飲食店の確定申告を税理士に丸投げする費用の目安
飲食店の確定申告を税理士に丸投げする費用は、依頼する業務の範囲によって大きく異なります。

記帳代行は仕訳数で報酬が異なる
経理業務を完全に税理士に任せる「丸投げ」の場合、日々の取引を帳簿に記録する**「記帳代行」**の料金が発生します。
この記帳代行の費用は、主に**毎月の取引量(仕訳数)**に応じて設定されるのが一般的です。
| 1ヶ月の仕訳数 | 記帳代行の月額目安 |
| 50仕訳未満(小規模店) | 5,000円〜10,000円 |
| 51〜100仕訳 | 10,000円〜15,000円 |
| 101仕訳以上(複雑な取引) | 15,000円〜 |
仕訳数とは、売上や仕入れ、経費の支払いといった取引の件数のことです。売上規模や取引の複雑さが増すほど、費用は高くなります。
決算申告のみのスポット契約もある
日々の記帳は自分で行い、**「決算と確定申告の手続きだけ」を税理士に依頼する「スポット契約」**も可能です。
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費用目安: 売上規模や記帳の正確性にもよりますが、15万円〜30万円程度が目安です。
スポット契約のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 費用を抑えられる(顧問契約より安い) | 節税や経営のアドバイスが受けられない |
| 経理に詳しい人が社内にいれば有効 | 税務調査対策が手薄になりやすい |
| 記帳に誤りがあっても指摘を受けにくい |
顧問契約への切り替えタイミング
売上が伸びてきて、経理の複雑性が増したタイミングで、スポット契約から顧問契約への切り替えを検討しましょう。

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売上目安: 年間売上が1,000万円を超え、消費税の課税事業者になる場合
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複雑性: 複数店舗の経営、融資を検討している、手元のお金を増やしたいなど、利益率の改善に真剣に取り組みたい場合
税理士を「確定申告の代行者」としてではなく、「良き経営の相談相手」として活用したいと考え始めた時が、顧問契約を結ぶ最適なタイミングです。
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飲食店の経理のやり方は?必要な知識
「お金が残る体質」を作るためには、まず日々の経理を正確に行うことが不可欠です。特に飲食店は現金取引が多いため、いくつか注意すべき点があります。

正確な現金管理は税務調査対策の要
飲食店において、**「日々の売上と現金の動きを正確に記録すること」**は、単なる経理ではなく、税務調査対策の要です。
税務調査では、レジの記録(POSデータ)、レジ締め時の現金残高、銀行への入金記録、仕入れの請求書などが徹底的に比較されます。
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具体的な手順:
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レジ締め: 毎日、営業終了後にレジの残高を確認し、日々の売上とレシートを突合(つきあわせ)します。
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記録: 売上金額と、現金・クレジットカード・電子マネーなどの内訳を日報に明確に記録します。
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証憑(しょうひょう)保管: 売上日報、仕入れの請求書、経費のレシートは全て日付順に整理し、7年間保管します。
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現金主義と発生主義
会計の記録方法には「現金主義」と「発生主義」があります。
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現金主義: 実際にお金が入ったり(売上)、出たり(経費)したタイミングで記録する方法。
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発生主義: お金が動くかどうかに関わらず、取引が発生した時点で記録する方法。
税法上、原則として発生主義で記帳し、確定申告を行う必要があります。
参考:国税庁「収入金額とその計算」
事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額は、その年において収入すべき金額です。(中略)これは、現金を受け取った日ではなく、提供したサービスや商品の対価として確定した日を指します。
貸借対照表と損益計算書
経理の最終的なアウトプットは、以下の2つの書類に集約されます。
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損益計算書(P/L): 1年間でどれだけ儲かったか(利益が出たか)を示す書類。「売上ー費用=利益」
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貸借対照表(B/S): 決算日時点で、お店の財政状態(財産と借金)を示す書類。
特に損益計算書は、利益率の改善に直結するため、経営者が最も活用すべき資料です。
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売上が伸びてきたら、税制面や社会的な信用度を高めるために法人成りを検討するタイミングです。
消費税とインボイス制度
2023年10月から導入されたインボイス制度は、特に小規模飲食店(免税事業者)の経営判断に大きな影響を与えます。

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実務的な影響:
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取引への影響: 制度に登録しない(免税事業者のまま)場合、**BtoB(法人顧客など)**との取引では、相手の消費税負担が増えるため、取引の見直しや値下げ交渉を求められる可能性があります。
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経営リスク: 登録しないことで顧客離れにつながるリスクと、登録することで消費税の申告・納税義務が発生するコストを比較検討する必要があります。
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インボイス制度への対応は、「誰にサービスを提供しているか」、**「今の利益水準で消費税を払う体力がつけられるか」**という視点から、税理士と綿密に相談して決定すべきです。
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飲食店経営者がお金を残すためのポイント
ただ売上を増やすだけでなく、**「手元にお金を残す」**ことが、経営の安定と事業拡大には欠かせません。

資金繰り表を作成する
資金繰り表は、**「これからのお金の出入り」**を予測するための表です。
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**P/L(損益計算書)**は過去の成績表ですが、資金繰り表は未来の予測図です。
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売上が上がっても、仕入れや人件費の支払いが先に来て、**一時的に手元の現金が不足する(黒字倒産のリスク)**事態を未然に防げます。
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融資を受ける際も、金融機関からの評価が高まります。
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FL比率を意識する
飲食店経営において、特に重要視されるのが「FL比率」です。
一般的に、FL比率を55%~60%以内に抑えることが、健全経営の一つのベンチマークとされます。
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達成のための行動例:
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原価(F)の見直し: 食材の仕入れ先の分散、ロス率の削減。
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人件費(L)の最適化: ピークタイムに合わせたシフト調整、マルチタスク化による効率改善。
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試算表を毎月作成する
試算表とは、月次で作成される「暫定的な損益計算書と貸借対照表」のことです。
毎月の利益を把握することは、「赤字対策を後手に回さない」ために極めて重要です。
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試算表を税理士から受け取るだけでなく、オーナー自身が活用する視点が大切です。
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「今月はFL比率が65%だった。来月は仕入れとシフトをこう変えよう」といった、次の一手を打つための判断材料として使いましょう。
定期的に専門家に相談する
経営を「儲かる体質」へ変えるには、税務・会計の専門知識だけでなく、**「飲食業界特有の経営ノウハウ」**を持つ専門家の視点が必要です。
孤独な経営判断から脱却し、**「良き経営の相談相手」**を見つけることが、目標達成への最短ルートとなります。
飲食店経営者が選ぶべき税理士の特徴
現在の税理士がこれらの課題解決に貢献できていないなら、税理士の見直しを検討すべきサインです。飲食店経営者が選ぶべき税理士は、単に申告ができるだけでなく、経営を支援できるかが重要です。

1. 飲食業の顧問先が多い
飲食店の会計は、原価計算、現金管理、インボイス制度対応など、一般業種とは異なる特殊性があります。顧問先に飲食業が多い税理士は、業界特有のノウハウを持っています。
2. 税務調査に強い
飲食店は現金取引が多いため、税務調査の対象になりやすい傾向があります。税務調査対応に強い税理士は、日々の経理の段階から調査で指摘されないための防御策を講じてくれます。
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3. 経理業務改善のアドバイスが受けられる
単に記帳代行を請け負うだけでなく、**「どうすれば経理作業が楽になるか」「クラウド会計ソフトをどう活用するか」**といった、業務効率化のアドバイスをしてくれる税理士を選びましょう。
4. 経営支援に強い(試算表を経営に活かせる)
最も重要なのは、「儲かる仕組み」づくりを一緒に考えてくれることです。試算表や資金繰り表を活用し、FL比率改善や資金調達(融資)の相談に乗ってくれる税理士こそが、「良き経営の相談相手」です。
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まとめ
飲食店の確定申告を税理士に依頼する費用は、業務範囲や売上によって異なりますが、**費用以上に「経営改善に役立つかどうか」**で判断すべきです。

✅ 本記事の重要なポイント
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記帳代行を丸投げする費用は仕訳数で変わり、スポット契約は15万円〜30万円程度が目安。
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年間売上1,000万円超えなど、利益率改善に取り組みたい時が顧問契約の切り替え時。
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FL比率を55%〜60%以内に抑えるための試算表活用と資金繰り表の作成が、「お金が残る体質」への鍵。
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選ぶべき税理士は、「飲食業の顧問先が多い」「経営支援に強い」人物です。
**「もっと利益を改善したい」「お金が残る体質に変えたいが、何から手をつければいいか分からない」**というあなたの潜在的なニーズは、飲食店の事情に詳しい税理士となら解決できます。
飲食店経営のお悩みは、石黒健太税理士事務所へ

当事務所は、飲食業に特化した顧問実績が豊富であり、単なる税務申告だけでなく、**「儲かる仕組みづくり」「資金調達」「FL比率の改善」**といった、経営に踏み込んだ支援を得意としております。
あなたの店の**「良き経営の相談相手」**として、利益を最大化し、お金が残る体質へと変えるサポートを全力で行います。
現在の税理士への不満や、今後の経営に関するお悩みなど、まずはお気軽にご相談ください。
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