誰・どの会社へ支払ったか |
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2. 支払日 |
いつ支払ったか |
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3. 金額 |
実際にいくら支払ったか |
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4. 支払目的 |
何のための支出か |
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5. 事業との関係 |
会社の売上や業務とどう関係するか |
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6. 取引内容 |
商品購入、業務委託、会食など何をしたか |
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7. 証拠資料 |
領収書、請求書、契約書、メールなどがあるか |
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8. 会計処理 |
どの年度・勘定科目で処理したか |
この8項目を整理すると、「単に資料が不足しているだけなのか」「経理処理そのものを見直す必要があるのか」を判断しやすくなります。
領収書だけで判断せず、メール、チャット、契約書、振込記録、成果物など、取引の実態を確認できる資料も一緒に整理しましょう。
関連記事:税務調査が入るとどうなる?法人の調査の流れ・結果・最初にすること
誤りが見つかったら申告内容を見直し修正申告の要否を確認する
確認した結果、過去の申告に誤りがあると分かった場合は、修正申告(※申告した税額が少なかった場合などに正しい内容へ直す手続き)が必要か確認します。
このとき、帳簿の該当部分だけを削除して終わりにしてはいけません。
すでに法人税の確定申告をしている年度であれば、経費を減らすことで所得や法人税額が変わる可能性があります。さらに消費税や源泉所得税への影響も確認する必要があります。
また、修正する時期によって加算税の取扱いが変わる場合があります。
過去の申告に影響する可能性がある場合は、帳簿だけを直す前に税理士へ確認するとよいでしょう。
調査連絡後は税理士に相談する
すでに税務調査の連絡を受けている場合は、不安な経費を自己判断で修正する前に税理士へ相談することをおすすめします。
調査通知後に修正申告を行った場合、加算税の取扱いが調査通知前とは異なることがあるためです。
税理士へ相談するときは、
- 税務署から連絡を受けた日
- 調査予定日
- 対象となる税目・期間
- 不安に感じている経費
- 関係する領収書や請求書
- 契約書
- 入出金記録
- 過去の申告書
などを準備すると、状況を整理しやすくなります。
石黒健太税理士事務所には、税務署での勤務経験を持つベテランスタッフが在籍しています。税務署側の視点も踏まえながら、事前準備や当日の対応をサポートします。
関連記事:顧問税理士はいらないのか?会社が最低限身につけるべき知識
税務調査の経費に関するよくある質問

最後に、法人の経営者から相談されることが多い経費についての疑問を整理します。
Q.領収書や契約書が見つからない経費は、必ず認められませんか?
領収書や契約書がないという理由だけで、直ちにすべての経費が認められなくなるとは限りません。
ただし、実際に取引があったことや、その支出が会社の事業と関係していることを説明できる資料は重要です。
銀行の振込記録、請求書、メール、チャット、発注書、納品書、成果物など、取引を確認できる資料が残っていないか探してみましょう。
一方、実際には存在しない取引について、後から事実と異なる領収書や契約書を作ることは適切ではありません。
資料が不足している場合は、残っている事実と資料をそのまま整理することが大切です。
Q.法人カードで支払えば、会社の経費として認められますか?
法人カードで支払っただけでは、会社の経費として認められるとは限りません。
重要なのは支払方法ではなく、その支出の内容です。
たとえば法人カードで家族との私的な食事代を支払っても、それだけで会社の経費になるわけではありません。
反対に、社長が一時的に個人のカードで会社の必要な物品を購入した場合でも、事業上必要な支出であることが確認できれば、適切な精算・会計処理を行える場合があります。
「どのカードを使ったか」と「税務上経費になるか」は分けて考えましょう。
Q.税務調査の連絡前に問題のある経費を見つけたら、帳簿から削除すべきですか?
自己判断で帳簿から削除するだけでは不十分です。
すでに確定申告が終わっている年度の経費であれば、経費を減らすことで法人税などの申告内容が変わる可能性があります。
まず、
- どの経費に問題があるのか
- 何が誤っているのか
- どの事業年度に影響するのか
- 法人税・消費税・源泉所得税への影響があるか
- 修正申告が必要か
を確認しましょう。
また、帳簿や証拠資料を事実と異なる内容へ変更することは避けてください。
調査通知前の自主的な修正と調査通知後の修正では加算税の取扱いが異なる場合があるため、申告済みの経費に誤りを見つけた場合は早めに税理士へ確認すると安心です。
まとめ
税務調査で「バレる経費」を心配している場合に大切なのは、どうすれば見つからないかではなく、その経費を事実に基づいて説明できるかを確認することです。
特に注意したいのは、社長・役員の個人的な支払い、架空・水増し経費、記録が不十分な接待・会食費、資本的支出に該当する可能性がある修繕費、実態が給与に近い外注費、決算日までに債務が確定していない費用です。
不安な経費がある場合は、まず支払先、金額、目的、事業との関係、証拠資料などの事実関係を整理してください。
誤りが見つかったからといって、自己判断で帳簿だけを書き換えるのではなく、過去の申告や他の税金への影響、修正申告の必要性まで確認することが重要です。
石黒健太税理士事務所では、税務調査の連絡を受けた法人だけでなく、「まだ調査の連絡はないが、過去の経費処理に不安がある」という段階からのご相談にも対応しています。
税務や経営のお悩みは、石黒健太税理士事務所へお気軽にご相談ください。HPのお問い合わせフォームからは、お電話・メール・LINEの中から、お好きな方法でご連絡いただけます。


