京都で飲食店をスムーズに開業するまでの流れ
飲食店の開業準備を7つのステップで解説します。事業を長く安定して続けるためには、丁寧な準備が必要です。まずは全体像を掴み、焦らず着実に進めましょう。
ステップ1:お店のコンセプトを決める
理想のお店を作るため、どのようなお店にしたいかを言語化しましょう。何を売りにするかが明確であるほど、他店との差別化がしやすくなります。成功店舗は「〇〇といえばこの店」という強いイメージを持っています。誰のためのお店なのか、どのような空間で何を提供するのかを明らかにすることで、一貫したコンセプトに基づいた準備が可能です。
ステップ2:物件を探す
物件選びの主な選択肢は居抜き物件とスケルトン物件の2種類です。
居抜き物件は、前の店舗の厨房設備や内装が残されている物件です。高額な厨房機器をそのまま活用できるため、早期の収益化が見込めます。内装や設備の工事を必要としない場合、初期費用を大幅に削減し、開業までの期間を1〜2ヵ月短縮できる可能性があります。
しかし、設備の老朽化による故障や、コンセプトとのミスマッチといったデメリットもあります。特に、前の店舗のイメージが強い場合、そのまま活用するのが自分のお店にとってよいとは限りません。
一方、スケルトン物件は、内装や設備が一切ない建物だけの物件です。初期費用は高くなりますが、ゼロから自分だけの店づくりができるため、長期的な視点での差別化に有利です。特に京都市内では町家を活用した物件が人気で、和の趣を活かした独創的な空間作りが可能です。
ステップ3:資金を調達する
飲食店の開業には、まとまった資金が必要です。以下は主な費用項目の目安です。
費用項目 |
目安金額 |
備考 |
物件取得費用 |
100~300万円 |
保証金・仲介手数料・前払い家賃含む |
内装・設備工事費 |
200~800万円 |
居抜き物件200~400万円、スケルトン物件500~800万円 |
厨房機器 |
100~300万円 |
中古活用で50~150万円に圧縮可能 |
各種申請・許可 |
3.5~20万円 |
食品衛生責任者講習、飲食店営業許可申請、行政書士報酬など |
運転資金(半年分) |
200~400万円 |
人件費・家賃・光熱費・食材費・広告宣伝費など |
合計 |
600~1800万円 |
平均1,000万円前後 |
多くの場合、1,000万円前後の資金が必要です。自己資金が不足する場合は、日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を検討しましょう。自己資金比率が高いほど融資を受けやすくなるため、開業資金の積立は早めに始めておくのがおすすめです。
ステップ4:店舗の設計と施工・厨房機器を選ぶ
コンセプトや予算に基づいて、内装や厨房設備を選定していきます。見落としやすいのが、厨房の動線設計です。効率的な営業のためには、内装が美しいだけでなく厨房の使い勝手がよいことが重要です。
また、保健所の基準を満たす構造になっていることも確認しましょう。保健所の査察では、2シンク制、食器洗浄機の設置、従業員用手洗い場の独立設置などの要件が厳格にチェックされます。基準を満たしていないと営業許可が下りず、開業が大幅に遅れるリスクがあるため、設計段階で保健所に確認すると安心です。
ステップ5:メニューを決める
メニューはお店のコンセプトと直結します。看板メニューはお店の顔であり、集客の要となります。看板メニューを中心に、提供時間、原価、調理オペレーションなどを総合的に考慮してメニュー構成を決めましょう。
京都では外国人観光客も多いため、外国語表記やヴィーガン対応などが差別化ポイントになることもあります。写真付きメニューがあると言語の壁を越えて注文してもらいやすくなるでしょう。地元の食材を取り入れると地域密着型のイメージも強まり、京都らしさを打ち出す工夫として有効です。
ステップ6:各種届出と許認可を取得する
メニューや厨房設備が固まったら、保健所など関係機関への届出を行います。京都市で飲食店を開業するには、飲食店営業許可をはじめとした複数の申請や届出が必要です。
申請書類の準備や施設の検査には時間がかかります。予定通りオープンするため、余裕をもって準備を始めましょう。具体的な許可の種類や京都市の営業許可手数料については、後述します。
ステップ7:お店をオープンする
営業許可が下り、すべての準備が整ったらいよいよオープンです。開業直後は認知度を高めるための販促活動も重要です。来店客の反応を見ながらメニューやオペレーションを柔軟に改善しましょう。
経営者として、帳簿をこまめにつけて経営が順調か確認したり、収支の予測をしたりすることも重要な仕事です。お金や帳簿の管理が苦手な方や、なかなか事務作業の時間が取れない方は、開業を考えたタイミングで税理士とつながっておくことをおすすめします。
飲食店の開業に必要な主な許可・手続き
飲食店を開業するには飲食店営業許可が必要です。立地や提供するサービスの内容によって、他にも許認可や手続きが必要な場合もあります。ここでは、京都市で飲食店を開業するうえで代表的な許可・手続きを解説します。
飲食店営業許可
飲食店を営業するには、食品衛生法に基づく営業許可を京都市保健所に申請し、施設の検査を受けて合格する必要があります。店舗には食品衛生責任者(調理師・栄養士等の資格者、または所定の講習修了者)を1名以上配置することが義務づけられています。
業種や業態によって必要な許可が異なるため、必要な許可業種を事前に確認しましょう。たとえば、レストラン・カフェ・居酒屋・食堂・定食屋などは飲食店営業、テイクアウト専門の弁当店は飲食店営業またはそうざい製造業、パン屋・ケーキ屋は菓子製造業です。
参考:京都市情報館「食品衛生法に基づく営業許可、届出の概要について」
参考:京都市情報館「食品衛生責任者について」
酒類販売業免許
店内で調理した料理と共に酒類を提供する場合は、飲食店営業許可で足ります。しかし、未開栓の瓶ビールやワインなどを販売し持ち帰らせる場合は、国税庁(税務署)が管轄する酒類販売業免許が必要です。
飲食スペースと販売スペースの明確な区別など、厳しい要件を満たす必要があります。販売する相手によっても免許の種類が分かれるため、業態に応じて適切な免許取得が必要です。
参考:国税庁「【販売業免許関係】」
防火対象物使用開始届
以前の用途(オフィスなど)から飲食店に建物の用途を変更する場合、消防法に基づき「防火対象物使用開始届」を消防署に提出し、安全基準を満たすか確認が必要です。特に収容人数30人以上の建物や、本格的な厨房があるお店、地下にあるお店などで必要となる可能性が高いです。オープン前に消防署の立入検査があり、火災報知機や消火器の設置状況などがチェックされます。安全な店舗運営のため、物件契約前や設計段階で消防署に相談すると安心です。
京都市の営業許可の申請手数料は許可の種類によって異なる
京都市で飲食店などを開業する際に保健所に支払う営業許可の申請手数料は、許可業種によって異なります。新規許可取得の手数料の一例は以下の通りです。
- 飲食店営業許可:19,200円
- 菓子製造業:16,800円
- そうざい製造業:25,200円
手数料はすべて前納制で、現金もしくは指定の支払方法での納付が必要です。金額は変更される可能性があるため、最新情報は下記のWebサイトで確認しましょう。
参考:京都市情報館「営業許可申請方法」
飲食店の開業後に必要な手続き
飲食店をオープンした後も必要な手続きがあります。ここでは、法人・個人事業主それぞれが必要な開業後の手続きを整理します。適切に対応して、安心して営業に専念できる環境を整えましょう。
法人向けの手続き
法人として飲食店を開業する場合、会社設立後に以下のような手続きが必要です。
- 法人設立届出書(税務署・京都府税事務所・市区町村役場)
- 青色申告の承認申請書(税務署)
- 消費税課税事業者選択届出書(該当する場合)
- インボイス発行事業者の登録申請(対象者のみ)
- 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
- 源泉所得税の納期の特例に関する申請書(税務署)
- 社会保険・労働保険の新規適用届(年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク)
飲食店は従業員を雇うケースが多いため、税務手続きと併せて労務管理も重要です。また、インボイス登録が必要な場合は開業時に手続きしましょう。手続きに不安がある場合は、税理士や社労士と連携して対応すると安心です。
関連記事:京都で法人設立する方法と流れは?法人設立後に必要な手続きを解説
個人事業主向けの手続き
個人事業主として開業する場合は、例えば以下の手続きが必要になります。
- 開業届(税務署)
- 青色申告承認申請書(税務署)
- 消費税課税事業者選択届出書(税務署)
- インボイス発行事業者の登録申請(税務署)
- 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
- 源泉所得税の納期の特例に関する申請書(税務署)
- 社会保険・労働保険の新規適用届(年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク)
インボイス登録をする場合や、従業員を雇用する場合の手続きは法人と共通する部分があります。青色申告承認申請書の提出は任意ですが、税制上のメリットが大きいので開業のタイミングで忘れずに提出しましょう。
京都市の石黒健太税理士事務所では、飲食店の開業手続きをサポートしています。どの手続きが必要か分からない場合や、書類を作成する時間がない場合は、ひとりで悩まずにお早めにご相談ください。
関連記事:【京都府内の税務署】開業届の提出先はどこ?管轄地域別に解説
飲食店の開業で失敗しないためのポイント
長年の夢だった飲食店を開業しても、開業後まもなく閉店してしまう店舗も少なくありません。ここでは、飲食店開業で失敗を回避し、安定した経営を実現するためのポイントを5つ紹介します。事業の持続性を高め、安心してお店づくりに取り組みましょう。
現実的な事業計画書を作成する
あなた自身の頭の中にある事業の全体像を明確にし、誰が見ても分かるように現実的な事業計画書に落とし込みましょう。毎月の固定費と変動費はどのくらいかかるのか、売上がいくらあれば利益が出て、いつまでに初期投資を回収できるのか。具体的な数字をシミュレーションすることで、経営の健全性を客観的に把握できます。
具体的で現実的な事業計画書は、融資や補助金の申請など、第三者にあなたの事業の現実性や返済能力を示す際に強力な資料となるでしょう。
関連記事:お金がない会社の特徴とお金が残らない本当の理由は?経営を安定化するための改善策
人件費と原価を意識する
飲食店経営で利益を出すには、FLコストの管理が欠かせません。FLコストとは、食材原価(Food)と人件費(Labor)の合計を指します。FLコストは売上の60%以内に抑えるのが理想とされています。料理をたくさん作っても食材費が高すぎたり、スタッフが多すぎて人件費がかさむと、いくら売上があっても手元にお金が残りません。
お店のコンセプトやメニューを決める段階から、料理の原価率を意識し、適切な価格設定をすることが重要です。また、必要な人員を見極め、効率的なシフトを組むなど、人件費をコントロールする意識が求められます。FLコストを健全に保つことが、お店を長く続けるためのポイントです。
メインターゲットを決める
京都で飲食店を開業する場合、観光客と地元の常連客どちらをターゲットとするかで戦略が大きく変わります。観光客向けであれば繁華街や駅近が有利で、価格設定も高めにできます。一方、地元客向けなら日常使いしやすい価格帯や親しみやすい接客が重視される傾向です。
どちらも狙うことはできますが、中途半端な設計になってしまうと、どちらにも響かない結果になるおそれがあります。立地や営業時間、内装、広告の出し方まで、ターゲット像に合わせた設計を行いましょう。
キャッシュフローの管理を徹底する
飲食店にとってキャッシュフローの管理は、事業を健全に保つ上でとても重要です。どれだけ売上があっても、手元の現金が尽きて倒産する「黒字倒産」のリスクがあるためです。
飲食店は、食材の仕入れや家賃など、毎月多くの支出が先行して発生します。一方で、売上は日々の現金や月末の売掛金入金として後から入ってきます。売上が伸びた時ほど仕入れも増え、一時的に現金の流出が加速することもあります。
そのため、「いま手元にいくら使える現金があるか」「来月の大きな支払いに備えて、いくら残しておくべきか」を常に正確に把握しておくことが大切なのです。キャッシュフローを徹底管理することで、資金不足を防ぎ、安定した店舗運営が可能になるでしょう。
関連記事:黒字倒産はなぜ起こる?9つの理由と人手不足倒産になる会社の特徴と前兆
開業前から専門家に相談する
事業計画や資金調達、税務手続きなど、飲食店の開業には幅広い知識が求められます。「ネットで調べながらやれば大丈夫」と思っていたら、後から修正が必要になり、結果として余計なコストがかかってしまうことも少なくありません。
開業前から税理士、社労士、行政書士などの専門家に相談しておけば、見落としを防ぎ、必要な手続きもスムーズに進められます。特に、京都のように地域特有のルールや慣習があるエリアでは、地元に精通した専門家の存在が大きな安心材料になるでしょう。
飲食店の開業サポートを税理士に依頼するメリット
税務や会計を後回しにしてしまう方もいますが、お金の管理が苦手な方こそ、開業前から税理士への相談をおすすめします。税理士にサポートを依頼するメリットは複数あります。
本業に集中できる
飲食店の経営者はやることが山積みです。食材の仕入れ、スタッフの採用・教育、日々の店舗運営、SNSでの集客など、本業に直結する業務だけでも手一杯になるでしょう。記帳や届出書類の作成なども自力でこなそうとすると、本来行うべき店づくりや顧客へのサービスに支障が出てしまいます。税理士に経理や税務の専門的な業務を任せることで、経営者は本業に集中できるでしょう。
個人事業主と法人の税金面の違いが分かる
同じ利益であっても、個人事業主と法人では課税の仕組みが大きく異なり、最終的に手元に残るお金が大きく変わるケースがあります。ある程度の利益が見込める事業であれば、法人化した方が節税になるケースもある反面、法人化には事務負担の増加や社会保険の加入義務によるコスト増といったデメリットも伴います。
税理士は、開業前の事業規模や将来のライフプランをヒアリングした上で、個人事業主として始めるべきか法人を設立すべきかを的確にアドバイスしてくれます。
関連記事:会社設立と個人事業主はどっちが得?法人と個人事業主の違いをわかりやすく解説
インボイスが与える影響が分かる
2023年から始まったインボイス制度は、飲食店にとっても無関係ではありません。特に、業務用の食材や備品を仕入れる際、仕入先がインボイス(適格請求書)発行事業者でなければ、消費税の仕入税額控除が適用できません。あなたが消費税の課税事業者となる場合、インボイス未対応の仕入先を利用すると消費税の負担が増えるリスクがあります。
逆に、あなたが免税事業者で事業者の顧客の割合が大きい場合、適格請求書発行事業者登録(いわゆるインボイス登録)の検討が必要です。税理士に相談することで、適切に対応・申告できます。
関連記事:インボイス制度後の個人からの仕入れはどうなる?消費税に与える影響と対策を解説
開業時から節税を意識した経営ができる
無理なく効果的な節税を実現できるのもメリットです。例えば、個人事業主か法人か、どちらの形態で開業するかによって税金の計算方法や適用される税率が大きく異なります。税理士に相談すると、事業規模や将来の展望を考慮し、最適な事業形態の選択が可能です。
また、減価償却資産の購入時期の調整、青色申告制度の最大限の活用方法、適切な経費計上の範囲など、開業初期から節税につながる具体的なアドバイスが受けられます。無駄な税負担を避け、手元に残る資金を増やせるため、事業の安定的な成長基盤を築けるでしょう。
開業後も継続的なサポートが受けられる
お店の経営が本格化する開業後こそ、税理士の存在は真価を発揮します。顧問契約を結ぶと、毎月の帳簿チェック、年度末の決算申告対応、税務調査への対応など継続的なサポートを受けられます。
特に、日々の売上管理や資金繰りの状況をリアルタイムで把握し、経営改善に役立つ具体的な提案を受けられる点は大きな強みです。長期的な視点で適切な経営判断が可能となり、事業の成長を後押ししてくれるでしょう。
関連記事:京都で顧問税理士をお探しの方は石黒健太税理士事務所へお気軽にご相談ください
飲食店開業の悩みは京都の石黒健太税理士事務所へご相談下さい!
飲食店開業という大きな夢の実現には、丁寧な準備が大切です。許認可手続きから資金調達、開業後のキャッシュフロー管理、専門知識が求められる税務手続きまで、やることが山積みです。「何から手をつけていいか分からない」「手続きをミスなく進めたい」といった不安を感じたときこそ、税理士に相談しましょう。
石黒健太税理士事務所は、京都の事業者様の開業を数多くサポートしてきた豊富な実績があります。京都市ならではの複雑な許認可手続きや、補助金・融資制度に関する最新情報にも精通しています。
開業後も、記帳などの事務作業の手間を減らすだけでなく、あなたが事業の状態を正しく把握できるように継続的にサポートします。事業を成功に導くパートナーとして、ぜひ私たちをご指名ください。
電話、LINE、Chatwork、メールでのお問い合わせを受け付けています。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
京都で飲食店を開業する夢の実現には、綿密な準備と計画が欠かせません。コンセプト決定から物件探し、資金調達、各種許認可の取得まで、手続きは多岐にわたります。開業後も、お店を営業しながら事務作業をしたり経営のことを考えたりする必要があり、ひとりで抱えるには重荷に感じることもあるでしょう。困ったときは、専門家である税理士のサポートが強力な味方となります。
石黒健太税理士事務所は、京都で飲食店の開業をお考えの方の開業手続きから開業後の経営までを一貫してサポートいたします。安心して開業準備を進めるためにも、ぜひ一度ご相談ください。