法人税務

税務調査の対策とは?法人が平時・通知後・当日・調査後にすること

税務調査の連絡を受けると、「何を準備すればよいのか」「過去の処理に問題がないか」と不安になる方も多いでしょう。

税務調査の対策で大切なのは、調査を避ける方法を探すことではありません。帳簿や資料を整理し、申告内容について事実に沿って説明できる状態にしておくことです。

この記事では、法人が行いたい税務調査の対策を、平時・通知後・調査当日・調査後に分けて解説します。税務調査について税理士へ相談した方がよいタイミングも紹介するため、何から始めればよいか分からない方は参考にしてください。

目次

税務調査の対策は「調査を避けること」ではなく正しく説明できる準備をすること

税務調査の対策とは、売上や経費を取り繕うことではありません。日頃から正しく記帳し、申告内容の根拠となる資料を保存して、質問に事実どおり回答できるようにすることです。

まずは、現在の状況に応じて次のことから始めましょう。

今の状況

まずやること

まだ税務調査の連絡はない

帳簿や領収書などを日頃から整理する

税務署から連絡を受けた

調査日時や対象期間、必要資料などを確認する

税務調査を控えている

資料と申告内容に違いがないか確認する

税務調査の当日

分からないことを推測で答えず、事実を確認して回答する

税務調査後に指摘を受けた

指摘内容と修正申告の影響を確認する

法人は、帳簿を備えて取引を記録するとともに、帳簿や取引に関して作成・受領した書類を原則として7年間保存する必要があります。欠損金が生じた一定の事業年度などは、10年間の保存が必要です。

メールやクラウドサービスなどで受け取った請求書・領収書といった電子取引データについても、電子データのまま保存する必要があります。紙の資料だけでなく、電子データの保存状況も確認しておきましょう。

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【平時】税務調査の連絡が来る前にしておきたい5つの対策

税務調査の連絡がない段階でできる最も有効な対策は、日々の経理を正しく行い、取引の内容を後から確認できる状態にすることです。

  1. 会計帳簿と実際の取引が合っているか定期的に確認する
    会計ソフトの残高と、預金通帳、売掛金、買掛金、現金などの残高を定期的に照合します。
    入力漏れや二重計上を申告前に見つけやすくなり、決算後に過去の取引を調べる負担も減らせます。
  2. 領収書・請求書・契約書・電子データを整理して保存する
    資料は、年月や取引先ごとに整理すると確認しやすくなります。領収書だけでは内容が分からない支出については、参加者、目的、案件名などの事実も残しておきましょう。
    電子メールやWebサイトから受け取った請求書などは、電子帳簿保存法のルールに沿って保存します。
  3. 会社のお金と代表者個人のお金を分ける
    法人名義の口座やクレジットカードを使い、会社と個人の支払いを分けます。
    代表者が立て替えた場合や会社から代表者へお金を渡した場合は、その目的と精算内容を記録してください。会社と個人のお金が混在すると、支出の事業関連性を説明しにくくなります。
  4. 前年から大きく変わった数字や未精算のお金は理由を残しておく
    売上や外注費、役員貸付金、仮払金などが前年から大きく増減した場合は、その理由と根拠資料を確認します。
    数字が変化したこと自体が問題になるわけではありません。新規契約、大型設備の購入、取引条件の変更など、変化した理由を説明できることが大切です。
  5. 判断に迷う取引は申告前に税理士へ確認する
    役員や関係会社との取引、私的利用が混在する支出、売上の計上時期などは、税務上の判断が難しくなることがあります。
    申告後に処理を見直すより、取引時または決算前に税理士へ確認した方が、必要な資料もそろえやすくなります。

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【通知後】税務署から連絡が来たら慌てず確認・準備する

実地の税務調査では、原則として、調査日時や場所、対象税目、対象期間などが事前に通知されます。連絡を受けたら、慌てて資料へ手を加えず、通知内容の確認と資料の整理から始めましょう。

  1. 連絡元・日時・場所・調査目的・対象税目・対象期間・必要資料を確認する
    税務署名、担当者の所属と氏名、連絡先を確認します。あわせて、調査開始日時、場所、目的、対象となる税目・期間・帳簿書類を記録してください。
    電話の内容に不明点がある場合は、その場で曖昧にせず確認しましょう。顧問税理士がいる場合は、早めに連絡内容を共有します。
  2. 帳簿や領収書、電子データを削除・上書きせずそのまま保管する
    税務調査の連絡後に、帳簿の数字を書き換えたり、資料を作り替えたりしてはいけません。メール、会計データ、請求書なども削除せず、そのまま保存します。
    誤りの可能性を見つけたときは独断で修正せず、事実関係と元の記録を整理したうえで税理士へ相談してください。
  3. まずは通知された範囲の帳簿や資料を集める
    対象期間の総勘定元帳、仕訳帳、決算書、申告書、請求書、領収書、契約書、預金通帳、給与資料などを集めます。
    最初から会社にある全資料を無差別に用意するのではなく、まず通知された税目・期間・資料の範囲を基準に整理しましょう。
  4. 集めた資料と申告内容に違いがないか確認する
    帳簿と申告書、請求書、契約書、入出金の記録などを照合します。
    違いを見つけた場合は、いつ、なぜ生じたのかを確認してください。税額へ影響する可能性があるときは、修正申告(※申告した税額が少なかった場合などに、正しい内容へ直す手続き)が必要か税理士と検討します。
  5. 社内の対応窓口を決め、必要に応じて税理士へ相談する
    調査担当者への連絡や資料提出を複数人が別々に行うと、回答内容や提出状況を管理しにくくなります。代表者、経理担当者などから社内窓口を決めましょう。
    顧問税理士がいない法人でも、税務調査の連絡後に別の税理士へ相談できる場合があります。依頼できる業務や日程は税理士によって異なるため、早めの確認が必要です。

【調査当日】落ち着いて対応するために注意したい5つのこと

調査当日は、質問を早く終わらせようとして曖昧な回答をする必要はありません。聞かれた内容を確認し、分かる範囲で事実に沿って回答することが基本です。

  1. 調査担当者の所属・氏名と身分証明書を確認する
    実地調査を行う税務職員は、身分証明書と質問検査章を携帯し、納税者から求められた場合は提示することとされています。
    調査を始める前に、担当者の所属、氏名、身分証明書を確認しましょう。
  2. 分からないことは推測で答えず、確認してから回答する
    数年前の取引について、記憶だけで正確に答えるのが難しいこともあります。その場合は「資料を確認してから回答します」と伝え、契約書や担当者の記録を確認してください。
    分からないことを推測で答えると、後で資料との食い違いが生じる可能性があります。
  3. 何を質問され、何と答え、どの資料を渡したか記録する
    質問内容、回答内容、提示・提出した資料、追加で求められた資料を記録します。
    原本を提出する場合は、資料名や提出日を記録し、必要に応じて控えを残しておくと、その後の対応を整理しやすくなります。
  4. 追加で資料を求められたら、内容を確認して対応する
    調査の過程で、事前に通知されたものとは別の資料を求められることがあります。何の確認に必要な資料なのか、対象期間や提出方法、期限を確認してください。
    その場ですぐ用意できなければ、いつまでに提出できるかを相談します。
  5. 資料を隠したり書き換えたり、事実と違う説明をしたりしない
    税務調査では、資料や事実をありのまま示すことが重要です。資料の隠蔽や改ざん、事実と異なる説明は、問題を大きくする可能性があります。
    説明が難しい取引があっても、まず事実関係を整理し、必要に応じて税理士から税務上の考え方を説明してもらいましょう。

【調査後】指摘を受けても内容を確認してから対応する

税務調査で指摘を受けても、その場ですぐに結論を出す必要はありません。指摘の理由や対象金額を確認し、自社の資料や税務上の取扱いと照らし合わせて対応を判断します。

  1. 追加で求められた資料と提出期限を整理する
    調査後に追加資料を求められた場合は、資料名、対象期間、提出方法、期限を一覧にします。
    誰がどの資料を準備するかも決め、提出した日と内容を記録しておきましょう。
  2. 何を指摘されたのか、理由・対象期間・金額まで確認する
    売上の計上漏れ、経費の取扱い、源泉所得税など、どの処理が問題とされているのかを確認します。
    国税庁は、調査の結果、申告内容に誤りがあると認められる場合、誤りの内容、金額、理由を説明することとしています。口頭の説明だけで判断が難しい場合は、根拠となる資料や考え方も確認しましょう。
  3. 修正申告を求められたら、内容と提出後の影響を確認する
    修正申告を提出すると、原則として、その申告内容を自ら認めたことになります。提出前に、修正する税目、事業年度、追加税額、指摘の根拠を確認してください。
    修正申告をするか判断に迷う場合は、税理士へ相談しましょう。
  4. 追加で税金を納める可能性がある場合は、必要な資金も確認する
    修正申告により本税が増える場合は、過少申告加算税などの加算税や、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税が生じる可能性があります。
    法人税だけでなく、消費税、源泉所得税、法人住民税・事業税などへ影響が広がる場合もあります。納付額と納期限を確認し、必要な資金を準備してください。

税務調査について税理士へ相談した方がよいタイミング

税務調査の対策は社内でも進められますが、経理処理に不安がある場合や、税務署から連絡を受けた場合は、早めに税理士へ相談すると対応を整理しやすくなります。

税務調査の連絡が来る前に経理や申告の不安を確認しておきたいとき

帳簿と実際の残高が合わない、代表者とのお金のやり取りが多い、必要な資料が不足しているなどの不安がある場合は、申告前に確認しましょう。

税理士へ相談すれば、経理処理の誤りや資料の不足を確認し、今後どのように整理すべきか検討できます。

税務署から連絡があり何を準備すればよいか分からないとき

税務署から連絡を受けたものの、必要な資料や回答方法が分からない場合は、調査日を迎える前に税理士へ相談することが大切です。

税理士には、通知内容の確認、資料の事前確認、調査当日の立会い、調査後の対応などを依頼できる場合があります。

石黒健太税理士事務所には、税務署での勤務経験を持つベテランスタッフが在籍しています。税務署側の視点も踏まえながら、事前準備や当日の対応をサポートします。

税務調査で指摘を受け修正申告すべきか判断に迷っているとき

税務署から指摘を受けても、その内容が自社の取引事実や税務上の取扱いと合っているか確認する必要があります。

税理士へ相談すれば、指摘の対象期間、根拠、追加税額への影響を整理したうえで、修正申告が必要か検討できます。すでに税務調査が進んでいる場合でも、まずは現在の状況をご相談ください。

関連記事:個人が税理士に相談できることの具体例とは?打ち合わせをスムーズにするポイント

税務調査の対策に関するよくある質問

税務調査を受けないようにする対策はありますか?

税務調査を確実に受けないようにする対策はありません。税務署は提出された申告書や保有する資料などを踏まえ、調査対象を選定しています。

大切なのは、調査を避けることではなく、正しく申告し、その根拠を説明できるように帳簿や資料を整理することです。

税理士法に定められた書面添付制度を利用している場合、税務調査の事前通知前に、申告書へ書面を添付した税理士から意見を聴く制度もあります。ただし、書面を添付すれば税務調査が行われないという制度ではありません。

領収書や請求書が足りない場合後から作り直してもよいですか?

実際には存在しなかった領収書や請求書を、後から事実と異なる内容で作ってはいけません。日付や金額を書き換えることも避けてください。

紛失した場合は、まず取引先へ再発行が可能か確認します。再発行できない場合は、預金通帳、クレジットカード明細、注文履歴、メール、契約書など、実際の取引を確認できる資料を集めましょう。

自社で紛失の経緯や取引内容を記録する場合も、それだけで経費として認められるとは限りません。個別の資料を税理士へ確認してもらうことをおすすめします。

顧問税理士がいなくても税務調査の連絡後に相談できますか?

顧問税理士がいなくても、税務調査の連絡後に税理士へ相談することは可能です。

ただし、相談を受けられるか、調査へ立ち会えるかは、税理士の対応範囲や日程によって異なります。税務調査の日程が決まっている場合は、通知内容と過去の申告書を用意して早めに相談しましょう。

関連記事:顧問税理士はいらないのか?会社が最低限身につけるべき知識

関連記事:税理士のスポット相談の料金の目安は?有効にするポイントを解説

事前の連絡なしで税務調査が行われることはありますか?

あります。

実地調査は原則として事前通知を行います。ただし、国税庁によると、事前通知をすることで違法・不当な行為を容易にし、税額などの正確な把握を難しくするおそれがある場合などは、事前通知を行わないことがあります。

事前通知のない調査でも、落ち着いて担当者の所属、氏名、身分証明書、調査目的、対象税目や期間などを確認しましょう。対応に迷う場合は、その場で税理士へ連絡してください。

まとめ

税務調査の対策で大切なのは、調査を避けることではなく、帳簿や資料を整理し、申告内容を正しく説明できる状態にしておくことです。

平時は、帳簿と実際の取引を照合し、領収書や請求書、契約書、電子取引データを適切に保存しましょう。税務署から連絡を受けた後は、通知内容を確認し、資料へ手を加えず、申告内容との違いを整理します。

調査当日は推測で回答せず、必要な場合は資料を確認してから事実に沿って説明してください。調査後に指摘を受けた場合も、理由、対象期間、金額、修正申告による影響を確認してから対応を判断しましょう。

何を準備すればよいか分からない場合や、経理処理・修正申告に不安がある場合は、早めに税理士へ相談すると状況を整理しやすくなります。

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