【法人化に後悔するケース1】期待するほどの節税効果がない
法人化の大きなメリットとして挙げられるのが節税効果です。しかし、法人化したすべての事業主が期待通りの節税効果を得られるわけではありません。
節税を目的に法人化を選択した場合、事前のシミュレーションや準備が不足していると、かえって税負担が増えるケースもあるのです。以下では、法人化が期待通りの節税につながらない理由を具体的に見ていきます。
法人化のシミュレーションが甘い
法人化する際には、事前に収益や支出、税負担の変化を正確にシミュレーションすることが大切です。しかし、実際には「なんとなく法人化したほうが良さそう」といった感覚的な判断で進める方も多く、それが後悔の原因になります。
法人化することで所得税の負担が減ると考えていたのに、法人税や法人住民税、さらには社会保険料の負担を考慮していなかったため、トータルで税負担が増えてしまったというケースも珍しくありません。
法人化による節税効果は、事業規模や利益の額、支出構造などに大きく左右されるため、安易な判断は禁物です。
関連記事:個人事業主と法人化はどっちが得?シミュレーション結果を解説
設立費用の回収に時間がかかる
法人設立には初期費用がかかります。株式会社の場合、法律で定められている定款や登記に関わる費用だけで20~30万円ほどです。内訳は以下の通りです。
・登記のための費用 150,000円~(資本金×0.7%と比べて大きい額)
・定款用収入印紙代 40,000円(電子定款の場合は不要)
・定款認証手数料 30,000円~
・定款の謄本手数料 1枚につき250円
・印鑑証明書の取得費用 約300円~
・資本金 1円~
これに加え、司法書士や行政書士に手続きを依頼するための手数料や、法人の実印の作成費用などもかかります。合同会社の場合は株式会社よりも設立費用を抑えることができますが、それでも小さな金額ではありません。
法人化後に節税効果が見込める場合でも、この初期費用を回収するにはある程度の利益が必要で、回収に数年を要する場合もあります。短期的な負担を考慮せずに法人化すると、資金繰りに影響します。
関連記事:法人成りとは?手続きの流れと必要な準備・費用について解説
参考:国税庁「登録免許税の税額表」
消費税の納税義務が免除されない
法人化を検討する際に見落とされがちなのが消費税の問題です。個人事業主で課税売上高が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の納税義務が生じます。しかし、法人化すると個人事業主だった頃の課税売上高は引き継がれないため、一定の条件を満たせば、設立後最長で2年間は消費税が免除されます。
しかし、法人化した場合でも、インボイス制度に対応するため「適格請求書発行事業者」として登録する必要がある場合、設立当初から消費税の納税義務が発生します。
消費税は、売り上げ規模がそれほど大きくなくても負担が大きくなりがちです。免税されると思っていたのに納付しなければならなかった場合、キャッシュフローが悪化し、現金不足に陥るおそれがあります。
参考:国税庁「納税義務の免除」
【法人化に後悔するケース2】維持費用が高い
法人を設立した後は、個人事業主にはないさまざまな維持費用が発生します。これらを事前に把握しておかないと、「法人化しなければよかった」と後悔する原因になりかねません。具体的な維持費用は次のようなものがあります。
社会保険料の半分は会社が負担する
個人事業主の場合、従業員が5人未満であれば、厚生年金保険と健康保険への加入は強制ではありません。しかし法人化すると、たとえ一人社長であっても社会保険への加入が義務付けられます。
社会保険料は、役員や従業員本人と会社が折半して支払う仕組みです。たとえば、役員報酬を月50万円に設定した場合、社会保険料は年間約180万円、その半額の90万円を会社が負担することになるでしょう。
法人化によって社会保険に加入する場合、個人事業主時代には必要なかった支出が大幅に増える可能性があります。「法人化すれば手元に残るお金が増えると思ったのに、社会保険料でかえって資金繰りが苦しくなった」というケースは珍しくありません。
参考:全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
赤字でも税金がかかる
法人の場合、赤字であっても一定額の法人住民税が課税されます。これを「均等割」と呼び、資本金や従業員数によって税額が変わります。最低でも道府県民税2万円、市町村民税5万円の計7万円は支払う必要があります。
小規模な事業の場合は均等割の負担が大きく、経営を圧迫しかねません。個人事業主であれば赤字の場合は税負担がゼロになることが多いだけに、この差は事前に認識しておく必要があります。
申告書の作成が難しい
個人事業主の場合、確定申告は比較的シンプルで、必要な書類や手続きを自身で行えるケースが多いです。しかし、法人化すると作成すべき申告書の数や内容が格段に増え、申告の難易度が上がります。
法人税申告書の別表などは、法人税の計算だけでなく、会計上の利益と税務上の利益の調整や税額控除、特例適用など、細かな知識が求められます。初心者が独力で作成するのは非常に困難です。
また、誤った内容で提出すると、税務署から指摘を受けたり、場合によっては追加課税となるリスクもあります。
事務負担が個人事業主のときよりも増えるため、専門知識がない場合や、税務に時間を取られたくない場合は、税理士のサポートを受けるための予算も事前に考慮しておくとよいでしょう。適切なサポートを受けることで、正確な申告を行い、トラブルを未然に防ぐことができます。
関連記事:税理士に決算のみを依頼する場合の相場は15万円以上?費用を抑える方法
【法人化に後悔するケース3】会社のお金を自由に使えない
法人の場合、会社の収益は会社のものであり、社長のものではありません。会社と社長は別人格なので、社長であっても会社のお金を自由に使うことはできないのです。この点を知らずに法人化した場合、後悔することがあります。
事業で得た利益は会社のもの
個人事業主の場合、事業の利益はすべて事業主自身の収入として扱われるため、生活費や趣味など自由に使うことができます。しかし、法人化すると、事業で得た利益は会社のものであり、たとえ一人社長であっても自由に使うことはできません。
役員報酬や会社経費として計上する以外の使い道は厳しく制限され、ルールに反する使い方は税務調査の対象になる可能性があります。プライベートのお金と事業のお金を明確に区別していない個人事業主は、法人化によって使えるお金が減ってしまった、使い勝手が悪くなったと後悔する場合があります。
役員報酬を変更するには要件がある
法人化すると、一般的には事業主は役員(通常は代表取締役)となるでしょう。役員だからと言って会社のお金を好き勝手に使うことはできませんが、会社から「役員報酬」をもらうことができます。役員報酬は、サラリーマンの給与と同じように、役員個人の財布に入ってくるお金です。
役員報酬は会社経費とできる一方、厳しいルールがあります。報酬は「定期同額給与」が原則で、残業代などの手当を加算することはできず、毎月同じ金額を支払います。報酬の金額を変更できるタイミングは通常は年に1回、事業年度開始から3ヶ月以内の期間です。
時期や条件などのルールをよく確認して改定を行わないと、支払った役員報酬を損金算入できないリスクもあります。
役員報酬の設定や、法人化した場合のお金の使い方についてお悩みの方は、ぜひ石黒健太税理士事務所にご相談ください。法人化後の運用についても丁寧にサポートいたします。
関連記事:会社が税理士を雇わないリスクは?税理士なしで法人決算をする方法と費用を抑えるポイント
【法人化に後悔するケース4】廃業するのに費用がかかる
法人を廃業する際には、個人事業主に比べて手続きが複雑で、費用もかかります。この点を知らないまま法人化すると、いざ事業をやめるときに大きな負担となります。
法人を解散する際には、解散登記や清算手続きが必要です。登記や官報公告など、発生する費用は以下のようなものがあります。
・登録免許税
解散登記 30,000円
清算人選任登記 9,000円
精算結了登記 2,000円
・官報の廃業広告 約33,000円
これ以外にも、手続きを税理士や司法書士などに依頼するための手数料や、株主総会の開催費用などもかかります。また、解散から清算結了までには数ヶ月〜1年程度の時間がかかる場合もあり、この間の会計処理や税務申告を専門家へ依頼する費用も必要です。
売上が減少して事業継続が困難になったとき、個人事業主であれば税務署へ廃業届を提出するだけで比較的簡単に廃業できます。しかし、法人の場合、会社法に基づいた清算手続きが必要で、時間とお金の負担が大きいのです。また、解散時点で資産や負債が残っている場合、その処理も追加の負担となります。
法人化は簡単に撤回できるものではないため、廃業リスクやコストについて事前に理解し、慎重に検討することが大切です。
【法人化に後悔するケース5】精神的な負担が増える
法人化によって社会的な信用度が増しますが、それに伴い事業主が感じるプレッシャーや責任も大きくなります。精神的な負担は実際に法人化する前には想像しがたいかもしれませんが、経営者にとっては大きな変化です。
社会的な信用度の向上がプレッシャーになる
法人化することで、取引先や金融機関からの信用度が向上し、大口の取引が増えたり、融資金額が増えたりすることもあります。受注が増えれば事業も忙しくなりますし、信頼に応えなければならないというプレッシャーも大きくなるでしょう。
法人の代表者としての責任感からストレスを抱え、最終的に体調を崩してしまうケースもあります。社会的信用は重要ですが、過剰なプレッシャーにより精神的に追い詰められて働けなくなってしまっては本末転倒と言えます。
融資を受けられる金額が増える
法人化すると、金融機関からの融資が受けやすくなり、融資可能額も増加します。しかし、融資金額が大きくなるほど毎月の返済額も増えるため、慎重な返済計画が不可欠です。
多額の融資を受けて事業の拡大を図っても、すぐに売上がついてくるとは限りません。毎月の返済の負担が大きいと、キャッシュフローが悪化する要因になります。キャッシュに余裕がなく、返済の心配をしなければならないと、経営者の精神的な負担が大きくなります。
税務調査が気になる
一般的に、法人は個人事業主と比べて税務調査の対象となる確率が高いと言われています。法人化から数年は、個人事業主時代に遡って調べられることもあるので、法人化したからといって個人事業主だった頃の書類を処分しないように注意が必要です。
税務調査は心理的なプレッシャーが大きいものです。「調査で何かミスが見つかったらどうしよう」と考えたり、税務署からの質問に適切に対応できるか不安になる経営者も少なくありません。こうした不安を軽減するためには、日々の帳簿管理を正確に行い、疑問点があれば早めに税理士に相談することが重要です。
税務調査を避けることを考えても仕方がありません。法人化後も安心して経営を続けるためには、調査が入った場合でも堂々と対応できるよう、普段から帳簿や証憑をしっかり整備し、税務の専門家と連携する体制を整えておきましょう。
石黒健太税理士事務所は、あなたの経営のパートナーとして、月次の会計業務や税務相談はもちろん、税務調査への対応や事前準備もサポートいたします。お気軽にご相談ください。
関連記事:自社にあった税理士の探し方は?気をつけることを税理士目線で解説
法人化を後悔する人の特徴
法人化のメリットにばかり目を向け、デメリットや注意点を十分に理解していないと、法人化後に後悔することが少なくありません。法人化を検討する際に注意するべき「後悔しやすい人の特徴」を紹介します。
法人化のデメリットを十分に理解しない人
法人化には節税効果や社会的信用度の向上といったメリットがある一方で、前述のような維持費用の増加や手続きの煩雑さ、精神的負担の増加といったデメリットもあります。
これらを理解せずに「節税になるなら法人化した方がいい」と安易に判断してしまうと、思わぬ負担が発生し、後悔するケースが多いです。法人化を検討する際は、メリットだけでなくデメリットについても事前に詳しく調べておく必要があります。
専門家に相談せずに決める人
法人化は法律や税務に関わる複雑な手続きが伴います。自分の判断だけで進めてしまうと、後から多くの問題が生じかねません。社会保険料や法人税など法人化することで増える支出を想定しておらず、法人化後に資金繰りが悪化するケースもあります。
法人化する前に、税理士や司法書士などの専門家に相談して、設立時の費用や設立後の法人運営についてシミュレーションするのが望ましいでしょう。
関連記事:いい税理士はすぐわかる?面談やホームページで見極めるポイントを解説
事業計画や資金繰りが甘い人
法人化は個人事業主と比べて経費や資金繰りの計画がより重要です。安定した利益が見込めない状態で法人化すると、すぐに資金不足に陥ってしまう可能性があります。
一度法人化してしまうと、経営難に陥ったからと言って簡単に法人をやめることはできません。法人として必要な維持費用や税金の支払いが滞り、最終的に解散費用も払えず苦境に立たされる可能性もあります。
法人化する前には、収支の見通しを立て、収益が安定する見込みがあるかどうかを確認することが大切です。
事務手続きが苦手な人
法人化すると、個人事業主の時には必要のなかった多くの事務手続きが発生します。たとえば、以下のようなものが挙げられます。
・毎年行う決算報告と法人税などの申告
・役員変更や増資などの登記
・社会保険や労働保険の手続き
こうした手続きは、期日を守らなければペナルティを科されるされることもあります。しかし、日々の業務に追われていると、どうしても手続きが後回しになりがちです。
さらに、法人では会計や経理作業も煩雑になります。経理作業が得意ではない方にとって、日々の仕訳入力や帳簿の作成は負担に感じることが多いでしょう。しかし、書類の保存や管理が不十分だと、税務調査で指摘されて追徴課税の対象となるリスクもあります。
事務手続きに不安を感じる方は、法人化する前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。石黒健太税理士事務所では、経営者が事務作業に煩わされず事業に集中できるよう、記帳や税務署類の作成・提出もサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
事業規模が小さい人
法人化が向いているのは、一定以上の事業規模や収益が見込まれるケースです。事業規模が小さい段階で法人化すると、かえって経営を圧迫する可能性が高くなります。
前述のとおり、法人を設立して維持するためにはお金がかかるものです。個人事業主のときはそれなりに利益が出ていたのに、法人化したら会社に残るお金がほとんどなくなってしまったというケースもあります。
事業規模が小さいうちは、個人事業主としてのメリットを活かしつつ、事業の基盤を固める方が良い場合もあるのです。法人化のタイミングは、現在の事業規模と将来の見通しを十分に考慮して決めることが重要です。
関連記事:個人事業主があえて法人化しない方がいい?節税にならないと言われる理由と法人化する年収の目安
法人化しても後悔しない人の特徴
法人化を後悔する人がいる一方で、法人化を成功させ、その後の経営を安定させている人たちもいます。ここでは、法人化しても後悔しない人の特徴をご紹介します。
法人化の目的が明確な人
法人化で成功している人の共通点として、法人化の目的が明確であることが挙げられます。
「社会的信用度を上げて取引先を増やしたい」「事業拡大のために資金調達をしやすくしたい」といった具体的な目標や目的がある人は、法人化の手続きや法人運営にモチベーション高く取り組むことが可能です。
また、目的を明確にし、綿密な計画を立てて法人化を進めることで、「思っていたのと違った」と後悔するリスクは格段に小さくなるでしょう。
自分の事業における課題や将来のビジョンを明確にし、それを解決・達成するために法人化が必要かどうかを慎重に考えましょう。
コンプライアンス意識が高い人
法人化すると、個人事業主の頃よりも法律や税務に関する規制が増えます。コンプライアンスの意識が高く「手続きをきちんとするのが当たり前」と思える人は、法人化後もスムーズに経営を行えるでしょう。
法人では税務申告書や決算書の提出、株主総会の開催、社会保険の加入義務など、多岐にわたる手続きが求められます。コンプライアンス意識が低く、「少しくらい手を抜いてもバレないだろう」という気持ちでいると、トラブルのもとになる可能性があるので要注意です。
また、法人化すると取引先や金融機関からの信用が高まると同時に、法令を遵守することがより求められます。形式的な手続きや細やかな対応が面倒と感じる人にとっては、ストレスの種となる可能性もあります。
ストレスに強い人
法人化すると、経営者としての責任が大きくなり、ストレスを感じる場面も増えます。こうしたプレッシャーに対して柔軟に対応できるストレスに強い人は、法人化による新たな責任をチャンスと捉え、事業を成長させるための原動力に変えることができます。
法人化後は、税務申告の複雑さや社会保険の負担、従業員管理など、これまで以上に多くの業務や課題に向き合う必要があります。経営者には、ストレスフルな状況でも冷静に判断し、問題解決に取り組む能力が必要です。
困難があっても「法人化しなければよかった」と落ち込まず、前向きに経営に取り組める人は、法人化後も成功する可能性が高いでしょう。
節税効果が期待できる人
法人化の大きなメリットの一つが、節税効果です。これを最大限に活用できる人は、法人化に成功しやすいと言えます。ただし、節税効果が得られるかどうかは、事業の利益額や経費の構造によって大きく異なります。
一定の利益が出ている事業の場合は、利益を事業主個人の所得とするよりも法人の利益とした方が税金が少なく済むかもしれません。事業所得が800万円を超えたくらいで法人化を考える人が多いのも、この理由です。
役員報酬を活用して所得を分散させて税負担が大幅に減るケースなど、法人化のメリットを上手に利用することで節税に成功する人もいます。
一方で、利益額が低い場合、法人税や社会保険料の負担が節税効果を上回り、結果的にコストが増えることがあります。
節税を目的に法人化を検討する場合は、事前にシミュレーションを行い、期待できる節税効果を明確に把握することが重要です。また、税理士などの専門家に相談することで、最適な節税対策を実施できるでしょう。
事業承継を考えている人
事業承継を視野に入れている人にとって、法人化は非常に有効な選択肢と言えます。法人では、株式の形で事業を引き継ぐことができるので、個人事業主に比べて事業承継がスムーズに進みます。
一方、個人事業主の場合は、事業用資産や取引先との契約を1つずつ引き継ぐ必要があり、手続きが煩雑になりがちです。
家業を法人化して父から息子へ承継する場合、株式の譲渡によって事業承継が完了します。会社としての実質に変わりはなく、取引先や金融機関からの信用も保たれるため、事業を継続していく上でも安心でしょう。
また、法人化すると、経営者の退職金を計上できる点もメリットです。事業承継時に、退職金を経費として処理することで税負担を軽減しながら、スムーズな世代交代が可能になります。
将来的な事業承継を見据えている場合、法人化によるメリットを活かすことで、承継時の負担を大幅に軽減できます。石黒健太税理士事務所では、事業承継を見据えたアドバイスも行っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
法人化を後悔しないためのポイント
法人化を成功させるためには、事前準備や専門家のサポートが欠かせません。ここでは、法人化を後悔しないために押さえておくべきポイントをご紹介します。
法人化の目的を明確にする
法人化を検討する際には、「なぜ法人化するのか」という目的を明確にしましょう。「なんとなく法人のほうがよさそうだから」といった漠然とした理由で法人化してしまうと、実際の金銭的あるいは事務的な負担が大きく、法人化したことを後悔する結果になりかねません。
事業のビジョンをしっかり確認し、法人化によるさまざまな負担を加味しても、法人化することが経営のためにプラスになるかの検討が大切です。
事前に法人化のシミュレーションをする
法人化するとどの程度の費用が発生し、どれくらいの節税効果が得られるのかを具体的にシミュレーションすることが重要です。シミュレーションを行うことで、メリットとデメリットを正確に把握できます。
法人化による収支のシミュレーションを、自分で正確に行うのは困難です。税理士などの専門家に相談し、収益が安定するタイミングを見極め、最適な時期に法人化することで法人化のメリットをより感じることができます。
関連記事:法人税をざっくり計算する3ステップ!決算までにできる効果的な税金対策を解説
法人化によって発生する維持費用を把握する
法人化後に多い後悔の一つが、「思った以上に費用がかかる」というものです。そのため、事前に維持費用を正確に把握することは非常に重要です。
法人化した場合、法人住民税の均等割、社会保険料の会社負担分、税理士などの専門家に対する手数料などのコストがかかります。事務所を借りている場合は、契約名義を法人に変更することで保証金などが増える場合もあるため、契約の相手方に事前の確認と交渉が必要です。
これらの費用をシミュレーションせずに法人化すると、事業運営に負担を感じることになりかねません。法人化後に負担が増える一方で、手元に残るお金が減ったり、負担が増えた分を利益でまかなえずに苦境に立たされたりするケースもあります。
税理士などの専門家と相談しながら、法人化後に発生する維持コストを正確に見積もることで、後悔するリスクを最小限にとどめましょう。
関連記事:お金がない会社の特徴とお金が残らない本当の理由は?経営を安定化するための改善策
家族や従業員の理解を得る
法人化は、経営者だけの問題ではありません。事前に家族や従業員の理解を得ることが成功の鍵となります。
たとえば、法人化に伴って給与体系や福利厚生が変わることがあります。会社の体制変更を不安に感じる従業員もいるでしょう。また、家族経営をしている場合は、法人化によって家族従業員の待遇や関与度が変化することがあります。
法人化を検討する段階で、家族や従業員に対して法人化の目的とメリット、給与や福利厚生への影響、会社全体の成長への影響などの説明を十分に行いましょう。関係者全員の協力を得ることで、法人化後の運営がスムーズに進みます。
定期的に専門家に相談する
法人化した後の運営を成功させるためには、定期的に専門家に相談することが欠かせません。法人化はゴールではなく、事業運営の新たなスタート地点です。税務や労務、経営の相談相手を確保しておくことで、さまざまなリスクや課題を未然に防ぐことができます。
特に税務においては、法人化後の手続きが個人事業主よりも複雑になります。税法の改正やインボイス制度の影響など、最新の情報を把握して適切に対応することが必要です。
また、法人化後に節税効果を最大限に発揮するには、毎年の利益や経費を見直し、最適な運営方法を模索することが重要です。事業環境や業績に応じて、柔軟に対応していくため、頼れる税理士がいると安心です。
関連記事:税理士は無料相談でどこまで対応してくれる?電話相談はおすすめできない理由と有意義にするポイント
法人化の悩みや不安は気軽に相談を!
法人化には信用度の向上や節税などのメリットがありますが、すべての人が同じように法人化の恩恵を受けられるとは限りません。初期費用や維持費用のコストがかかっても法人化するメリットがあるのか、法人化のタイミングが適切かを慎重に見極める必要があります。
とはいえ、具体的なシミュレーションは専門知識がないと難しいものです。自分だけで判断せず、税理士などの専門家からアドバイスをもらうと安心です。
石黒健太税理士事務所では、法人化に関するご相談を受け付けています。節税や資金繰りのシミュレーション、法人化後の運営サポートまで、一人で悩まずにご相談ください。