副業サラリーマンが一人で会社を作るメリット
副業をしているサラリーマンは、個人事業主(フリーランス)でいるよりも一人で会社を作った方が税金対策などのメリットが大きい場合もあります。ここでは、副業で一人社長になるメリットを5つ紹介します。
税金対策が期待できる
個人の所得に課税される所得税は、所得が多いほど税率が高くなる仕組みで最高45%の税率です。本業の給与所得に事業所得が上乗せされると、税負担が重く感じられる可能性があります。
一方、普通法人の法人税は最高23.2%の税率です。一定以上の所得が見込まれる場合は、個人で所得税や住民税を支払うよりも、会社の法人税と個人の所得税で分散させたほうが税負担が抑えられるケースがあります。また、経費として計上できる範囲も法人の方が広く、家賃や通信費、出張費などを法人経費とすることで、節税効果を高めることが可能です。
実際には所得税と法人税の金額だけではなく、ランニングコストなども含めて節税効果があるかをシミュレーションする必要があります。以下の記事で、法人化した方がよいケース・しない方がよいケースを解説しています。
関連記事:個人事業主と法人化はどっちが得?シミュレーション結果を解説
モチベーションアップに繋がる
副業でしっかり稼ぎたい、自分のビジネスを成長させたいと考えている場合は、会社を作ることがモチベーションアップにつながるでしょう。フリーランスでは事業拡大のイメージがわかなくても、会社を設立したという事実によって、ビジネスを本格的に成長させる意識を高めやすくなります。
また、法人化によって対外的な信頼度が向上するのも事実です。より大きな仕事を受注する機会が増えたり、資金調達の道が開けたりすることで、意欲的にビジネスに取り組めるようになるでしょう。
本業が忙しくない時期を決算期にできる
個人事業の事業年度は毎年1月1日から12月31日と決まっていて、12月が決算月です。本業が忙しい時期に決算と確定申告をしなければならないと、副業の運営もままならなくなってしまいます。
法人の場合は決算期を自由に設定できるため、本業の繁忙期を割けて決算処理を行うことで効率的に事業を運営しやすくなります。たとえば、5月決算の場合は申告期限が2ヵ月後の7月31日までなので、5月から7月に比較的時間をとりやすい方におすすめです。本業の繁忙期はもちろん、税理士に依頼する場合は他社の決算期が集中する時期を避けると、節税の相談などもしやすく決算処理がスムーズに進みます。
個人事業は自分で決算や確定申告を行う人も少なくありませんが、会社の場合は税制が複雑なため、専門家に任せた方が安心です。会社の決算を自分でやりたいと考えている方は、以下の記事もご参照ください。
関連記事:合同会社の決算は自分でできる?自分でするデメリットとスムーズにするやり方
有限責任になる
個人事業主の場合、事業で発生した負債について個人がすべて責任を負いますが、法人は有限責任です。会社の財務状況が悪化しても、基本的には出資の範囲内で責任を負い、社長個人の財産は守られるでしょう。
将来的に規模が拡大し、取引額が大きくなる可能性がある場合、個人事業のままで万が一事業に失敗すると、家や車などの個人の財産を手放さなければならないリスクがあります。リスク管理の観点から法人化を検討するのも有効です。
事業承継がシンプルになる
個人事業主は事業承継が法人に比べて大変です。手続きとしては、これまでの事業主が廃業し、新たな事業主が開業することになります。契約はすべて事業主個人との契約、設備や器具備品も事業主個人の持ち物なので、新しい事業主が取引先などと契約を締結し直したり、財産を譲渡したりする手間がかかります。
法人であれば、株式の譲渡などにより比較的スムーズに事業承継が可能です。会社の経営者やオーナーが交代しても、法人としての実体は変わらないので、資産や取引関係の手続きは必要ありません。家族経営や後継者への事業承継を考えている場合、法人化することで次世代への引き継ぎがしやすくなります。
自分の事業が法人化した方がよいのか迷う場合は、一人で悩まずに専門家に相談することをお勧めします。石黒健太税理士事務所では、あなたに適した法人化のタイミングや方法について専門的なアドバイスをいたします。節税のシミュレーションや、将来の事業承継など、疑問や不安に感じることはお気軽にご相談ください。
副業サラリーマンが一人で会社を作るデメリット
会社を作るのはメリットばかりではありません。以下に挙げるデメリットも考慮した上で、あなたにとって会社設立が適しているのかを検討することが重要です。
社会保険の負担が増えるかもしれない
サラリーマンの場合、本業の会社で社会保険に加入している場合がほとんどです。しかし、会社を設立して自分の会社から役員報酬を受け取る場合、自分の会社でも社会保険に加入する必要があります。2箇所の事業所で社会保険の加入要件を満たす場合は、両方の会社で社会保険に加入し、社会保険料も2箇所それぞれの給与・報酬から控除されます。
法人化により社会保険料の負担が増える可能性があるため、事前に確認しましょう。社会保険料は会社と本人が折半して支払うため、自社で支払う分については会社負担分も含めたシミュレーションが必要です。
設立費用がかかる
会社は設立する際に設立登記の登録免許税や資本金などの初期費用が発生します。金額の目安は、株式会社では最低20万円、合同会社では最低6万円程度です。資本金は少額でも設立できますが、あまりにも少なすぎると会社の信用を損なうリスクがあるため、適切な金額設定が求められます。
個人事業と比べて設立後のランニングコストもかかることから、綿密な事業計画を立てて必要な資金をあらかじめ用意しておくことが重要です。株式会社と合同会社それぞれの設立費用については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:株式会社の設立費用の目安と内訳は?資本金1円でも節約にならない理由と節約する方法を解説
関連記事:自分で合同会社を設立するときの費用の目安と内訳は?設立後にかかるランニングコストと注意点
勤務先にバレるリスクがある
会社を設立すると勤務先に副業がバレる可能性があります。本業の会社で副業が禁止されている場合は要注意です。
先述のとおり、自社で役員報酬を支払うと、社会保険への加入が必須となります。2箇所の事業所で社会保険料を按分するため、本業の勤務先に「二以上事業所勤務被保険者標準報酬決定通知書」が届き、勤務先の労務担当者に副業が知られる可能性が高いでしょう。
商業登記簿謄本を取得すれば誰でも会社の代表者などの情報を知ることができます。また、法人番号公表サイトでは商号や住所を簡単に調べることが可能です。社名が知られてしまえば、登記簿や法人番号公表サイトから副業がバレるリスクもないとは言えません。
ランニングコストが増える
会社を設立すると、設立費用だけでなく運営にかかるコストも増加します。法人は赤字でも最低7万円程度の法人住民税の均等割を納める必要があります。
また、決算や申告が個人事業よりも複雑なため、税理士に依頼する費用はほぼ必須でしょう。顧問税理士の費用は、毎月の顧問料や決算料などを含めると年間数十万円になるケースも珍しくなく、固定費として見積もる必要があります。
法人化してから後悔しても、簡単に個人事業に戻すことはできません。以下の記事では、法人化を後悔するケースや対策を紹介しています。法人化を検討する際は、下調べや準備をしっかり行いましょう。
関連記事:法人化に後悔する5つのケースとは?法人化が後悔する人の特徴と対策
会社が赤字でも給与所得と相殺できない
個人事業主の場合、事業所得が赤字になれば給与所得と相殺できます。そのため、事業が赤字の副業サラリーマンは、給与所得だけの場合よりも課税される所得が少なく計算され、所得税や住民税の負担が軽くなります。
しかし、法人化した場合、会社の赤字を個人の給与所得と相殺することはできません。これは、会社と個人は別人格だからです。会社が赤字の場合は法人税などは課税されませんが、法人住民税の均等割は発生します。個人としても、本業の給与所得分の所得税や住民税が発生するため、税負担が増えるケースがあります。
節税対策として会社を作る場合、会社設立前に収支のシミュレーションを行い、法人化するメリットが本当にあるのか慎重に判断することが重要です。より正確なシミュレーションを行うには、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
石黒健太税理士事務所では、個人事業と法人設立した場合の税金やランニングコストのシミュレーションを行い、あなたに適した事業形態のご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
会社員しながら社長になることはできる?
結論から言えば、会社員として働きながら社長になることは十分可能です。近年は副業を推奨する企業も増えており、会社に勤めながら副業として法人を経営する人も珍しくありません。ただし、本業の会社で副業が禁止されている場合は、万が一副業がバレると不利益を被るリスクもあるため、慎重な判断が必要でしょう。
会社員と社長を両立するには、煩雑な事務手続きはなるべくアウトソーシングするのがおすすめです。たとえば、日々の記帳や決算処理、税務申告などを税理士にすべて依頼する方法があります。会社設立の際だけでなく、経営のパートナーとして専門家を上手に活用すると事業が運営しやすくなります。
会社員しながら社長になるときの注意点
会社員として働きながら社長になる際は、事業を継続するための地盤固めが重要です。ここでは、スムーズに会社を設立し、経営を安定させるための注意点について解説します。
家族や周囲の理解を得る
会社を設立することで、仕事とプライベートのバランスがこれまでとは変わります。会社経営には時間やエネルギーを多く使うため、家族との時間が減少する可能性があります。
また、会社員を続けながらの副業とはいえ、会社設立にはまとまった資金が必要です。家族は経済的な不安を感じるかもしれません。そのため、事前に家族としっかり話し合い、理解を得ておくことが大切です。
本業との両立を意識する
副業として会社を立ち上げる場合、本業との両立の工夫が求められます。会社員としての責任を果たしながら、社長としての役割を果たすためには、効率的な時間管理が不可欠です。自分の会社の業務が忙しい時期や決算期などに本業に支障をきたさないように、あらかじめスケジュールを調整するとよいでしょう。
上手く両立するためには、本業と副業の双方でパフォーマンスを落とさないよう、業務量のバランスや生活スタイルなどの自己管理が大切です。
会社を作る目的を明確にする
なぜ個人事業ではなく会社を作るのか、どのようなビジネスを展開するのか、目的をしっかりと定めておきましょう。将来の見通しが立たないまま会社を作ってしまうと、設立後に後悔することになりかねません。
たとえば「事業を拡大して、3年後には独立したい」といった目標をもとにロードマップを描き、本当に会社を作る意義があるのかを確認しましょう。事業計画を立てておけば、事業の方向性やマーケティング戦略、資金調達などに一貫性が生まれ、目標に向かってブレずに事業を運営しやすくなります。
税金や社会保険の手続きを忘れない
法人設立に伴う税金や社会保険の手続きを怠ると、後々トラブルになるおそれがあります。特に毎年の税務申告は、期限に間に合うだけではなく、内容が正確であることが重要です。
後から税務署からの指摘を受けて修正した場合、ペナルティとして本来よりも多くの税金を納めなければならない場合があります。手続きは複雑で専門知識が必要な場合も多いため、税理士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。
専門家に相談する
会社を作ろうと思っても、準備やシミュレーションには専門知識が必要な場面が多く、自分で調べても解決できないことも少なくありません。そんな時は、自分一人で抱え込まずに専門家に相談するのが事業成功の近道です。
石黒健太税理士事務所では、会社設立に関する税務や経営の幅広いサポートを行っています。電話での相談もできますので、小さなことでもお気軽にご相談ください。
税理士の役目は税務申告だけではありません。経営や節税について気軽に相談できる税理士は、あなたのビジネスの強い味方となるでしょう。税理士の選び方で迷ったら、以下の記事も参照してください。
関連記事:企業の成長が加速する税理士の選び方は?依頼する目的から選ぶ税理士の選び方とポイント
サラリーマンがスムーズに会社を設立する方法
サラリーマンが本業と並行して会社を設立する場合、綿密な計画を立てて段階的に進めることが大切です。ここでは、会社設立を無理なく進めるためのアクションプランを紹介します。
ステップ1:会社設立までのスケジュールを具体的にする
まずは会社設立までのスケジュールをしっかりと組むことが重要です。会社設立には事前準備や手続きが多く、時間を確保して効率よく進めなければなりません。会社設立のタイミングによっては繁忙期と重なり、仕事に影響する恐れがあります。
スムーズに進めるためには、ここで紹介するステップごとに大まかなスケジュールを設定しましょう。司法書士や税理士などの専門家に手続きを依頼する場合も、事前に打ち合わせを行い、いつどのような手続きを行うのかを把握しておきましょう。
ステップ2:会社形態を選び事前準備をする
会社設立をする際、最初に決めなければならないのは会社形態です。一般的には、株式会社、合同会社(LLC)が選択肢となります。
株式会社は対外的に信頼を得られるため、資金調達や大口の取引がしやすい傾向があります。合同会社は設立コストが低く、柔軟な運営がしやすいのがメリットです。準備できる資金や事業のビジョンによって適した形態が異なります。以下の記事も参考に、自分の事業に合った会社形態を選びましょう。
関連記事:合同会社と株式会社の違いは?向いている会社形態と会社設立で失敗しないためのポイント
ステップ3:会社を設立する
会社設立までの手続きは以下のように進みます。登記申請をした当日に手続きが完了するのではなく、一般的には株式会社で3週間、合同会社で2週間程度の期間がかかります。
・会社概要の決定(商号・本店所在地・設立日・事業年度など)
・法人印作成
・定款作成
・定款認証(株式会社の場合)
・資本金の払い込み
・登記申請書類作成
・法人設立登記申請
個人事業では屋号をもっていない人も少なくありません。会社設立で意外と悩む人が多いのが会社名(商号)です。以下の記事では、会社名の決め方や使えない文字などのルールを紹介しています。会社名で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
関連記事:縁起がいい会社名・成功しやすい会社名の決め方は?注意すべき基本ルールと決まらないときの対策
ステップ4:資産等を移行する
個人事業主から法人成りする場合、事業資産を法人に移転することがあります。取引先との契約を締結しなおすケースもあるため、事前に手続きが必要な資産や契約をリストアップしておきましょう。
法人化した後の事業運営を円滑にするためにも、取引先には事前・事後に丁寧に説明を行い、契約変更などの手続きに協力してもらいましょう。
ステップ5:税務署と社会保険関連の手続きをする
税務署に個人事業の廃業届出書と法人設立届出書を提出します。必要に応じて青色申告や源泉所得税、消費税の手続きも行います。社会保険に加入するため、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」と「被保険者資格取得届」をしましょう。これらの手続きが完了すれば、法人としての経営が本格的にスタートします。
会社設立のお悩みはお気軽にご相談を!
副業サラリーマンは個人事業ではなく一人で会社を作った方がメリットが大きい場合があります。一定の所得が得られていて、さらに事業を拡大していきたい場合は会社員をしながら社長になる道も選択肢のひとつです。
ただし、会社はいったん設立すると簡単にやめることができません。事業計画や資金計画を立て、自分に合った方法を検討することが大切です。
石黒健太税理士事務所では、会社設立の実績が豊富な税理士が、あなたの会社設立をサポートいたします。会社を作るか迷っている方や、法人化のタイミングに悩んでいる方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。