創業・起業

事業計画書のスムーズな作り方とは?わかりやすい方法を解説

目次

事業計画書は、新規事業を立ち上げる場合や事業を拡大するとき、経営者の頭の中にある経営ビジョンを言語化し、投資家や金融機関、事業パートナーなどの関係者に伝えるツールとして必要な書類です。

 

事業計画書には商品やサービスの内容だけでなく、創業者の経歴、売上や利益の見込み、マーケティングの手法などを詳しく記載します。納得してもらえる内容にするため、数値やデータなど事業が成長できる具体的な根拠を盛り込むのが一般的です。

 

この記事では、初めて作成する経営者にとっては難しく感じることも多い事業計画書のスムーズな作り方を解説します。わかりやすい事業計画書を作るポイントについても、分かる内容になっています。

事業計画書のスムーズな作り方

具体的で納得感のある事業計画書を作るためには、いきなり書き始めることはおすすめしません。浮かんでくるアイデアをただ書き出していくだけでは、まとまりのない内容になってしまうためです。

 

まずは事業計画書には一般的にどのような事柄が書かれているのか確認した上で、事業を詳しく分析し、書く内容を整理していくとよいでしょう。ここでは事業計画書をスムーズに作成する手順をご紹介します。

ステップ1:基本的な構造を確認する

自分で内容を決めるのは難しそうだから見本どおりに作成しよう、と思っても、実は事業計画書には明確なフォーマットがありません。使う目的や事業内容によって必要な項目が異なるためです。とはいっても、共通して書く内容もある程度決まっています。

 

具体的には、以下の内容が挙げられます。

  • 創業者のプロフィール
  • 会社の概要
  • 事業の理念やビジョン
  • 事業の概要
  • 市場環境
  • マーケティング戦略
  • 人員計画
  • 売上・利益・資金調達に関する計画

 

基本的な構造を確認することで、スムーズな作成が可能です。事業計画書の具体的な作り方・書き方は後ほど詳しく解説します。

ステップ2:6W2Hのフレームワークに沿って書き出す

事業計画を作成するプロセスで活用できるフレームワークには様々な種類がありますが、ここでは「6W2H」の要素から考える方法をご紹介します。

 

6W2Hは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰が)」「Whom(誰に)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」「How much(いくらで)」の8つの側面から事業を多面的に分析し、整理するためのフレームワークです。

 

6W2Hを事業計画書の作成にあてはめると、以下が挙げられます。

 

 

内容

When

いつやるのか?

Where

想定する市場はどこか?

Who

誰がやるのか?

Whom

ターゲットとする顧客は誰か?

What

商品・サービス、提供できる価値は何か?

Why

なぜやるのか?

How

どのように認知・購入してもらうのか?

How much

いくらで提供するのか?資金や経費、利益はいくらか?

 

まずは、事業について8つの項目の答えを思いつくままに書き出してみましょう。事業のビジョンを整理するためのフレームワークなので、考えるプロセスや得られる気づきが大切です。完璧に仕上げる必要はありません。

 

8つの項目全てを記載したら、情報の抜け漏れがないか、あいまいな点がないか、それぞれの項目の整合性がとれているかを確認しましょう。事業について8つの項目を盛り込んだ文章で説明できるくらいクリアになっていれば、事業計画書を作成する準備としては十分です。

 

ステップ3:事業計画書を作成する

フレームワークで整理した内容をもとに、ステップ1で確認した事業計画書の基本的な項目について記載していきます。事業計画書は内容が正しいことが前提です。不確かな情報や虚偽の情報は記載しないようにしましょう。

 

逆に、根拠として具体的な数値やデータを示すことができる場合は記載するとよいでしょう。最後に全体として内容の整合性がとれているかを確認しましょう。

わかりやすい事業計画書の作り方のポイント

事業計画書は、事業内容を正しく伝え、事業の成長に期待してもらうためにあります。読み手にとってわかりやすいことは非常に重要なポイントです。わかりやすい事業計画書を作るためには、いくつかポイントがあります。

専門用語を多用しない

業界や業種によって様々な専門用語がありますが、事業計画書を見るのは業界のことに詳しい人とは限りません。その業界でしか伝わらないような業界用語や技術用語はできるだけ避け、わかりやすい表現に置き換えるようにしましょう。

 

例えば、業界知識がまったくない融資担当者が見てもわかるか、という視点で考えるとよいでしょう。どうしても専門用語を使わなければならない場合は注釈を入れたり、図やグラフを添付して視覚的にわかりやすくする方法もあります。

 

わかりやすいかの判断に困ったときは、業界知識のない家族などに客観的なコメントをもらうのも一つの手です。

シンプルでわかりやすくする

わかりやすい事業計画書を作るには、文章の組み立て方がとても重要です。事業内容の理解に必要な情報を詳しく書くことで逆にわかりにくい文章になってしまう場合は、伝え方や伝える順番を工夫すると改善される場合が多いです。

 

一文はなるべく簡潔にし、一つのことだけ伝えるようにします。無理に文章にする必要はなく、長い文になるときは箇条書きにする方法もあります。

 

ストーリーの基本構成は「起承転結」ともいわれますが、この型では一番伝えたい結論が最後になるため、事業計画書には向きません。結論を先に述べて、根拠や具体例は後から示すのがよいでしょう。

自社の強みを見つける

事業計画書を読んだ人に「この事業は成長しそうだ」「応援したい」と思ってもらうために、競合と比べた優位性や独自性を打ち出すことも有効です。自社と競合の事業を同じ視点から分析して比較することで、競合にはない自社の強みを見つけましょう。

 

事業計画書でアピールするためだけではなく、「どのような独自性のある価値を提供できるのか」「どのような層の顧客を満足させられるのか」はこれから事業を展開していく上で大切です。

専門家に相談する

事業計画書を作成し始めたものの、文章を書くのが苦手だったり、自社の強みがわからなかったりして行き詰まってしまう経営者の方も多くいます。そのような方は、実績のある専門家に相談するのが安心です。

 

事業計画書の作成を依頼できる専門家として代表的なのが税理士です。

 

石黒健太税理士事務所は、多数の融資実績があり、融資の知見も豊富です。経営者の方のパートナーとして経営相談も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

関連記事:事業計画書を税理士に依頼する費用の目安は?10〜15万円が相場

事業計画書の作り方・書き方

創業融資を受ける金融機関として代表的な日本政策金融公庫の事業計画書の作り方・書き方を解説します。先述のとおり、事業計画書には決まったフォーマットがないため、日本政策金融公庫は独自のテンプレートを用意しています。

 

融資を通してもらうため、それぞれの項目のポイントを押さえ、納得感のある事業計画を作成することが重要です。

参考:日本政策金融公庫「国民生活事業

1:創業の動機

創業に至った経緯を書く項目です。創業者が責任をもって事業を続けていくことができるのかを見られます。

 

これまでの経験を活かした事業を始める場合や、すでにある程度の顧客がついている事業を拡大しようとする場合には、安定した経営が見込めるため評価が高くなるでしょう。

 

創業する事業の経験がない場合や事業の計画性が乏しい場合には、融資の審査で落とされる恐れがあるため、事業に関連のある内容を書きましょう。

2:経営者の略歴等

経営者のこれまでの経験や実績を書く項目です。学歴や職歴、事業経営の経験、事業にプラスになる資格、知的財産権や特許権など、説得力のある経歴を書くことが大切です。

 

書ける経歴が少ないと感じる人は、職歴などを掘り下げて、経験したことや身についたスキルを書きましょう。創業する事業に活かせる具体的な実績があるか、事業を継続していく力があるかどうかは融資の重要な判断材料となります。

3:取扱商品・サービス

事業の特長や優位性を伝える項目です。「取扱商品・サービスの内容」には何をいくらで販売するのかを記入します。ここで記入する数字は、あとから書く「事業の見通し」と食い違わないように注意しましょう。

 

「セールスポイント」には、店舗のコンセプトや、競合他社と比べた自社の優位性を書きます。奇抜なアイデアである必要はなく、ターゲットに対する訴求として効果的であることが重要です。

 

「販売ターゲット・販売戦略」には、見込み顧客として具体的にどのような属性のターゲットを想定しているのか、集客のためにどのような取り組みを行うのかを書きましょう。

4:従業員

法人の場合は、常勤役員の数を記入します。創業時に従業員を雇用する場合は、3か月以上継続雇用を予定している従業員の人数を書きます。家族従業員やパート従業員がいる場合は内訳も必要です。

 

「従業員」の項目に記入するのは人数だけですが、「事業の見通し」には人件費も記入する必要があるため、人件費や採用計画についても考えておくようにしましょう。従業員が増えると人件費も増えるため、無理のない計画にしましょう。

5:取引先・取引関係等

販売先や仕入れ先について書く項目です。創業の場合には広告宣伝により販売先を探すところからのスタートであることが多く、事業が認知され販売先を獲得するまでの売上がない期間は、自己資金や融資資金により営業を続けることになります。

 

最初の数か月間で売上をあげることができなければ、最悪廃業の可能性もあります。逆に、事業を開始する段階ですでに販売先を持っている場合、すぐに売上を見込めることから評価が高くなる傾向です。

 

仕入れ先についても同様です。特定の取引先が決まっている場合には、取引先の社名・氏名と住所、シェア、掛け取引の有無、支払条件なども書くようにしましょう。

6:関連企業

事業主本人もしくは法人代表者別の会社を経営している場合や、配偶者が会社を経営している場合に関連の深い企業として記入する項目です。企業名、代表者名、所在地、業種を書きます。該当する企業がなければ、空欄でも大丈夫です。

7:お借入の状況

事業主本人または法人代表者の個人的な借り入れを記入する項目です。事業のための借り入れだけでなく、住宅、車、教育ローンやカードローンなどもすべて偽りなく記入しましょう。借り入れがない場合は空欄のままにします。

 

融資の申し込みをする際には、他の借り入れはないに越したことはありません。特にカードローンは金利が高く、返済が長期にわたる可能性があるため、融資の際にマイナスの評価になってしまいます。もし可能であれば、返済が終わってから融資の申し込みをするのがよいでしょう。

8:必要な資金と調達方法

資金が必要な理由と、資金を調達する方法を書く項目です。左側に必要な資金の金額を、右側に調達の方法を記入し、左右の金額を一致させる必要があります。簿記になじみがない人にとっては書き方が難しい場合があるため注意しましょう。

 

融資担当者は、この項目で運転資金と設備資金は具体的に何にいくら必要なのか、十分かつ適切な内容の自己資金があるか、資金の調達先に問題がないかなどを見ます。融資希望金額に対して自己資金が少ない場合は、希望額の融資が通らない可能性があります。

 

一般的に、運転資金は売上の3ヶ月が目安です。

 

関連記事:運転資金の融資が受けられる金融機関は?資金不足を解消する方法を解説

9:事業の見通し

事業に関する売上と経費の項目です。財務諸表でいうと損益計算書にあたります。売上の見込みは、業種によって適切な計算方法が異なります。

 

例えば、理美容業などのサービス業では、客単価×席数×1日の回転数×月の稼働日数で求めるのがよいでしょう。製造業や印刷業などの設備の能力が売上に直結するような業種では、設備の工賃単価×生産能力×設備数×月の稼働日数が考えられます。

 

売上原価や経費についても、できるだけ明確な根拠に基づいて算定します。設備などを購入する場合は、減価償却費を計上します。創業から数か月間は赤字の見込みでも問題ありませんが、その場合には十分なキャッシュがあることが前提です。

 

赤字の見込みであれば、融資担当者は返済が滞るかもしれないと不安になります。実現可能な根拠とともに、将来は黒字化の見込みがある計画にする必要があります。

10:自由記述欄

追加のアピールポイント、事業を行う上での悩み、アドバイスがほしいことなどを書くことができる項目です。

 

事業計画書のほとんどの項目はデータや数値の裏付けのある内容を記入しますが、自由記述欄では創業者の熱い思いや取り組みなどについて自由に書くことができます。

 

補足することがないからと空欄にせず、融資担当者と事業のビジョンや熱意を共有し、事業を応援してもらえるような内容を必ず書きましょう。

事業計画書の作成は義務ではない

事業計画書を作成することは、法律で定められた義務ではありません。事業計画書を作成しなくても事業を始めることは可能で、作成しないことにより経営者が罰せられることはありません。また、事業所に事業計画書を備え付けたり、従業員に開示したりといった義務もありません。

 

実際、書き方がわからない、時間がない、書いたところで思い通りに事業が進まないなどの理由で事業計画書を作成しないまま事業を始める経営者の方も珍しくありません。7割の会社が事業計画書を作っていないという調査結果もあるくらいです。

 

しかし、事業計画書は事業の経験がある人ほど作成し、事業計画書を作成した企業の方が売上が増加する傾向です。事業計画書の作成や悩みは、石黒健太税理士事務所まで気軽にご相談ください。

 

参考:日本政策金融公庫「起業と起業意識に関する調査

事業計画書を作成するメリット

できれば作成したくないと考える人も多い事業計画書ですが、実は作成するメリットがたくさんあります。作るために多くの時間と手間のコストがかかりますが、その分得られるものも多く、今後事業を展開するために役立つでしょう。

事業内容が明確になる

事業計画の作成は、創業者の頭の中にあるイメージやアイデアを整理する良い機会です。フレームワークを活用することで、これまで十分に検討できていなかった事柄も明らかになります。言語化することで事業の全体像が明確になり、これから進むべき道筋が見えてくるでしょう。

 

また、競合と比べた自社の強みや独自性を知ることで、どのような価値を誰に提供していくのかという事業の根幹部分を再認識することができ、マーケティング戦略が立てやすくなります。

社内外の情報共有に役立つ

社内外に事業のビジョンを伝えたいときに、事業計画書を活用できます。また、社外向けに自社の取り組みを紹介する際に資料として使うことも可能です。

 

社内向けには、従業員や事業に一緒に取り組むパートナーに経営者が頭の中で考えていることを共有するために使うことができます。全員に全ての内容を開示する必要がないケースもありますが、企業の課題やビジョンを従業員と共有し、計画通りに進んでいるかを定期的に確認することが大切です。

リスク管理と課題が把握できる

経営者や経営幹部にとって重要なのは、事業計画から自社のリスクや課題を把握できる点です。リスクとは「将来発生するかもしれない、事業に悪影響を及ぼすこと」です。リスクには法的リスク、事故や災害のリスク、金銭的リスクなど様々な要因があります。

 

事業を行う以上は何らかのリスクを負うことは避けられないので、目を背けることなく、リスクをきちんと予見して解決策まで考えておくことが大切です。また、人手不足や生産性の低さといった経営課題が見つかった場合も同様に、対策を考えることができます。

融資を受ける時の材料となる

創業融資を始め、事業のために融資を受ける際には金融機関から事業計画書の提出を求められる場合がほとんどです。融資担当者は、資金調達の理由に妥当性があるか、事業の成長見込みがあるか、安定して経営していけそうかを事業計画書を見て確認します。

 

融資のために面談を行う場合も、事業計画書の内容に沿って質問されます。創業融資がきっかけで事業計画を作成する方も多いでしょう。

 

今すぐ融資を受ける予定がなくても、事業計画書のベースができていれば、資金調達が必要になった際にすぐに対応できます。

 

事業計画書の作成で困ったら専門家に相談

銀行から事業計画書の提出を求められたが自分で作る自信がない、事業が忙しくじっくり取り組む時間がないなど、お困りの経営者の方も多いでしょう。そのようなときは、一人で悩む前に専門家に相談しましょう

 

石黒健太税理士事務所では、事業計画書の作成をサポートいたします。創業融資をはじめとする資金調達のサポートや経営支援を強みとしており、事業の成長をより早く確実に実現できるように支援可能です。まずは気軽にお問い合わせください。

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