個人事業主が税金を高すぎると感じる理由
個人事業主が税金を高すぎると感じる理由は以下が挙げられます。
・サラリーマンに比べて支払う税金の種類が多いから
・支払う税金の総額がわかるから
会社員とは異なる税金の仕組みや支払い方法が、影響しているでしょう。ここでは、税金が高すぎると感じる理由について解説します。
サラリーマンに比べて支払う税金の種類が多いから
個人事業主が税金を高く感じる理由は、給与所得者であるサラリーマンと比較して、支払う税金の種類が多いからでしょう。個人事業主とサラリーマンの税金の種類の違いは以下です。
税金の種類 |
個人事業主 |
サラリーマン(給与所得者) |
所得税 |
◯ |
◯ |
住民税 |
◯ |
◯ |
事業税 |
△ |
× |
消費税 |
△ |
× |
個人事業主は、所得税や住民税はもちろんのこと、事業の状況によっては消費税や個人事業税も納付義務が生じます。特に、事業が軌道に乗って所得が増えると、税額や保険料額も大きくなるため、より一層「高すぎる」という感覚につながるでしょう。
支払う税金の総額がわかるから
個人事業主が税金を「高すぎる」と感じるもう一つの理由は、支払う税金の総額が明確に可視化される点にあります。
サラリーマンは毎月の給与から税金や社会保険料が天引きされるため、一度に大きな金額を支払う感覚はあまりありません。年末調整で多少の還付や徴収があったとしても、納税の大部分は月々の給与から少しずつ行われています。
しかし、個人事業主の場合、確定申告後に所得税の納付額が確定し、住民税や国民健康保険料の通知書が届きます。場合によっては、予定納税や消費税の納付も発生するなど、年間の税負担額が具体的な金額として知ることが可能です。
特に所得税や消費税は、まとまった金額を一括または分割で支払う必要があり、その金額の大きさに驚くことも珍しくありません。以下の記事では、個人事業主が税金貧乏になる理由について解説しています。
関連記事:個人事業主が税金貧乏になる理由は?対策とお金の残し方を解説
利益がでているのに生活できないのは税金が高いからだけではない
「決算書上は利益が出ているはずなのに、なぜか手元にお金がなくて生活が苦しい」と悩む方は珍しくありません。具体的には、以下が理由に挙げられます。
・事業で得た利益と手元に残るお金は異なる
・売掛金が回収できないと資金不足になる
・経費計上できない支出を理解していない
ここでは、利益がでているのに生活できない理由について解説します。
事業で得た利益と手元に残るお金は異なる
会計上の利益は、売上から経費を差し引いて計算されますが、実際の現金収支と一致しないケースが多いです。
たとえば、借入金の返済は、元本部分が経費にならないため、利益が出ていても返済額分の現金は手元からなくなります。また、高額な設備投資なども、減価償却費として少しずつしか経費になりませんが、購入時にはまとまった現金支出が必要です。
このように、会計上の利益はあくまで一定期間の経営成績を示す指標であり、実際に自由に使えるお金の増減とはズレが生じることが多いです。このズレを理解していないと、資金繰りに影響する恐れがあります。
売掛金が回収できないと資金不足になる
売掛金とは、商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない状態の債権のことを指します。会計上は売上が立った時点で収入として認識されますが、実際にその代金が入金されなければ手元の現金は増えません。
もし取引先からの入金が予定より大幅に遅れたり、倒産などで回収不能になったりすると、帳簿上は利益が出ていても、仕入れ代金や経費の支払い、自身の生活費などに充てる現金が不足する事態に陥ります。
特に、大口の取引先の回収が滞ると、その影響は甚大です。たとえば、ウェブサイト制作を受注し、納品して売上計上したものの、クライアントからの支払いが数ヶ月遅延した場合、その間の運転資金や生活費は他の資金で賄う必要が出てきます。
売掛金の管理と回収は、手元資金を確保し、安定した事業運営と生活を維持するために非常に重要です。売掛金の回収が滞ると、利益とは裏腹に資金不足に陥る大きな原因となり、最悪の場合、黒字倒産となる恐れがあります。
以下の記事では、黒字倒産について詳しく解説しています。
関連記事:黒字倒産はなぜ起こる?9つの理由と人手不足倒産になる会社の特徴と前兆
経費計上できない支出を理解していない
見落としがちなのが、支払いをしているけど経費として計上できない支出の存在です。具体的には以下が挙げられます。
・所得税
・住民税
・借入金の返済(元本)
これらは事業運営上必要な支払いではありますが、経費にはなりません。売上から経費を引いた利益の中から支払う必要があるのです。また、事業主自身の生活費も経費にはなりません。
利益が出ていると安心していても、これらの経費にならない支出を差し引くと、実際に自由に使えるお金は予想以上に少なくなるでしょう。
たとえば、年間利益が500万円あっても、そこから所得税や住民税、社会保険料で150万円、借入金の元本返済で50万円、生活費で250万円かかるとすれば、手元に残るお金は50万円となります。経費にならない支出を正確に把握し、資金計画を立てることが重要です。
石黒健太税理士事務所では、税金だけでなく資金調達から経営成長戦略まで全力でサポートさせていただきます。お客様の経営目標に合わせた財務戦略の提案も可能なため、まずはお気軽にお問い合わせください。
個人事業主にできる税金対策の方法
税金の負担を少しでも軽くするためには、利用できる制度を積極的に活用することが重要です。具体的には、以下の対策があります。
・青色申告を利用する
・配偶者や親族に給与を支給する
・小規模企業共済に加入する
・ふるさと納税を活用する
・簡易課税制度を検討する
・法人成りを検討する
・税理士に相談する
ここでは、個人事業主が検討すべき代表的な税金対策をご紹介します。
青色申告を利用する
個人事業主にとって基本的で効果的な節税策の一つは、青色申告制度の活用です。白色申告に比べて複式簿記による帳簿付けなどの手間は増えますが、それに見合う大きなメリットがあります。
たとえば青色申告特別控除です。正規の簿記の原則に従って記帳し、電子申告を行うなどの要件を満たせば、最高65万円の控除が可能です。課税対象となる所得を直接減らせるため、所得税や住民税の節税につながります。
所得税率が20%の方なら、65万円の控除で所得税と住民税合わせて、約19.5万円の節税効果が期待できます。
他にも、赤字を翌年以降3年間繰り越せる繰越損失や、家族への給与を経費にできる青色専従者給与などです。手間を惜しまず青色申告を選択することは、着実な節税への第一歩と言えるでしょう。税務署への事前の届出が必要なので、開業時や早めのタイミングでの検討をおすすめします。
参考:国税庁「青色申告制度」
配偶者や親族に給与を支給する
配偶者や親族に給与を支給すると、世帯全体の所得が分散され、結果的に所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。生計を一にする配偶者や親族に対する給与は、原則として経費計上できません。
しかし、一定の要件を満たせば、青色申告者は青色事業専従者給与、白色申告者は事業専従者控除額を活用することで経費計上が可能です。ただし、控除対象配偶者や扶養親族にはなれないため注意しましょう。
以下の記事では、専従者とパートの違いについて解説しています。
関連記事:専従者とパートはどっちが得?手取りのシミュレーションを解説
参考:国税庁「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の役員などが、将来の退職金や廃業後の生活資金を準備するための制度です。最大のメリットは、掛け金が全額所得控除の対象となる点です。
たとえば、所得税率が20%、住民税率が10%の方が、毎月7万円を掛けた場合、単純計算で年間約25.2万円もの税負担を軽減できる可能性があります。また、受け取る際にも、一括で受け取る場合は退職所得、分割で受け取る場合は公的年金等の雑所得の対象となり、税負担が軽減される仕組みです。
将来のための積立をしながら、同時に現在の税金も節約できます。
参考:中小企業庁「小規模企業共済制度について」
ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は応援したい自治体に寄付をすることで、実質2,000円の自己負担で返礼品が受け取れ、寄付額に応じて所得税や住民税の控除が受けられる制度です。厳密には節税ではありませんが、実質的な負担を抑えつつ返礼品を受け取ることができます。
控除額には所得に応じた上限があります。自身の控除上限額を事前にシミュレーションサイトなどで確認し、計画的に活用することが大切です。
簡易課税制度を検討する
消費税の納税義務がある個人事業主にとって、計算方法の選択は納税額に影響を与える可能性があります。消費税の計算方法には原則課税と簡易課税の2種類があり、条件を満たせば簡易課税制度を選択できます。
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であり、事前に届出書を提出している事業者が適用可能です。事務負担が大幅に軽減され、原則課税よりも納付する消費税額が少なくなるかもしれません。
どちらの制度が有利になるかは業種や経費の内容によって異なるため、税理士に相談することをおすすめします。有利な方を選択することで、消費税の負担を軽減できる可能性があります。
以下の記事では、簡易課税制度届出書の提出期限などについて解説しています。
関連記事:簡易課税制度選択届出書の提出期限はいつまで?出し忘れた場合の対策と簡易課税を選択する前の注意点
法人成りを検討する
個人事業の規模が大きくなり所得が増えてくると、法人成りを検討するのも有効な税金対策の1つです。個人事業主の所得税は累進課税で最高45%の税率ですが、法人の税率は原則として23.2%です。ある所得水準を超えると、法人の方がトータルの税負担が低くなる可能性があります。
ただし、法人設立には費用がかかり、税務申告が複雑になるなどのデメリットもあります。一概にどちらが良いとは言えず、事業の状況や将来計画に合わせて慎重に判断することが大切です。法人成りについては、以下の記事で詳しく確認できます。
関連記事:法人成りとは?手続きの流れと必要な準備・費用について解説
税理士に相談する
税金対策は色々ありますが、あなたにとって最適な方法を選ぶことが重要です。どの方法が自分にあっているか不安に感じる方は、税金の専門家である税理士に相談することをおすすめします。
個々の事業内容、売上規模、利益水準、家族構成などを総合的にヒアリングした上で、最適な節税策を提案してくれます。特に、税金だけでなく、将来の展望についても考えてくれる税理士に相談することが大切です。
石黒健太税理士事務所は、創業者の想いを理解し、専門的な知識と情熱を持ったサポートができます。電話でのお問合せも可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。
関連記事:企業の成長が加速する税理士の選び方は?依頼する目的から選ぶ税理士の選び方とポイント
個人事業主が税金対策として法人成りを考えるタイミング
個人事業主が法人成りを考える場合、いくつかのタイミングがあります。よくある法人成りのタイミングは以下です。
・課税所得が900万円を超えるとき
・2年前の課税売上高が1,000万円を超えるとき
・事業用の不動産を購入するとき
ここでは、個人事業主が税金対策として法人成りを考えるタイミングについて解説します。
ケース1:課税所得が900万円を超えるとき
課税所得が900万円を超えると所得税率は33%、さらに所得が増えると税率は上がり最高45%の税率となります。一方、法人税率は、資本金1億円以下の普通法人の場合、所得800万円以下の部分は15%、800万円超の部分は23.2%と、個人の最高税率に比べて低く設定されています。
課税所得が900万円を超えてくると、法人税率が適用される方が、税負担が少なくなる可能性が出てくるのです。社会保険料の負担なども考慮する必要があるため一概には言えませんが、課税所得900万円は法人化を検討するタイミングの一つの目安と言えます。
法人成りのシミュレーションについては、以下の記事で詳しく確認できます。
関連記事:個人事業主と法人化はどっちが得?シミュレーション結果を解説
ケース2:2年前の課税売上高が1,000万円を超えるとき
個人事業主の場合、原則として2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税を納める義務が生じます。しかし、法人成りを行うと、設立した法人は最大2年間は消費税の納税義務が免除されます。
これは、法人と個人は別人格として扱われ、設立当初の法人には基準期間となる過去の売上が存在しないためです。
消費税の負担は決して小さくないため、課税売上高が1,000万円を超えるタイミングが、法人化を検討するタイミングの一つの目安と言えます。ただし、インボイス制度の導入により、免税事業者でいることのメリット・デメリットも変化しているため、取引先との関係性なども含めて慎重な判断が必要です。
法人成りの消費税については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:法人成りすると消費税の免除がなくなる?免除期間を長くするポイントと個人事業主への影響
ケース3:事業用の不動産を購入するとき
事業で使用するための事務所や店舗、工場などの不動産の購入を検討している場合も、法人成りを考えるタイミングとなるでしょう。法人が購入するメリットは以下が挙げられます。
・個人事業主よりも有利な条件で融資を受けやすい
・家事按分などの手間が不要になる
・不動産を個人から法人へ変更する手続きが不要になる
将来的に事業承継や相続、法人成りを考えている場合、最初から法人で不動産を購入した方が良いケースがあります。不動産の予定がある方は、購入前に税理士などの専門家に相談し、個人での購入と法人での購入のどちらが有利かを比較検討することが大切です。
関連記事:選んではダメな税理士の特徴は?信頼できる税理士か見極めるポイントを解説
個人事業主が税金対策を税理士に相談するメリット
税金対策は複雑で、自己判断で行うとリスクも伴います。税理士に相談することで、効果的に税負担を軽減できる可能性が高まります。
自分にあった税金対策ができる
インターネットや書籍にはさまざまな節税に関する情報がありますが、必ずしもあなたにとって最善の方法とは限りません。数ある選択肢の中から、あなたにあう方法を選ぶことが重要です。
たとえば、所得が多い方には所得分散を意識した対策、設備投資を考えている方には税制優遇のある制度の活用など、状況に応じた対策が求められます。税理士に相談することで、あなたにあった税金対策の方法が分かるでしょう。
無駄な支出を減らせる
税金対策の中には、効果が少なく、売上につながらない無駄な支出を伴う方法があります。たとえば、交際費の増加です。交際費が増えれば所得が減り、税金も少なくなるでしょう。ただし、無駄な支出は税金以上に、資金が減る恐れがあるため注意が必要です。
所得100万円の方が交際費を100万円使えば、税金は減るでしょう。しかし、100万円の支出が必要です。交際費100万円がなければ、支出は所得100万円に対する税金の支払いにおさまります。結果として、必要ない交際費を使ったことで資金が減ります。
税理士に相談すれば、効果が少ない税金対策がわかり、無駄な支出を減らすことが可能です。以下の記事では、資金繰りが厳しい会社の特徴について解説しています。
関連記事:資金繰りが厳しい会社の特徴は?さらに悪化する原因と資金繰りに苦しい会社を改善する方法
税務調査のリスクを減らすことができる
間違った税金対策は、申告誤りによる追徴課税や加算税、延滞税といったペナルティのリスクが高まります。
税理士は税法の専門家であり、適正な会計処理と税務申告を行うための知識と経験を持っています。日頃から税理士の指導のもとで適切な帳簿書類を作成・保存していれば、万が一税務調査の対象となった場合でも、慌てることなくスムーズな対応が可能です。
調査当日の立ち会いも税理士に依頼でき、専門的な質疑応答や税務署との折衝を任せられるため、精神的な負担が大幅に軽減されるでしょう。税理士は、税務署がどのような点をチェックするかを熟知しているため、事前に問題となりそうな点を指摘し、改善を促してくれます。
税金対策の効果が事前に分かる
税理士に相談すれば、税金対策を実行した場合の具体的なシミュレーションを行ってもらえます。
・青色申告特別控除65万円を利用した場合、所得税・住民税はいくら安くなるか
・小規模企業共済に月々いくら掛けると、年間の節税額はどれくらいか
・法人成りした場合と個人事業主のままの場合で、5年間のトータル税負担はどう変わるか
あなたの実際の所得状況に基づいたシミュレーションが可能です。各対策のメリットやデメリット、費用対効果が客観的に比較でき、納得した上で最適な選択をすることができます。
感覚的な判断ではなく、具体的な数字に基づいた意思決定ができるため、実行後に「思っていたほど効果がなかった」といった失敗を防ぐことができます。事前に効果を把握できることで、安心して税金対策に取り組むことができるでしょう。
法人成りのタイミングが分かる
個人事業主にとって、法人成りは大きな決断です。税負担や社会保険、事務手続きなどを考慮して検討する必要があります。
法人成りのタイミングは人によって異なります。状況によっては法人成りではなく、個人事業主を継続する方が有利となるかもしれません。不安を感じながら、法人成りすると、後悔する恐れがあるため注意しましょう。
税理士に相談することで、感情や憶測に流されることなく、データに基づいた冷静な判断が可能となり、最適なタイミングでの法人成りを実現できます。法人成りを検討する場合、まずは税理士に相談することをおすすめします。
関連記事:税理士は無料相談でどこまで対応してくれる?電話相談はおすすめできない理由と有意義にするポイント
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