京都のクリニック事情

京都でクリニック開業を検討するうえで、まず把握しておきたいのが「診療所の数」や「医師数の動向」といった地域医療の全体像です。ここでは、公的データや医師向け情報をもとに、京都府のクリニック事情を解説します。
京都府の一般診療所数は2,449施設
京都府内の一般診療所数は2,449施設(令和2年10月1日現在)とされており、人口10万人あたりの施設数は95.0施設(全国平均81.3施設)と大きく上回っています。人口規模を考えると、京都府は全国的に見ても診療所が比較的多い地域に分類されます。
また、診療所の内訳を把握するうえで参考になるのが、日本医師会が運営する地域医療情報サイトです。こちらのサイトでは、京都府内の一般診療所を以下のように診療科目別に確認できます。
- 内科系診療所
- 外科系診療所
- 小児科系診療所
- 産婦人科系診療所
- 皮膚科系診療所
- 眼科系診療所
- 耳鼻咽喉科系診療所
- 精神科系診療所
京都府の人口10万人あたり施設数でみると、内科系診療所は54.27施設(全国平均45.47)、外科系診療所は21.84施設(全国平均19.15)と全国平均に比べて京都は外科系診療所よりも内科系診療所が多いことがわかります。
参考:京都に縁のある医師との絆ネット「京都の医療状況」
参考:日本医師会 地域医療情報サイト「京都府」
京都府の医師数は減少傾向
京都府の医療施設の従事者医師数は、8,525人(令和4年12月末)であり、人口10万人対医師数は、334.3人と全国平均の262.1人を大きく上回っています。
全国でも高い水準にありますが、平成16年度から始まった新しい医師臨床研修制度の導入の影響などによる医師不足、中でも小児科・産科等特定診療科の医師不足や地域偏在が課題となっています。
このような状況は、見方を変えると新規開業医にとってのチャンスでもあります。既存クリニックが減少しているエリアでは、地域住民からの医療ニーズが残っているにもかかわらず、受け皿が不足しているケースも少なくありません。
京都府は観光都市のイメージが強い一方で、実際には定住人口も多く、高齢化が進んでいる地域です。そのため、内科・在宅医療・かかりつけ医機能を重視したクリニックは、今後も一定の需要が見込めるといえるでしょう。
参考:京都に縁のある医師との絆ネット「京都の医療状況」
京都でクリニックを開業するまでの流れ
京都でクリニックを開業するには、思いつきだけではなく段階的に準備を進めることが重要です。具体的には、以下の流れです。
・ステップ1:理想の医療を形にする事業計画書を作成する
・ステップ2:開業エリアと物件を選ぶ
・ステップ3:必要な資金を調達する
・ステップ4:内装工事と医療機器を準備する
・ステップ5:行政手続きをする
・ステップ6:スタッフを募集する
・ステップ7:開業する
ここでは、初めて開業を考える医師の方でもイメージしやすいよう、7つのステップに分けて解説します。
ステップ1:理想の医療を形にする事業計画書を作成する

最初に取り組むべきなのが事業計画書の作成です。事業計画書は、金融機関から融資を受けるためだけでなく、「どんな医療を、誰に、どこで提供したいのか」を整理するための設計図でもあります。
具体的には、以下のような内容をまとめていきます。
- 診療科目・診療方針(専門性、かかりつけ医機能など)
- 想定する患者層(年齢層・地域特性)
- 開業エリアの競合状況
- 初期費用・運転資金・収支見込み
京都はエリアごとに患者層や医療ニーズが大きく異なるため、「京都だから」ではなく「この地域だから」と必要な医療を言語化することが成功の第一歩です。
関連記事:事業計画書のスムーズな作り方とは?わかりやすい方法を解説
ステップ2:開業エリアと物件を選ぶ
次に重要なのが開業エリアと物件選びです。京都市中心部は人通りが多い一方で競合も多く、郊外や住宅地では地域密着型医療が求められる傾向があります。
エリア選定では、以下の視点が欠かせません。
- 周辺の診療科バランス(競合・不足分野)
- 人口構成(高齢者・子育て世帯など)
- 駅近・駐車場の有無・生活動線
物件については、新築テナント・居抜き物件・医療モールなど選択肢があります。初期費用を抑えたい場合は居抜き物件、集患を重視する場合は医療モールなど、事業計画とセットで判断することが後悔しないポイントです。
ステップ3:必要な資金を調達する
開業には、数千万円単位の資金が必要になるケースが一般的です。主な資金内訳は以下の通りです。
- 物件取得費・保証金
- 内装工事費
- 医療機器購入費
- 開業前後の運転資金
多くの医師は、金融機関からの融資を活用します。その際、ステップ1で作成した事業計画書が重要な判断材料になります。自己資金と借入額のバランスをどう取るかが、開業後の資金繰りを左右します。必要資金の目安についてはこの後ご紹介いたします。
ステップ4:内装工事と医療機器を準備する
資金の目処が立ったら、内装工事と医療機器の準備に進みます。クリニックの内装は、見た目だけでなく動線設計が非常に重要です。
- 患者動線とスタッフ動線を分ける
- 待合室の快適性・感染対策
- 将来の診療拡張を見据えた設計
医療機器についても、「最初からすべて揃える」のではなく、必要最低限+将来追加という考え方が資金面では安全です。
ステップ5:行政手続きをする
京都府内で開業する場合、京都府が案内している「医療機関等の手続き」に沿って準備を進めます。主な手続きには、以下があります。
- 診療所開設届(保健所)
- 保険医療機関指定申請(厚生局)
- X線装置設置届(該当する場合)
- 麻薬・向精神薬に関する届出(必要な場合)
開業の手続きは提出期限が厳密に決められているものも多く、不備があると開業日がずれる可能性があります。専門家のサポートを受けながら進めることで、トラブルを防ぎやすくなります。
参考:京都府「医療機関等の手続き」
ステップ6:スタッフを募集する
開業準備の後半では、看護師・医療事務スタッフの募集を行います。京都は医療機関が多いため、早めに採用活動を始めることがポイントです。
- 求人開始は開業3〜4か月前が目安
- クリニックの理念や方針を明確に伝える
- 開業前研修でオペレーションを共有する
スタッフの定着は、開業後の運営を大きく左右します。「人手確保」だけでなく、長く働いてもらえる環境づくりも意識しましょう。
ステップ7:開業する
すべての準備が整ったら、いよいよクリニック開業です。開業直後は患者数が安定しないことも多いため、資金繰りや経営状況をこまめに確認することが重要です。
開業後も、
- 税務・会計管理
- 資金繰りの見直し
- 将来の分院・拡張計画
といった経営面の判断が継続的に求められます。
京都でクリニック開業を成功させるためには、医療だけでなく経営を支えるパートナー選びも欠かせません。
事業計画や資金計画、開業後の税務に不安がある方は、石黒健太税理士事務所へ相談をしてください。開業前から開業後まで、安心してクリニック運営に集中できる体制づくりをサポートさせていただきます。
関連記事:【京都府内の税務署】開業届の提出先はどこ?管轄地域別に解説
クリニック開業に必要な資金の目安

クリニック開業に必要な資金は、診療科目・開業エリア・物件形態などによって大きく異なります。京都での開業を想定した場合でも、「どの形で開業するか」によって初期費用には数千万円単位の差が生じるのが一般的です。
まず、一般的にかかる主な費用項目は以下のとおりです。
- 物件取得費(購入費・保証金・敷金など)
- 内装工事費
- 医療機器・備品購入費
- 広告宣伝費・採用費
- 開業前後の運転資金(3〜6か月分)
全体の目安としては、5,000万円〜1億円前後がひとつの基準になりますが、物件形態によって資金配分やリスクは大きく変わります。
ここでは、特に影響が大きい3つのケースについて解説します。
ケース1:戸建て
戸建てクリニックは、土地を購入または所有したうえで建物を建てる開業スタイルです。必要資金の目安は、土地購入費+建築費+設備費を含めて8,000万円〜1億2,000万円程度が目安です。
京都市内や駅近エリアでは土地価格が高いため、郊外立地で検討されるケースが多いのが特徴です。長期的な運営や承継を見据える場合に向いている選択肢といえます。
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メリット |
デメリット |
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・設計の自由度が高く、理想の動線・設備を実現しやすい ・将来的な増築や建て替えがしやすい ・資産として土地・建物が残る |
・初期費用が高くなりやすい ・開業までに時間がかかる ・立地によっては集患に工夫が必要 |
ケース2:居抜き物件
居抜き物件とは、以前クリニックとして使われていた物件を引き継いで開業する方法です。必要資金の目安は、物件取得費+改装費+設備調整費で3,000万円〜6,000万円程度が目安です。
資金負担を抑えてスピーディーに開業したい医師にとって、現実的な選択肢と言えます。ただし、引き継ぐ設備の状態や契約条件は慎重に確認する必要があります。
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メリット |
デメリット |
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・内装・設備を活用でき、初期費用を抑えやすい ・開業までの期間が短い ・既存患者を引き継げる可能性がある |
・設備やレイアウトに制約がある ・老朽化している場合、追加工事が必要 ・診療科目が合わないと使いづらい |
ケース3:マンション
マンション開業は、テナント型や医療対応マンションの一室を利用するケースです。必要資金の目安は、保証金+内装+設備費で2,500万円〜5,000万円程度が目安です。
皮膚科・心療内科・眼科など、比較的コンパクトな診療科との相性が良いのが特徴です。都市部での開業や、初期リスクを抑えたい場合に選ばれやすい形態になります。
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メリット |
デメリット |
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・初期費用を比較的抑えやすい ・駅近・人通りの多い立地を選びやすい ・小規模スタートに向いている |
・面積に制限があり、将来拡張が難しい ・管理規約による制約がある ・診療科目によっては不向き |
関連記事:【京都の税理士事務所執筆】不動産税務を相談できるケースと費用の目安
クリニックの開業資金の調達方法
クリニック開業では、多くの場合自己資金だけで全額をまかなうのは難しく、複数の資金調達方法を組み合わせるのが一般的です。ここでは、代表的な3つの調達方法とそれぞれの特徴を解説します。
融資
融資は、クリニック開業における最も一般的な資金調達方法です。金融機関から借入を行い、毎月返済していく形になります。
主な特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- まとまった資金を一度に確保できる
- 返済期間を長く設定でき、月々の負担を調整しやすい
- 事業計画書の内容が審査に大きく影響する
開業時の融資では、自己資金の割合・開業エリアの将来性・診療科目の安定性などが重視されます。そのため、「とりあえず借りる」のではなく、無理のない返済計画を前提に借入額を決めることが重要です。
関連記事:京都で創業融資のサポートが受けられる機関・専門家は?主な融資制度を解説
リース
リースは、医療機器や設備を購入せず、月額料金で利用する方法です。特に高額な医療機器を導入する際によく使われます。
主な特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 初期費用を大きく抑えられる
- 月額固定費として管理しやすい
- 機器更新のタイミングを調整しやすい
一方で、長期間利用すると総支払額が購入より高くなるケースもあります。そのため、高額・更新頻度の高い機器ならリース、長期間使う基本設備なら購入というような使い分けが現実的です。
補助金・助成金
補助金・助成金は、国や自治体が一定条件のもとで支給する資金です。融資と違い、原則として返済不要なのが大きな特徴です。
主な特徴としては、以下のようなことが挙げられます。
- 返済の必要がない
- 採択されれば資金負担を大きく軽減できる
- 申請条件・期限が厳密に決められている
ただし、必ずもらえるわけではなく、申請書類の作成が複雑で、事後報告が必要なケースが多いといった注意点もあります。そのため、補助金は「当てにしすぎず、取れたらラッキー」という位置づけで、融資と組み合わせて考えるのが現実的です。
資金調達の進め方を間違えると、「借りすぎて返済が苦しい」「使える補助金を見逃した」といった後悔につながりやすくなります。京都でクリニック開業を検討している方は、開業前の段階から資金計画を専門家と一緒に整理することが成功の近道です。
融資・補助金・税務まで含めて相談したい場合は、石黒健太税理士事務所へ問い合わせください。
開業準備から開業後まで、安心して医療に集中できる資金計画づくりをサポートいたします。
関連記事:京都の女性起業家が利用できる助成金・補助金は?起業に失敗しないための7つのポイント
クリニック開業で後悔しないためのポイント

開業よりも、開業後に安定して続けられるかが重要です。ここでは、開業後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、押さえておきたい5つのポイントを解説します。
診療圏調査を実施する
診療圏調査とは、開業予定地の周辺にどれくらいの患者数が見込まれるかを、人口・年齢構成・競合医療機関などのデータから分析する調査です。
診療圏調査が必要な理由は、
- そもそも患者数が足りるエリアか
- 同じ診療科の競合が多すぎないか
- 想定している患者層と地域特性が合っているか
を事前に把握できるからです。
「人通りが多そう」「駅前だから安心」といった感覚だけで立地を決めてしまうと、開業後に集患で苦労するケースも少なくありません。診療圏調査は、失敗リスクを下げるための必須作業といえます。
実行可能な事業計画書を作成する
事業計画書は、融資のためだけの書類ではありません。開業後の経営判断の軸になる重要な資料です。
後悔しないためには、
- 患者数を楽観的に見積もりすぎない
- 売上だけでなく、固定費・人件費も現実的に想定する
- 想定どおりにいかなかった場合の「修正案」を用意する
といった点が重要です。
「理想の医療」をベースにしつつ、数字として無理のない計画に落とし込むことが、長く続くクリニック経営につながります。
スタッフとの信頼を構築する
クリニック運営は、医師ひとりでは成り立ちません。看護師や医療事務スタッフとの信頼関係が、診療の質や患者満足度に直結します。
開業時に意識したいポイントは、
- クリニックの理念や方針を丁寧に共有する
- 開業前研修で不安を減らす
- 意見を言いやすい雰囲気をつくる
ことです。
開業直後は忙しくなりがちですが、最初の関係づくりを丁寧に行うことが、離職防止や安定運営につながります。
余裕のある運転資金を確保する
多くのクリニックで後悔につながりやすいのが、運転資金不足です。開業直後は患者数が安定せず、思ったように売上が伸びないことも珍しくありません。
運転資金の目安としては、固定費(家賃・人件費・リース料など)の6か月分以上を確保しておくと、精神的にも経営的にも余裕が生まれます。「資金に余裕がある=冷静な判断ができる」という状態を作ることが、結果的に成功につながります。
専門家に相談する
クリニック開業では、「事業計画」「資金調達」「税務・会計」「行政手続き」など、医療以外の判断が数多く発生します。これらをすべて一人で抱え込むと、判断ミスや見落としが起きやすくなります。
専門家に相談するメリットは、
- 客観的な視点で計画をチェックできる
- 資金繰りや税務の不安を早期に解消できる
- 医師が診療に集中できる環境を整えられる
というような点にあります。
京都でクリニック開業を検討している方は、開業前から相談できる専門家を持つことが大きな安心材料になります。
資金計画や事業計画、開業後の税務まで一貫して相談したい場合は、石黒健太税理士事務所へ相談してください。
後悔のない開業と、長く続くクリニック経営をサポートさせていただきます。
関連記事:京都で顧問税理士をお探しの方は石黒健太税理士事務所へお気軽にご相談ください
京都のクリニック開業の悩みは気軽にご相談ください!

京都でのクリニック開業は、立地選びや物件形態の判断だけでなく、事業計画や人材採用まで、医療以外にも多くの検討事項があります。
特に京都はエリアごとに医療ニーズや競合状況が大きく異なるため、「何となく良さそう」という感覚だけで進めてしまうと、開業後に集患や資金繰りで後悔するケースも少なくありません。
大切なのは、開業そのものをゴールにするのではなく、無理のない資金計画を立て、長く安定して続けられるクリニックをつくることです。
私たち石黒健太税理士事務所では、京都でクリニック開業を目指す先生方を対象に、開業前の計画づくりから開業後の税務・経営まで一貫してサポートしています。安心して医療に集中できる開業を実現したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

