マネーフォワードは経費精算できる?
経費精算とは、従業員が立て替えた費用を会社側が払い戻すまでの一連の作業のことを指します。この作業は、不正防止だけでなく、財務状況を正確に把握するための大切なプロセスです。管理不足が原因で、資金繰りが悪化することも少なくないため、管理体制は強化しておくべきでしょう。
そこで経費精算ツールとしておすすめなのが「マネーフォワードクラウド経費」です。経費精算がひとつのツールで完結するので、申請や払い漏れが防げるだけでなく、進捗管理もしやすいのがポイントです。
ここからは、マネーフォワードクラウド経費の概要や、導入がおすすめの会社などを解説します。
クラウド経費で経費精算が自動化できる
クラウド経費では、経費の申請や承認、仕訳、従業員への振り込みなどの作業と管理がオンライン上で完結します。クラウド経費の具体的な作業フローは、以下の通りです。
①明細を自動で取得して申請
②担当者→上司→経理の順に内容を承認
③振込APIを作成し、従業員に支払い
このように、一連の作業がひとつのシステム内でできるため、申請書の廃止などのペーパーレス化が実現できます。その他にも、振込データが自動で作成されるのもメリットです。入力が自動化されることで、人的ミスの削減に繋がります。
また、詳細は後ほど解説しますが、明細情報をクレジットカードなどの決済サービスから取得できるため、申請や仕訳の手間を削減できるのもポイントです。自動化は作業効率化だけでなく、ミス防止やコスト削減など、様々な効果をもたらします。
クラウド経費がおすすめな会社
クラウド経費は、インターネット上にサーバーが構築されているため、場所や時間を問わず利用できるのが強みです。そのため、以下の特徴を持つ会社におすすめなサービスです。
・従業員の外勤が多い
・テレワークを導入している(または検討中)
・従業員などが多く、経費精算が頻発している
クラウド経費は、スマートフォンアプリの提供があるため、外勤中の隙間時間を使った申請ができます。インターネット環境さえあれば、わざわざ会社に出向く必要もありません。どこでも申請・管理できるため、経費の支払い漏れを防げるでしょう。
また、経費精算が頻発している会社では、担当者のリソース不足が目立ちます。クラウド経費は、申請から従業員への振込がワンストップでできるため、作業効率が向上し、担当者の負担軽減が可能です。
クラウド経費をおすすめできない会社
クラウド経費は、便利である一方、コストやセキュリティリスクがあるのも事実です。そのため、以下の特徴がある会社は、クラウド経費の導入は避けた方が良いでしょう。
・事業が安定していない(赤字が続いている)
・経費精算が滅多にない
・経費精算を小口現金で管理している
・高いセキュリティレベルを求めている
費用については後述しますが、月または年単位でコストが発生します。そのため、赤字経営が続いていたり、システムの使用が少なかったりする場合は、コストが痛手になる可能性が高いと言えます。
また、2段階認証などのセキュリティ対策があるものの、情報漏洩のリスクは完全には排除できません。より高いセキュリティを求める場合は、特定のパソコンからしか使えない「インストール型のソフト」を利用すると良いでしょう。
石黒健太税理士事務所では、クラウド経費を利用したDX化のサポートを行っています。「クラウド経費が自社に合うか不安」などお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。ご相談は、お電話でも受け付けております。
マネーフォワードの経費精算システムでできること
マネーフォワードの経費精算システムは、様々な機能を有しており、使い勝手が良いのが特徴です。具体的には、以下の作業が可能です。
できること |
概要 |
クレジットカードや電子マネーなどの明細から経費を登録 |
連携した決済サービスから明細情報を取得し、科目や内容を自動で登録できる。 |
ICカードから交通費の入力 |
ICカードリーダーアプリを利用することで、ICカードから乗車データを直接読み取れる。 |
スマホで撮影したレシートの読み取り |
領収証やレシートの写真を撮るだけで、金額などの情報を画像で読み取り、入力を補助してくれる。 |
承認フローの構築 |
承認ルールやルートなどを設定でき、トラブル防止に繋がる。 |
経費の分析 |
経費を月単位や部署ごとに集計でき、グラフ化してくれる。 |
会計システムとの連携 |
マネーフォワードクラウド会計だけでなく、他の会計ソフトともデータ連携ができる。 |
電子帳簿保存法への対応 |
領収証などの紙書類をスキャナ保存でき、ペーパーレス化が図れる。 |
参考:マネーフォワード クラウド「マネーフォワード クラウド経費の機能一覧」
ここからは、これらの機能についてくわしく解説していきます。
クレジットカードや電子マネーなどの明細から経費を登録
クレジットカードなどの決済サービスと連携することで、明細情報が取得できます。取得できる情報は、日付・金額・相手先などで、経費科目も自動で分類してくれます。入力作業なしで申請が可能なため、手入力などの手間がかかりません。
また、決済サービスからデータを直接取得するため、誤情報の入力を防げます。申請時のミスが減少し、差し戻しにかかる時間を減らすことが可能です。
ICカードから交通費の入力
マネーフォワードが提供するICカードリーダーアプリを起動してカードを読み取ると、日付・金額・乗車区間などの乗車履歴が取得できます。対応している交通系ICカードは、SuicaやICOCAを含む33種類(令和7年6月現在)です。読み取ったデータをクラウド経費に転送できるので、経費の入力作業が省けます。
また、ICカードの残高などを経理担当者と共有しやすいのもメリットです。アプリで残高を把握すれば、交通機関の窓口に出向く回数が減るため、経理担当者の事務負担が軽減できます。
スマホで撮影したレシートの読み取り
クラウド経費には、OCR入力機能があります。現金で支払ったレシートをスマホで撮影することでAIが画像を読み込み、日付・金額・支払先などの情報を登録できます。登録した情報は、自動で仕訳されるので手入力の手間を削除できます。
また、撮影したレシートは、スキャナ保存が可能です。レシートや領収証のペーパーレス化ができるため、書類の整理整頓の事務手間がなくなります。
承認フローの構築
クラウド経費では、経費精算の申請から承認について、回議ルートの設定が可能です。担当者→上司→経理担当者などの一般的なルートはもちろん、部署や役職に沿ったルート分岐が可能なため、より実務に即した確認ができます。
また、システムでの承認後は、次の承認者へ自動で転送されるため、申請書の持ちまわり時間が削減できます。時間的制約がなくなるので、担当者と承認者のスケジュール調整が不要になり、業務のスピード感が高まるでしょう。
経費の分析
クラウド経費で管理権限を持つ人は、経費の分析機能が利用できます。具体的には、部署や科目ごとに集計でき、グラフの作成が可能です。また、集計は月や年単位など、細かい設定ができるため、必要な情報を抽出しやすいのもポイントです。
分析機能を利用することで、データの整理や分類などの作業が簡素化するのはメリットでしょう。また、データはグラフ化され、一目でわかりやすいのも特徴です。毎月の財務状況を把握する「月次報告」にも活用できるため、早期に経営の問題点に気づきやすいでしょう。
関連記事:月次報告とは?経理初心者が月次決算をするメリットと会社の成長を加速させるポイント
会計システムとの連携
マネーフォワードクラウド会計だけでなく、freeeや弥生会計などの会計ソフトとも連携ができます。経費精算の内容が会計ソフトに連携できれば、入力作業の工数やミスの削減に繋がります。
また、経費の情報をリアルタイムに近い状態で取得できるため、資金繰りの改善や迅速な経営判断に役立てることが可能です。
電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法とは、税法上の必要書類についてペーパーレス化を実現するために定められた法律です。領収証などの紙書類について、一定要件を満たせばスマホで撮影した画像でも保存が認められるため、外出先でも対応に困りません。
クラウド経費は、電子帳簿保存法に対応したシステムのため、活用すれば領収証などの現物保管が不要になります。保管場所の確保がなくなるため、担当者の業務負担が減らせます。
ただし、電子保存の適用を受けるには、マニュアルと規程の整備が必要です。これらの整備を失念すると、税務署から指摘を受ける恐れがあります。マニュアル等の整備や導入でお困りの方は、ぜひ当事務所にお気軽にお問い合わせください。お電話でもご相談可能です。
マネーフォワードの経費精算システムの使い方
システムの導入を検討している方の中には、導入後の操作に不安を感じる方もいるでしょう。ここからは、マネーフォワードの経費精算システムの使い方について解説します。
参考:マネーフォワード クラウド「はじめてガイド」
基本情報を設定する
マネーフォワードクラウド経費を使う前に、まずはマネーフォワードクラウドの基本情報を設定します。パスワードなどのログイン情報が設定できたら、事業者情報の入力画面が表示されるので、入力欄を埋めていきます。このとき設定する基本情報は、以下の通りです。
・事業者区分(法人 or 個人)
・会社名
・都道府県
・担当者の名前
・担当者の連絡先
・従業員の人数
これらが入力できたらアカウントが作成され、サービスが利用できるようになります。
経費機能を設定する
マネーフォワードクラウド経費で、経費業務に必要な以下の情報を設定します。情報を設定できるのは、権限管理者に限られます。
・勘定科目
・経費科目(バス運賃などわかりやすい名称にする)
・仕訳設定
また、会計ソフトに連動しておけば、今後の帳簿付けが楽になります。基本設定画面から、マネーフォワードクラウド会計との連携設定ができるので、こちらも設定しておきましょう。
ワークフローを設定する
基本設定が終わったら、運用に必要な「承認フロー」と「ワークフロー」を設定します。それぞれの作成や設定は、以下の順で行います。
ステップ |
行う作業 |
①承認ルールの整備 (会社側で設定) |
・承認者を選定する ・事前承認が必要なケースを洗い出す ・上の内容を盛り込んだルールを整備 |
②承認ルートの決定 (会社側で設定) |
・承認する順番を決めておく (例:申請者→第1承認者(上長)→第2次承認者(代表)→第3承認者(経理担当) |
③承認ルートの設定 (マネーフォワードで設定) |
・②で決めた承認順にルート設定をする ・所属や費用別に設定できるため実務に沿ったルートで設定する |
④ワークフロー設定 (マネーフォワードで設定) |
・③で作成したルートをもとに、ワークフローを設定する ・ワークフローが複数ある場合は、「営業部 一般」「営業部 課長」など、わかりやすい名称をつける |
⑤ワークフロー割当 (マネーフォワードで設定) |
・④で作成したワークフローを各従業員に割り当てる |
※③~⑤の作業については、「マネーフォワード クラウド経費 使い方ガイド」を参照
また、承認ルールを決める際は、シンプルでわかりやすい運用を目指しましょう。複雑なルールだと従業員が理解できず、ミスの発生に繋がります。新たな事例が見つかっても、定期的にルールを改善していけば問題ありません。初めから完璧を求めないようにしましょう。
マネーフォワードの経費精算システム導入時の注意点
システム導入後の失敗でよくあるのが、機能面の不満やコストの負担などです。導入後に後悔しないためにも、以下の注意点はしっかりと把握しておきましょう。
・導入する目的と課題を明確にする
・自社にあったプランを選択する
・今使っている会計ソフトと連携できるか確認する
・経費精算ルールを作成する
・導入前に従業員への周知と運用方法を明確にする
内容を1つずつ解説していきます。
導入する目的と課題を明確にする
システムを導入する目的や自社の課題が曖昧だと、業務で必要な機能が把握できません。導入前に経費精算システムがなぜ必要なのか、根本にある問題を考えてみましょう。導入の目的や課題の一例は、以下の通りです。
・経費精算が頻発し、従業員の負担が増えている
・差し戻しが多く、経理担当が主の業務に集中できない
・経費などのコスト負担が増加しており原因を知りたい
たとえば、入力ミスの差し戻しが多いなら、自動入力の機能があるシステムを選ぶとミスの防止に役立ちます。また、コスト増加の原因を知りたいなら、分析機能があるシステムがおすすめです。データ収集の時間が短縮できるので、経営の問題が早期に発見しやすくなるでしょう。
導入の目的が明確化すれば、自社に必要な機能が備わったシステムを選択できます。
自社にあったプランを選択する
クラウド経費の料金プランは、従業員の人数で異なります。従業員50名以下の場合は、以下の3プランが用意されています。支払い方法は、「一括」か「月払い」が選択でき、一括払いの方がお得です。
ひとり法人プラン (アカウント数1名) |
・月払い 3,980/月 ・一括払い 29,760円/年(月々2,480円) |
スモールビジネスプラン (アカウント数3名まで) |
・月払い 5,980/月 ・一括払い 53,760円/年(月々4,480円) |
ビジネスプラン (アカウント数5名まで) ※6名以上からは500円/名の追加料金が発生 |
・月払い 7,980/月 ・一括払い 77,760円/年(月々6,480円) |
利用できる機能はどのプランも同じですが、アカウントが作成できる人数にそれぞれ制限があります。また、ビジネスプラン限定で、追加料金ごとにアカウント数を追加できます。自社の規模にあったプランを選択しましょう。
また、従業員が51名以上いる場合は、マネーフォワードへの見積りが必要になります。
今使っている会計ソフトと連携できるか確認する
会計ソフトと連携できれば、帳簿付けや仕訳の業務が楽になります。使用している会計ソフトがクラウド経費と連携できるか確認しておきましょう。連携できる会計ソフトには、以下が挙げられます。
・freee
・弥生会計
・勘定奉行
・PCA会計
・大蔵大臣
自社のソフトが連携できるかは、以下の記事をご覧ください。
参考:マネーフォワード クラウド「連携実績のある会計ソフト/基幹システム一覧」
経費精算ルールを作成する
経費精算のルールを作成することで、ミスや不正の防止、業務効率化が期待できます。経費精算ルールには、以下の内容や項目を記載するのが一般的です。
目的や適用範囲 |
・経費の種類を決める ・正社員、アルバイト、パートなど適用する対象者を設定する |
経費の上限 |
・不当な請求を防止するために金額の上限を設定する ・上限を超える場合は、事前協議が必要などのルールを追加する |
自己決済の禁止 |
・不正防止のために別の承認者に確認させる |
精算日の設定 |
・期日を設定することで申請漏れを防ぐ |
領収証がないときの対応 |
・申請時に日付、目的、金額など必要な情報を追記させる |
ルールを作成するときは、例外を禁止する旨を記載しておきましょう。例外を認めると、一貫性が失われ、混乱や不公平感が生じてしまいます。
また、交通費・出張費・交際費は、認識にズレが生じやすい経費です。誤解を与えないためにも、「運賃の支給は2㎞まで」「最安の経路を使用すること」など、細かく指定しておきましょう。
導入前に従業員への周知と運用方法を明確にする
周知せずにシステムを導入すると、現場の従業員は混乱してしまいます。混乱や誤解によって思わぬトラブルを引き起こすことも珍しくありません。導入後、スムーズに対応するためには、従業員への周知が大切です。
また、経費精算ルールや、システムの操作方法などは明確にして文章に残しておきましょう。マニュアルや規定があれば、経理担当者への問い合わせを減らせます。従業員や会社側、双方の負担が軽減できるため、運用方法などは導入前に整備しましょう。
バックオフィスの業務効率化は石黒健太税理士事務所へご相談ください!
石黒健太税理士事務所では、企業様のバックオフィス業務をサポートしています。具体的には、DXによる以下の取り組みを実施し、業務効率化に寄与しています。
・マネーフォワードなどの導入支援
・経理、労務、請求などの業務フローの整理
・チャットツールやタスク管理ツールの選定と導入支援
・操作マニュアルの作成や現場従業員へのレクチャー
特に、マネーフォワードなどの会計ソフトの導入支援は企業様に好評です。「自動化でミスの心配がなくなった」「無駄な時間や労力が減り、本業に力を入れやすくなった」など、企業様が抱える様々な問題を解決しています。
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まとめ
マネーフォワードクラウド経費は、経費精算が自動化できる便利なサービスです。活用することで、作業時間の短縮や、生産性の向上が実現できます。ただし、導入後の運用をスムーズに進めるには、ルールやマニュアルなどの整備も必要です。
当事務所では、バックオフィス業務に関するノウハウが豊富なため、マニュアルの整備だけでなく、自社にあった体制づくりが可能です。マネーフォワードの導入に不安な方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。