個人事業主が法人化するデメリット
個人事業主と法人では、適用される法律や、経営・事業などの運営の仕組みが異なります。そのため、法人化後も個人事業主と同じ感覚で事業を行うと、理想と現実とのギャップが大きく、後悔に繋がる恐れがあります。
ここからは、個人事業主が法人化することで生じるデメリットを5つ紹介するので、しっかり理解を深めておきましょう。
事務手続きと確定申告が煩雑になる
個人事業主と法人では、設立や廃業時の事務手続きが異なります。個人事業主の場合、開業や廃業は、税務署や自治体への届出のみで完結します。しかし、法人の場合、法人登記の申請、定款の作成・承認手続きなど、やるべきことが多岐にわたります。
事務手続きの多さから、法人化の手続きが完了するまでに、1ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。個人事業主の場合、事業と並行して手続きすることになるため、負担に感じる人も多いでしょう。
また、法人は、確定申告の作業が複雑化します。法人の場合、決算書をもとに決算申告を行いますが、決算書に記載されてる利益は、会計上の利益のため、税法の利益に調整する作業などが必要です。知識がない人にとっては難しく、手間を取られることも少なくありません。
関連記事:法人化に後悔する5つのケースとは?法人化が後悔する人の特徴と対策
社会保険料の負担が増える
個人事業主の場合、従業員が常時5人以上いるケースなどを除いては、原則的に社会保険への加入は義務づけられていませんでした。しかし、法人化すると、従業員の人数に関係なく、社会保険の加入が義務になります。
社会保険は、会社と従業員で保険料を半分ずつ負担(労使折半)する制度のため、従業員が増えるほど、会社が負担する金額も増加します。社会保険料の負担は、基本的には免除されません。保険料のコスト負担によって、キャッシュフローが悪化することも珍しくないのです。
また、「従業員がいなければ社会保険に入らなくても良い」と考える人もいますが、これは誤りです。社会保険の加入は、1人社長のケースであっても必須です。以下の記事では、1社長の社会保険料について解説しています。
関連記事:1人社長の社会保険料はいくら?具体的な計算方法と役員報酬8万円の社会保険料の金額
設立費用がかかる
前述した通り、会社設立には、法人の登記申請など様々な手続きが必要です。しかし、これらの手続きには、手間だけでなく、費用も発生します。会社設立でかかる費用には、以下が挙げられます。
・登録免許税
・定款の収入印紙代(電子定款の場合は不要)
・定款の認証手数料(株式会社の場合)
・定款謄本手数料(株式会社の場合)
一般的に、株式会社の場合は20万円以上、合同会社の場合には6万円以上の設立費用がかかります。また、会社設立にあたっては、資本金の準備も必要です。個人事業主と比べると、初期費用の捻出が多いため、自己資金は十分に確保した上で法人化の手続きを取るべきでしょう。
以下の記事では、会社設立のコストについて解説しています。資金確保の参考になるので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:自分で合同会社を設立するときの費用の目安と内訳は?設立後にかかるランニングコストと注意点
関連記事:株式会社の設立費用の目安と内訳は?資本金1円でも節約にならない理由と節約する方法を解説
交際費に上限がある
営業などで必要な接待費用などについては、交際費として経費計上できます。個人事業主の場合は、交際費の金額に上限がありませんでした。しかし、法人の場合、資本金の金額によって、損金算入の上限が設けられています。
例えば、資本金が1億円以下の場合、交際費の上限は、「年間800万円」または「接待飲食費の50%」です。当然、上限を超える金額については、税金の対象となります。事業活動の中で交際費が多い場合は、法人化によって節税効果が得られなくなる恐れがあるのです。
赤字でも税金がかかる
赤字の法人が注意しなければならないのが「法人市民税」と「法人県民税」です。法人市・県民税には、「均等割」というものがありますが、読んで字のごとく、均等に課せられる税金です。
均等割の負担額は、資本金の金額や従業員の人数によって算出されますが、最低でも7万円ほどの納付が必要で、赤字であっても免除されません。
「法人は個人事業主よりも節税できる」と耳にすることもありますが、収入額などによっては思ったより節税できないケースがあるのも事実です。法人化を後悔しないためにも、税負担や手取り額のシミュレーションをもとに、冷静に判断することが大切です。
法人化で節税できるか知りたい方は、ぜひ当事務所へご相談ください。シミュレーション結果などから、法人化の選択が最適化どうかアドバイスさせていただきます。ご相談は、お電話でも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
関連記事:個人事業主はあえて法人化しない方がいい?節税にならないと言われる理由と法人化する年収の目安
個人事業主が法人化するメリット
法人化は、事業面や税金面などにおいて、様々なメリットが得られます。法人化のメリットによって、「個人事業主よりも大きな金額を動かせる」「資金を手元に多く残せる」など、経営や事業にプラスの効果が期待できるでしょう。
法人化のメリットは以下の通りです。
・社会的信用が高まる
・有限責任になる
・税金対策が期待できる
・欠損金の繰越期間が長くなる
・経費にできる範囲が広がる
メリットの多い法人化ですが、これらを上手く活用できない経営者がいるのも事実です。メリットを最大限活用するためにも、内容をしっかり理解しておきましょう。
社会的信用が高まる
法人を設立すると、「会社情報が登記簿上に公開される」「会社法を遵守した厳格な運営が求められる」などの理由から、社会的信用が高まります。社会的信用は、以下の場面において有利に働く可能性があります。
・融資の審査
・取引先などとの商談
・人材募集や採用
登記簿には、会社の所在地や責任者などの情報が記載されるため、会社の実態が明らかです。金融機関や大企業などは、個人事業主よりも実態が把握できる法人との取引を好む傾向があるため、これまでよりも多額の融資や取引などが期待できるでしょう。
また、求人募集では、個人事業主よりも、福利厚生が整っている法人の方が応募が集まりやすいのも事実です。事業の成長には、優秀な人材を集めることも大切です。法人化後、事業拡大によって人手が必要な方は、法人化をおすすめします。
有限責任になる
個人事業主は、「無限責任」として事業における負債などを全額弁済する必要があります。例えば、廃業時に1,000万円の負債がある場合、廃業後も全額返済しなければならないのです。
一方、法人は、個人事業主と違って「有限責任」です。有限責任の場合、出資額を超えた金額の弁済は生じません。例えば、出資額が100万円の場合、倒産時に1,000万円の負債があっても、返済するのは100万円までとなるでしょう。
有限責任では、責任の範囲に上限があるのが特徴です。法人化によって、「個人事業主よりも安心して融資が受けられる」「多額の融資にも挑戦しやすくなる」など、資金調達しやすくなるのは強みと言えます。
税金対策が期待できる
法人は、個人事業主よりも税制上の優遇措置が多いのが特徴です。優遇措置の中で特筆すべきなのは、法人税率の適用でしょう。
法人化すると、事業などで得た所得に対して「法人税」が課せられます。普通法人の法人税の最高税率は23.2%です。個人事業主が納める「所得税」の最高税率45%と比べると、税率が低いことがわかります。
【最高税率の比較】
法人税 |
最高23.2% |
所得税 |
最高45% |
つまり、事業による所得が増加している個人事業主の場合、法人化によって税金の負担が抑えられる可能性があるのです。税金対策に適切な所得額などは、後ほどくわしく解説します。
欠損金の繰越期間が長くなる
青色申告を行う個人事業主の場合、その年の欠損金(赤字)は翌年以降に繰り越して、黒字の年に相殺することが可能です。黒字との相殺は節税に繋がりますが、欠損金の繰越期間が最大3年のため、期間内に上手く活用できないケースもあるでしょう。
しかし、法人化すると、欠損金の繰越期間は、最大10年と長期になります。個人事業主よりも期間が長い分、黒字が多く出た年に相殺するなど、活用しやすくなるのはメリットと言えます。税金などのコストは、キャッシュフローの安定化を脅かす可能性があるのも事実です。将来的な税金の負担を抑えたい方には、法人化がおすすめです。
経費にできる範囲が広がる
個人事業主の場合、事業とプライベートで利用している物に関連する支出は、案分が必要です。案分によって少額しか経費にできず、「期待していたほどの節税効果は得られなかった」と感じる方も多いでしょう。
法人化すれば、個人事業主よりも経費の範囲が広がる可能性があります。例えば、車を法人名義にすることで、車両代や保険料、ガソリン代などを経費にすることが可能になり、高い節税効果が期待できます。
また、法人は経費として認められる支出が多いのもメリットです。法人化によって経費計上できる支出には、以下が挙げられます。
・事業主本人の給与と賞与
・事業主の健康診断の費用
・事業主の社宅に関連する費用
・事業主の出張手当
・事業主の退職金
法人を設立すると、事業主の多くは役職に就き、その対価として役員報酬などを得ます。役員報酬や退職金は高額になりやすい傾向があるため、経費計上によって、納める税額を最小限に抑えられるのは魅力的と言えます。
個人事業主が法人化するタイミング
法人化を検討している方の中には、「いつ法人化すればいいのかわからない」と、悩む方も多いでしょう。法人化は、個人事業主よりも高い節税効果が期待できる時点で行うのが一般的です。法人化におすすめのタイミングは以下の通りです。
・課税所得が900万円を超える
・年間の課税売上高が1,000万円を超える
内容をくわしく解説します。
課税所得が900万円を超える
課税所得が900万円を超えると、所得税の税率を適用するよりも、法人税の税率を適用した方が、税金額が安くなります。これは、課税所得900万円超の時点で、所得税の税率が法人税の税率を上回るためです。
【課税所得900万円超での適用税率】
所得税 |
33%~ |
法人税(資本金1億円以下の普通法人) |
23.2% |
また、所得税は、累進課税制度が採用されており、所得が増えるほど適用される税率も上がります。前述した通り、所得税の最高税率は45%です。個人事業主の場合、所得額が高額なほど、税金の負担が増えるのも事実です。
一方、法人税では、比例課税方式が採用されており、課税所得の大小に関係なく、一定税率で課税されます。普通法人の法人税の最高税率は23.2%なので、課税所得が高額になるほど、税金の負担が軽く感じるのはメリットと言えます。
事業が軌道に乗ってきた方は、課税所得が900万円を超えるかを目安にして法人化を行うと良いでしょう。
年間の課税売上高が1,000万円を超える
消費税の納税義務は、個人事業主や法人などの形態に関係なく、同じ基準で発生します。一般的に2年前の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が必要です。消費税の制度は複雑なため、申告や日々の事務処理などで頭を抱える方も多いでしょう。
しかし、課税売上高が1,000万円を超える個人事業主が法人化した場合、最大2年間は消費税が免除される可能性があります。これは、同じ事業を営んでいたとしても、法律上、個人と法人が別人と見なされるからです。
法人化によって、消費税が最大2年間免除されれば、消費税関連の事務がなくなるだけでなく、手元にお金を残しやすくなります。消費税を納付している方は、法人化を検討してみましょう。
ただし、法人化によって必ずしも消費税が免除されるわけではないため注意が必要です。以下の記事では、法人設立時における消費税の注意点などを解説しています。
関連記事:法人成りすると消費税の免除がなくなる?免除期間を長くするポイントと個人事業主への影響
法人化が向いている個人事業主の特徴
法人と個人事業主では、適用される法律やルールなどが異なるため、事業の状態や、将来の展望などによっては、法人化で得できる可能性があります。以下の特徴に当てはまる方は、法人化に向いていると言えるでしょう。
・継続的に安定した収入がある
・将来の事業承継を視野に入れている
・不動産を購入する予定がある
・社会保険に加入したい
・税金が高いと感じている
内容をくわしく解説します。
継続的に安定した収入がある
会社の経営や運営には、予想以上にコストがかかります。法人で発生するランニングコストについては、後ほど紹介しますが、年間数十万円の維持費が必要になる可能性があります。これらの費用を捻出するためには、継続的で安定した事業からの収入が必要です。
また、前述した通り、税金面で得できるのは、課税所得などが一定額を超えるケースです。事業での収入が不安定で、赤字に転じやすい場合は、法人化における税金面のメリットを得られない恐れがあります。節税対策を行いたい方は、事業が安定したタイミングを狙って法人化を行いましょう。
将来の事業承継を視野に入れている
個人事業主が事業承継を行う場合、事業における財産は、「贈与」か「売却」をすることになりますが、どちらの手段も税金の負担が生じます。事業承継によって生じる負担は、以下の通りです。
【事業承継での負担】
贈与で財産を得た場合 |
受け取った人に贈与税が発生 |
売却で財産を得た場合 |
売却した人に所得税が発生 |
一方、法人の事業承継は、負担が少ないのが特徴です。法人の場合、所有している財産は、法人名義のため、財産を後任者へ移行させる必要がありません。簡潔に言うと、代表者が変わっても財産を引き継ぐ手続きは必要ないのです。
また、法人は、原則株式などの持分を譲渡することで、事業承継が完了します。法人は個人事業主よりも事業承継の難易度が低いため、事業承継を視野に入れている方は、法人化がおすすめです。
不動産を購入する予定がある
個人が所有する不動産は、所有者が死亡すると相続登記が必要です。相続登記とは、亡くなった人の名義から、相続人への名義に変える手続きのことです。相続発生から3年以内に手続きをしなければなりませんが、遺産分割がまとまらないケースなどでは、手続きが難航することも珍しくありません。
一方、法人所有の不動産は、代表者が死亡しても相続は発生しません。これは、不動産の名義が、法人名義になっているからです。前述した通り、法律上、法人と個人は別人として扱われるため、代表者個人の死亡は、法人の不動産に影響を与えないのです。
不動産を購入する予定の方は、法人名義で購入することで、相続人への負担が減らせるのはメリットと言えます。
参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)
社会保険に加入したい
個人事業主は、原則としてサラリーマンのような社会保険には加入できません。病気やケガなどの万が一のときに、給付などの保証が受けられないのは、デメリットに感じる方も多いでしょう。
しかし、法人の場合、従業員の人数に関係なく社会保険の加入が必須になります。これは、他の従業員がいない1社長の場合も同様です。社会保険に加入できれば、万が一のときに保証が受けられるだけでなく、将来もらえる年金額も増やせます。
社会保険に加入したい方は、法人化が向いているでしょう。
税金が高いと感じている
法人は、経費の範囲や適用税率が比較的低いなどの理由から、個人事業主よりも税金面で得しやすいと言えます。節税できれば、手元に多く資金を残せますし、残った資金を事業に活用できれば、さらなる事業の拡大が期待できます。
事業収入が増えており、税金が高いと感じている方は、法人化が向いているでしょう。ただし、法人化によって得られる節税効果には個人差があります。法人設立後に「予想よりも節税できなかった」と悩む経営者がいるのも事実です。
法人化を後悔しないためには、現時点の所得などを踏まえ、税金額などをシミュレーションすることが大切です。法人化後のシミュレーションについては、ぜひ当事務所へお任せください。税制や節税対策に精通したスタッフが対応いたします。
関連記事:個人事業主が税金貧乏になる理由は?対策とお金の残し方を解説
法人化に失敗しないためのポイント
法人は、信用力が高いなどの理由から、将来の成長基盤を築きやすいと言えます。しかし、法人は個人事業主よりも、「自由度が少ない」「運営コストがかかる」などのマイナスに感じる要素があるのも事実です。
また、法人成りを行った事業者の中には、「こんなはずではなかった」と感じる人もいるため、選択を後悔しないためにも、対策はしっかり講じておきましょう。
ここからは、法人化に失敗しないためのポイントを5つ解説します。
会社の種類と特徴を理解する
日本で新設できる会社には、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類があります。これらの会社形態は、設立費用、出資や資金調達の方法、責任の範囲などが異なります。それぞれのメリットとデメリットは以下の通りです。
会社の種類 |
メリット |
デメリット |
株式会社 |
・知名度が高く信頼を得やすい ・株式が発行できるため、資金調達がしやすい ・客観的意見を経営に取り入れやすい |
・設立費用が高い ・経営の自由度が低く、意思決定しにくい ・ランニングコストが高い |
合同会社 |
・設立費用を抑えられる ・利益の分配を自由に決めれられる ・経営の自由度が高く、意思決定しやすい |
・株式が発行できないため、資金調達がしづらい ・事業承継の難易度が高い |
合資会社 |
・設立費用を抑えられる ・資本金がなくても設立できる ・経営の自由度が高く、意思決定しやすい |
・株式が発行できないため、資金調達がしづらい ・1人で会社設立ができない ・事業承継の難易度が高い |
合名会社 |
・設立費用を抑えられる ・経営の自由度が高く、意思決定しやすい |
・株式が発行できないため、資金調達がしづらい ・無限責任のため、全額弁済しなければならない ・事業承継の難易度が高い |
株式による資金調達ができるのは「株式会社」のみです。株式の発行によって、投資家から多額の資金を得られるため、事業規模の拡大や、大規模な設備投資に適しています。
しかし、株式会社の所有者は、株式を所有している株主のため、実際に会社を運営する「経営者」と「所有者」が分離する点には注意が必要です。経営者と所有者が分離すると、意見の相違などによって意思決定がスムーズに行えない可能性があります。
一方、合同会社、合資会社、合名会社では、株式による資金調達ができません。そのため、資金調達の方法は、融資や補助金などに限定されてしまいます。知名度も株式会社より劣るため、融資の審査などで不安を感じることもあるでしょう。
また、事業承継を行う予定の方は、「株式会社」を選択した方が良いでしょう。これは合同会社などで会社の所有割合を表す「持分」が、原則として他者に譲渡できないためです。株式会社の場合は、株式の譲渡などによって事業承継が可能なため、手続きのハードルが低いのが特徴です。
以下の記事では、合同会社と株式会社の違いについて、くわしく解説しています。
関連記事:合同会社と株式会社の違いは?向いている会社形態と会社設立で失敗しないためのポイント
法人のランニングコストを把握する
法人は、設立時だけでなく、毎月の経営や運営にもお金が必要です。法人のランニングコストには以下が挙げられます。
・法人税などの税金
・会社負担分の社会保険料
・税理士顧問料
・役員の就任や退任にかかる登記費用
・決算公告費用 (株式会社のみ)
・株主総会の開催費用(株式会社のみ)
会社形態や、規模によっても異なりますが、これらを合計すると、年間数十万円〜数百万円ほどの支払いが生じる可能性があります。特に株式会社では、他の会社形態よりも多くランニングコストがかかります。決算公告や、株主総会の開催が費用がかさむ原因であると言えるでしょう。
多額のランニングコストによって、資金繰りの悪化や、赤字経営を招く恐れがあります。経営を安定化させるためには、運営に必要なコストの把握と、十分な資金の確保が大切です。
資金計画を明確にする
事業の安定化には、事業運営に必要な資金額の見通しや、運用の計画を立てることが必要です。これらの対策を行わないまま法人化を行うと、資金の流れがわからなくなり、黒字倒産のリスクが高まります。法人は、個人事業主よりも多額の資金が動きやすいため、綿密な計画を練りましょう。
また、資金計画は、融資などの資金調達でも役立ちます。融資の審査では、融資の使い道や内訳などを精査される可能性があります。事前にしっかり計画を立てておけば、いざというときに説得力のある説明ができるでしょう。資金調達は、事業の今後を左右します。チャンスを逃さないためにも、早期の段階で計画を立てておきましょう。
個人事業主のままでいる選択肢を検討する
事業によって負担する税金が増えた方の中には、「法人化しないと損をしそう」と感じる方も多いでしょう。前述した通り、所得が一定額を超えると、法人化した方が税金面で得になる可能性があります。しかし、日々の業務や決算申告が複雑化するため、労力に見合わないと感じる人がいるのも事実です。
法人化はひとつの選択肢に過ぎません。大切なのは事業を継続していけるかどうかのため、法人にこだわらず、個人事業主のままでいる選択も検討しておきましょう。
以下の記事では、個人事業主が法人化したときの手取り額をシミュレーションしています。シミュレーションは、法人化による費用対効果などがわかる有効な手段です。気になる方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
関連記事:個人事業主と法人化はどっちが得?シミュレーション結果を解説
法人化を得意とする専門家に相談する
法人化は、法人登記の申請、定款の作成、税務署への届出など様々な手続きが必要です。これらの手続きには、細かいルールなどもあるため、経験や知識がない人が自力で行うのは困難と言えるでしょう。
また、法人化の手続きは、事業と並行して行う必要があります。法人化に時間や作業を費やしすぎると、事業活動にまで手が回らず、売上が減少してしまう恐れもあるので注意が必要です。
法人化の手続きに自信がない方は、専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談することで、事業に専念しやすくなるだけでなく、会社設立後もスピーディーな事業活動が可能になります。
法人化でお悩みの方は、ぜひ当事務所へご相談ください。当事務所は200社以上の創業支援経験があります。お電話でもご相談可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。
法人化を専門家に相談するメリット
法人化が相談できる専門家には、「司法書士」「行政書士」「税理士」がいます。これらの専門家に相談することで得られるメリットは、以下の5つです。
・法人化の最適なタイミングを判断できる
・設立手続きを代行してもらえる
・シミュレーションをしてもらえる
・法人化後のリスクを事前に把握できる
・法人化後もアドバイスを受けられる
専門家に相談すれば、負担の軽減や、リスクを最小限に抑えた法人化が可能です。内容をくわしく解説します。
法人化の最適なタイミングを判断できる
節税だけで言えば、課税所得が900万円を超えたり、消費税の納税義務が生じたりするタイミングで法人化を検討するのが一般的でしょう。しかし、法人化の最適なタイミングは人によって異なるため一概には言えません。
例えば、取引先から法人化を要請されている場合などは、所得の大小に関係なく、早急に対応した方が良い可能性があります。事業の生命線とも言える取引先からの信用が下がれば、収入が激減する恐れがあるためです。
法人化の最適なタイミングは、所得額だけでは測れません。現状や将来の展望を見据えて、客観的に判断することが大切です。しかし、所得額だけで法人化を判断している事業者が多いのも事実です。
専門家は、様々な事業者の法人化に携わっています。その経験から、あなたに最適な法人化のタイミングを助言してくれるでしょう。法人化した方が良いか悩んでいる方は、税理士などの専門家への相談がおすすめです。
設立手続きを代行してもらえる
設立時の手続きを専門家が代行すれば、事務負担の軽減が図れます。専門家ごとの相談・依頼内容は以下の通りです。
司法書士 |
設立登記など会社設立に関することを依頼できる |
行政書士 |
営業許可証、建設許可証などの手続きを依頼できる |
税理士 |
経営や資金調達、税金に関することの相談や依頼ができる |
司法書士に相談すると、法務局への登記申請や定款の作成・認証などの設立手続きを代行してくれます。行政書士では、飲食業や酒類の販売許可など、行政機関への届出の代行が可能です。そして、税理士は、税務署への届出の代行や、資金調達のサポートを依頼できます。
このように、専門家によって依頼できる業務が異なる点には注意が必要です。 自力でできない手続きなどは、専門家に依頼すると良いでしょう。
シミュレーションをしてもらえる
節税対策で法人化したにもかかわらず、「思ったより節税できなかった」と、落胆する人がいるのも事実です。法人から個人事業主に戻るのは容易ではありません。屋号や商号が変わることで、取引先にも負担がかかります。法人化を後悔しないためにも、手取り額などについて、事前にシミュレーションをしておきましょう。
税金の専門家である「税理士」に相談すると、法人化した場合に発生する税金の金額や、手取り額をシミュレーションしてもらえます。法人が支払う税金は、少なくとも5種類以上あります。知識がない場合、正しく計算するのは困難なため、税理士に任せるのがおすすめです。
以下の記事では、ケースに沿って、法人化後のシミュレーションを行っています。節税効果などが気になる方は、ぜひご覧ください。
関連記事:合同会社が節税対策になると言われる理由は?節税金額のシミュレーションと効果を高めるポイント
法人化後のリスクを事前に把握できる
事業拡大などに良い効果が期待できる法人化ですが、リスクもあります。例えば、法人の場合、個人事業主よりも自由に使えるお金が制限されます。法人と個人のお金は明確に分けなければなりません。プライベートで急な出費が生じても対応できないことは、一部の人にとってリスクに感じるでしょう。
法人化後は、個人事業主とは異なるルールが適用されます。会社法を遵守した経営が求められるため、「知らなかった」では済まないことも多々あります。専門家に相談すれば、現状から考えられるリスクが把握できるため、事前に対策などを講じることができるでしょう。
法人化後もアドバイスを受けられる
法人化後は、実務的な問題や課題が発生します。決算申告や労務管理など、個人事業主のときにはなかった事務も新たに加わります。経営者としての重圧が辛いと感じることもあるでしょう。
相談ができ、アドバイスが得られる環境があるかどうかで、事業や経営へのモチベーションが変わります。税理士は、様々な企業で経営や税務に関するサポートを行っています。これまでの支援経験から具体的なアドバイスが期待できるため、良きビジネスパートナーとして、あなたをサポートしてくれるでしょう。
法人化のお悩みはご相談を!
個人事業主が法人化するデメリットには、事務手続きの複雑化や、ランニングコストが高いことなどが挙げられます。また、法人化によって必ずしも節税になるわけではありません。法人化を後悔しないためにも、事前にシミュレーションを行い、節税効果を確認しておきましょう。
法人化のお悩みや、シミュレーション結果が知りたい方は、ぜひ当事務所にご相談ください。創業や起業に携わった優秀なスタッフが対応させていただきます。ご相談はお電話でも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。