役員報酬で失敗しないための税務上の3つのルール
個人事業主のときとは異なり、法人の場合は役員への給料(役員報酬)をいつでも自由に変更したり、経費(損金)にしたりできるわけではありません。
国税庁のルールにのっとって支給しなければ、税金が高くなって損をしてしまいます。
参考:国税庁「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
まずは、基本となる3つのルールについて見ていきましょう。
1. 毎月、同じ金額を払うこと(定期同額給与)
基本のルールです。
「1年間、毎月50万円ずつ払う」と決めたら、会社の売上が良くても悪くても、ずっと50万円を払い続けなければなりません。
途中で変えると、会社にかかる税金が高くなって損をします。
2. ボーナスは「事前に税務署に宣言」すること(事前確定届出給与)
「社長にも夏と冬にボーナスを出したい」という場合は、
あらかじめ「○月○日に、いくら払います」と税務署に届出を出しておく必要があります。
1日でも、1円でもズレると、税金上の経費として認めてもらえません。
3. 上場企業のような特別なルール(業績連動給与)
会社の業績と完全に連動して給料が変わる仕組みですが、これから法人化する1人社長や中小企業には関係のないルールなので、無視して大丈夫です。
法人化の給料設定で後悔するケース

役員報酬を決める際に、よくある後悔のケースを3つご紹介します。
これらを知っておくだけでも、大きな失敗を防ぐことができます。
役員報酬が高すぎて資金繰りが圧迫する
「どうせ自分のものになるから」と役員報酬を高く設定しすぎると、会社の資金繰りを圧迫します。
役員報酬には「毎月同じ金額を支払う」という定期同額給与のルールがあるため、
会社の売上が一時的に落ち込んでも、決めた金額を支払い続けなければなりません。
結果として、会社の通帳からお金がなくなってしまう原因になります。
役員報酬が低すぎて個人の生活が苦しくなる
「会社にお金を残して法人税を安くしよう」と役員報酬を低く設定しすぎると、
個人の手取りが減り、個人の生活が苦しくなります。
役員報酬は原則として年度の途中で増やすことが難しいため、日々の生活費はもちろん、
住宅ローンや子どもの教育費、将来への貯蓄などが無理なく支払えるかを事前に計算しておく必要があります。
会社の社会保険料負担を考えていなかった
個人事業主のときと異なり、法人化すると健康保険や厚生年金などの社会保険への加入が義務づけられます。
社会保険料は、役員個人の給料から引かれるだけでなく、会社も同じ金額(同額)を負担(折半)しなければなりません。
「役員報酬を高くしすぎた結果、会社が負担する社会保険料も一気に跳ね上がり、キャッシュが圧迫された」というのは非常によくある失敗です。
関連記事:1人社長の社会保険料はいくら?具体的な計算方法と役員報酬8万円の社会保険料の金額
法人化の給料設定はいくらがいい?

法人化後の給料(役員報酬)を設定する際の結論は、
「法人税」と、個人にかかる税金(所得税・住民税)+「社会保険料」の合計負担額が最も少なくなる金額に設定することです。
個人の所得が高くなるほど所得税の税率は高くなりますが、
法人税の実効税率は約30%(所得金額によってはさらに低い軽減税率も適用)で頭打ちになります。
この2つのバランスをシミュレーションし、手取りが最大化するポイントを見つけるのが基本です。
ただし、節税の観点だけで金額を決めるのはおすすめしません。
個人の手取りが、住宅ローンや教育費などの生活費を無理なく賄える水準であることや、
将来受け取る年金受給額(厚生年金に多く加入するかどうか)なども総合的に考慮して、
納得のいく金額を設定することが大切です。
関連記事:中小企業の役員報酬の相場は?役員報酬が高すぎる中小企業の注意点と手取りをシミュレーション
法人化の役員報酬の決め方・手順

役員報酬を決定するためには、会社法に基づいた正しい手続きを踏む必要があります。
以下の3つのステップに沿って進めましょう。
ステップ1:株主総会で役員報酬の総額を決定する
まずは、会社の最高意思決定機関である「株主総会」を開き、
全役員に支払う役員報酬の支給上限額(総額)を決議します。
ステップ2:株主総会で役員報酬の金額を決定する
株主総会で承認された上限額の範囲内で、各役員に支払う個別の役員報酬額を決定します。
なお、取締役会を設置していない会社(1人社長の会社など)の場合は、
ステップ1の株主総会で個別の金額まで同時に決定することができます。
ステップ3:議事録を作成する
役員報酬を決議した証拠として、必ず「株主総会議事録」または「取締役会議事録」を作成・保存しておきます。
これは税務調査が入った際、役員報酬の支給が法的に正しい手続きを経て決定されたことを証明するための重要な書類となります。
注意点:法人化して3ヶ月以内に決定する
新しく会社を設立した場合、設立から3ヶ月以内に最初の役員報酬を決定し、支給を開始しなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、定期同額給与として認められず、経費に算入できなくなってしまうため注意してください。
役員報酬とセットで検討すべき制度

役員報酬の額をただ上げるのではなく、手取りを最大化しつつ節税効果を高めるためには、
以下の3つの制度をセットで検討することが非常に効果的です。
出張手当
会社で「旅費規程」というルールを作成しておくことで、出張の際に出張旅費(日当)を支給できるようになります。
出張手当は、会社の経費(損金)になるうえに、受け取る役員個人にも税金(所得税・住民税)や社会保険料がかかりません。
役員報酬を上げるよりもはるかに手元にお金を残せる強力なメリットがあります。
社宅家賃
個人で賃貸マンションなどを契約している場合、その契約を会社名義に切り替えて「役員社宅」とすることで大きな節税になります。
会社が家主に家賃の全額を支払い、役員(あなた)からは一定の賃貸料(家賃の10%〜50%程度)を給与から天引きして会社に支払います。
家賃の大部分を会社の経費にしつつ、あなたの個人の負担を劇的に抑えることができる仕組みです。
退職金
将来、会社を引退するときの「役員退職金」も早い段階から計画しておくべき制度です。
役員退職金は、会社にとって全額を経費にできるほか、受け取る個人側でも「退職所得控除」という大きな節税メリットが適用されます。
現役時代の役員報酬を無理のない範囲に抑えて会社にキャッシュを残し、
将来、税負担が軽い退職金として受け取る戦略は非常に有効です。
役員報酬の悩みは石黒健太税理士事務所へご相談ください!
法人化後の給料(役員報酬)をいくらにすべきかという問題は、
個人のライフプラン、会社の資金繰り、税金や社会保険料の仕組みが複雑に絡み合うため、
ご自身だけで最適な答えを導き出すのは簡単ではありません。
節税も大切ですが、会社の経営とご家族の生活をどちらも豊かに守ることが一番のゴールです。
石黒健太税理士事務所では、
初めて法人化を検討される個人事業主の方に寄り添い、専門用語を使わずに分かりやすいシミュレーションを行います。
「なぜその金額なのか」をあなたの頭でしっかり納得していただけるよう、最適なプランを一緒に考えます。
役員報酬の決め方や、手取りを最大化する各種制度の活用について不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!


