黒字倒産はなぜ起こる?9つの理由
黒字倒産は、会社の業績が良いにも関わらず、資金繰りが悪化することで起こります。具体的には以下が考えられます。
・取引先の倒産で多額の売掛金が回収不能になる
・過剰な在庫を抱えている
・会社の資金が経営者に流れている
・粉飾決算をしている
・主要な取引先との関係が悪化する
・新規事業に失敗する
・市場環境が急激に変化する
・人手不足が解消されない
・後継者が不足している
ここでは、黒字倒産が起こる理由について解説していきます。
取引先の倒産で多額の売掛金が回収不能になる
黒字倒産が起こる原因の一つに、取引先の倒産が挙げられます。
会社は、商品やサービスを販売した際に、代金をすぐに受け取れない場合があります。たとえば、後払いの請求書を発行し、後日まとめて支払いを受けるケースなどです。これを一般的に「売掛金」と言います。
もし、その取引先が倒産してしまうと、売掛金は回収できなくなってしまいます。帳簿上は黒字でも、実際には手元にお金がない状態に陥り、数千万円など多額の売掛金であれば資金繰りが困難になるでしょう。最悪の場合、黒字倒産に追い込まれてしまうケースは珍しくありません。
取引先の倒産は、自社の経営を大きく揺るがす可能性があります。取引先の経営状態をよく把握し、リスクを分散することが大切です。
過剰な在庫を抱えている
商品をたくさん仕入れると、その分の仕入れ代金が発生します。しかし、商品が売れ残ってしまうと、在庫を抱えることになり、購入した商品を現金化できません。
この状態が続くと、新しい商品を仕入れる資金や、従業員の給料を支払う資金などが不足し、黒字倒産に陥る可能性があります。
在庫を抱えている間も、倉庫の保管料や人件費などの費用は発生し続けます。過剰な在庫を抱えないためには、適切な在庫管理と、需要予測に基づいた計画が大切です。
会社の資金が経営者に流れている
黒字倒産は、会社の資金が適切に管理されていない場合にも起こります。特に、経営者が会社の資金を私的に流用してしまうケースは危険です。
会社の資金が減れば、事業に必要な資金が不足し、資金繰りが悪化します。その結果、黒字であっても倒産してしまうことがあります。
会社の資金は、事業のために使うべきものです。経営者は、会社の資金と個人の財産を明確に分けて管理し、私的流用は避けなければなりません。
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粉飾決算をしている
粉飾決算とは、実際よりも会社の業績を良く見せかけるために、不正な会計処理を行うことです。粉飾決算を行うと、一見、会社は黒字経営をしているように見えます。
しかし、実際には業績が悪化しており、資金繰りが苦しい状態である可能性があります。このような状態で銀行から融資を受けたり、取引先との取引を継続したりしていると、いずれ資金繰りが行き詰まるかもしれません。
たとえば、ある企業が実際には赤字なのに、粉飾決算によって黒字に見せかけていたとします。銀行から多額の融資を受けることに成功し、事業を継続していても、実際には業績は改善しておらず借入金の返済が滞ると、最終的に倒産するでしょう。
粉飾決算は、会社の信用を失墜させるだけでなく、法的にも重い責任を問われます。誠実な会計処理を行い、健全な経営を心がけることが大切です。
主要な取引先との関係が悪化する
主要な取引先との取引が停止してしまうと、売上が大幅に減少し、資金繰りが悪化してしまう可能性があります。
主要な取引先との良好な関係を維持することは、安定した経営を続ける上で非常に重要です。日頃からコミュニケーションを密に取り、信頼関係を築くように努めましょう。
新規事業に失敗する
新規事業に多額の投資をしたものの、それが失敗に終わってしまうと、黒字倒産のリスクが高まります。
新しいビジネスを始めるには、どうしても多くのお金が必要になります。オフィスを借りたり、人を雇ったり、設備投資をしたりと、何かとお金がかかるでしょう。
たとえば、最新の技術を導入した工場を建設したものの、思ったように機能せず、製品が全く売れなかったとします。この場合、工場の建設費用や人件費などの支出が収入を大きく上回り、資金繰りが悪化してしまいます。
たとえ本業で利益が出ていても、新規事業の失敗による損失が大きすぎると、会社はその損失を埋めきれずに倒産してしまうかもしれません。新規事業に挑戦するときは、慎重に検討しましょう。
市場環境が急激に変化する
これまで順調に業績を伸ばしていた企業でも、市場環境の急激な変化に対応できず、黒字倒産に陥るケースがあります。消費者の好みが変わったり、新しい技術が登場したり、競合が増えたりと、企業を取り巻く環境は常に変化しています。
たとえば、長年フィルムカメラを製造・販売してきた会社があるとします。デジタルカメラの登場でフィルムカメラの需要が激減した場合、この会社にとっては大きな打撃です。
過去の利益を蓄えていても、時代の変化に対応できなければ、業績は悪化し、資金繰りが苦しくなってしまいます。黒字になっていても、市場の変化に対応することは重要です。
人手不足が解消されない
人手不足が深刻化すると、人件費の高騰や業務効率の低下を招き、黒字倒産のリスクを高めます。企業にとって、人材は最も重要な資産の一つです。しかし、近年では少子高齢化の影響で、多くの企業が人手不足に悩まされています。
たとえば、運送会社の場合、ドライバー不足が深刻化すると、顧客からの依頼を断らざるを得なくなり売上減少に繋がります。また、人材確保のために賃金を上げると、人件費が膨らみ利益を圧迫してしまいます。
人手不足は、企業の収益力や成長性を大きく左右する重要な問題と言えるでしょう。人手不足による黒字倒産について詳しくは後述します。
後継者が不足している
中小企業の経営者の多くが高齢化しており、後継者不足が深刻な問題となっています。後継者がいない場合、事業を継続することが難しくなり、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
例えば、地域で長年愛されてきた老舗の和菓子屋があるとします。店主が高齢になり、後継者が見つからない場合、その店は閉店せざるを得なくなるでしょう。
たとえ黒字経営を続けていても、後継者不足によって事業が継続できなければ、黒字倒産と同じような結果になってしまうのです。後継者不足が懸念される場合は、親族内承継や親族外承継などを検討しましょう。
「自分の会社は大丈夫だろうか」「資金繰りが苦しくなってきた」などの悩みは、資金調達サポートをしている石黒健太税理士事務所にご相談ください。電話でのお問い合わせもできます。
人手不足による黒字倒産の事例が増えている
近年、業績は好調なのに、人手不足が原因で倒産してしまう「黒字倒産」が増加傾向です。東京商工リサーチによると、2024年7月の「人手不足」関連倒産は32件となり、5カ月連続で前年同月を上回っています。
人手不足による黒字倒産は一見矛盾しているように思えるかもしれませんが、深刻な社会問題となっています。人材不足は、企業の成長を阻害するだけでなく、事業継続を脅かす大きなリスク要因となっているのです。
黒字倒産は、特に人材確保が難しい業種で起こりやすい傾向があります。例えば、建設業や運輸業、介護業界などは慢性的な人手不足に悩まされており、黒字倒産のリスクが高い業種と言えるでしょう。
人手不足による黒字倒産は、多くの企業にとって深刻な問題です。人材不足を解消するためには、従業員の待遇改善や労働環境の改善、人材育成など、様々な対策を講じる必要があります。企業は、人材を「コスト」ではなく「資産」と捉え、人材への投資を積極的に行うことが重要です。
人手不足倒産になる会社の特徴と前兆
人手不足倒産になる会社の特徴と前兆は以下が挙げられます。
・労働環境が悪い
・従業員の離職率が高い
・求人を出しても応募者が集まらない
・既存従業員の負担が増える
・業務が効率化されない
ここでは、人手不足倒産になる会社の特徴と前兆について解説します。
労働環境が悪い
人手不足倒産に陥る会社の特徴として、まず挙げられるのが労働環境の悪さです。従業員にとって魅力的でない職場環境では、人が定着せず、慢性的な人手不足に陥る傾向です。
長時間労働や休日出勤が常態化している、賃金が低い、パワハラやセクハラが横行しているなど、劣悪な労働環境は従業員のモチベーションを著しく低下させます。その結果、従業員はより良い労働条件を求めて転職してしまうため、人材の流出が止まらなくなってしまいます。
たとえば、残業代が支払われず、サービス残業が当たり前になっている会社では、従業員は不満を抱えながら働いている可能性が高いでしょう。そのような状況では、従業員は長く働き続けることを望まず、離職率が高くなってしまうのも当然です。
労働環境の悪さは人材の定着を阻害し、人手不足倒産のリスクを高める大きな要因となります。従業員が定着しない場合は、労働環境を見直し改善することが重要です。
従業員の離職率が高い
優秀な人材が次々と会社を去っていく状況では、業務が回らなくなり、事業の継続が困難になります。離職率が高い背景には、前述したような労働環境の問題や、従業員の成長を促すための教育体制が整っていない、評価制度が不透明といった様々な要因が考えられます。
たとえば、新入社員が入社しても適切な指導や研修が行われず、放置されているような状態では、新入社員はすぐに会社に失望し辞めてしまうかもしれません。また、頑張りが正当に評価されず、昇給や昇進の機会が限られていると感じれば、従業員はモチベーションを維持することが難しくなります。
従業員の離職率が高い会社は、人材の確保が困難になり、人手不足に陥りやすいと言えるでしょう。
求人を出しても応募者が集まらない
人手不足にもかかわらず、求人を出しても応募者が集まらないという状況は、すでに人手不足倒産の危機が迫っているサインかもしれません。魅力的な求人情報を出せていない、会社の知名度が低い、あるいは業界自体が不人気といった理由で、応募者が集まらないケースがあります。
たとえば、求人広告に記載されている仕事内容が曖昧で、実際には全く異なる業務を任されるような会社では、応募者は入社後にギャップを感じてしまい、すぐに辞めてしまう可能性があります。
また、会社のホームページやSNSアカウントなどが充実しておらず、会社の情報が不足している場合も、応募者は不安を感じて応募をためらってしまうでしょう。求人広告やホームページを見直し、働く人にとって魅力を感じる内容に改善するといいでしょう。
既存従業員の負担が増える
人手不足が深刻化すると、既存の従業員の負担が増加し、疲弊してしまうという悪循環に陥ります。一人当たりの仕事量が増え残業時間が増加することで、従業員の心身の健康を損なうだけでなく、離職率の増加にも繋がるでしょう。
たとえば、本来は3人で行うべき業務を、人手不足のために2人で行わなければならない状況が続けば、従業員は常に時間に追われ大きなストレスを抱えることになります。また、過重労働により、集中力の低下やミスが増加し業務の質が低下するかもしれません。
既存従業員の負担が増加し続けることは、従業員のモチベーション低下や離職を招き、さらなる人手不足を招くという負のスパイラルとなるでしょう。
業務が効率化されない
業務の効率化が進んでいない会社では、従業員は限られた時間で多くの業務をこなさなければならず、負担が増えます。
たとえば、未だに紙ベースでの書類作成や承認作業を行っている会社では、デジタル化による業務効率化が遅れており、従業員の時間を無駄にしている可能性があります。また、部署間での情報共有がスムーズに行われず、同じ作業を何度も繰り返しているようなケースも、非効率な業務プロセスと言えるでしょう。
人手不足倒産は、決して他人事ではありません。企業は人材の確保と育成、労働環境の改善、業務の効率化など、人手不足対策に積極的に取り組むことが大切です。
石黒健太税理士事務所では、会計・請求業務・経費精算・給与計算・勤怠管理などバックオフィス業務に関するクラウドシステムの導入を支援するサービスを実施しております。現状の業務フローを分析し、課題及び改善策の提案もできます。
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黒字倒産を回避するためのポイント
手元資金が不足すると、いくら利益が出ていても支払いができず事業が継続できなくなります。黒字倒産を回避するポイントは以下が考えられます。
・資金繰り表を作成し毎月の収入と支出を予測する
・キャッシュフローを改善する
・利益率の高い商品やサービスに注力する
・資金調達を検討する
・早めに専門家に相談する
それぞれの回避するポイントについて解説します。
資金繰り表を作成し毎月の収入と支出を予測する
黒字倒産を防ぐためには、資金繰り表を作成し、毎月の収入と支出を予測することが重要です。
会社の経営状態を把握するためには、お金の流れを可視化する必要があります。資金繰り表を作成することで、いつどのくらいのお金が入ってくるのか、いつどのくらいのお金が出ていくのかを把握できます。
たとえば、来月の入金が100万円、支出が150万円と予測される場合、50万円の資金不足となるでしょう。このような状況を事前に把握することで、資金不足に陥る前に対策を講じることができます。
具体的には、資金繰り表で資金不足が予測される月に、売掛金の回収を早める、支払いを遅らせる、あるいは借入を検討するなどです。資金繰り表を作成し毎月の収入と支出を予測することで、資金繰りの問題を早期に発見し、黒字倒産を回避することが可能です。
キャッシュフローを改善する
キャッシュフローとは、会社のお金の流れのことです。いくら利益が出ていても、実際にお金が入ってこなければ、会社は運営できません。キャッシュフローを改善するためには、お金の「入口」と「出口」を意識することが大切です。
「入口」である売掛金の回収を早めるためには、請求書の発行を迅速に行ったり、顧客に早期支払いを促したりすることが有効です。また「出口」である支払いを遅らせるためには、仕入先に支払期限の延長を交渉したり、クレジットカードを活用したりする方法があります。
たとえば、顧客への請求書発行を従来の月末から翌月10日に変更すると、入金までの期間を短縮しキャッシュフローを改善することにつながるでしょう。
利益率の高い商品やサービスに注力する
一般的な利益率とは、売上高に対する利益の割合を指します。利益率の高い商品やサービスに注力することで、少ない売上でも多くの利益を上げることができ、資金繰りが安定します。そのためには、現状でどの商品やサービスの利益率が高いかの分析が大切です。
たとえば、利益率の高い商品やサービスの販売促進に力を入れたり、逆に利益率の低い商品やサービスの販売を縮小したりすることが考えられます。
資金調達を検討する
事業を拡大したり、予期せぬ支出が発生したりした場合、手元の資金だけでは不足することがあります。資金が不足する場合、資金調達を行うことで資金不足を解消し、黒字倒産を回避できます。
資金調達には銀行からの借入、投資家からの出資、助成金や補助金の活用など様々です。たとえば、金融機関から融資を受けるのであれば、事業計画をきちんと立て、返済能力を示すための書類を整えることが重要になります。
また、補助金や助成金などを活用する選択肢もあります。補助金や助成金は返済義務がないぶん競争が激しいことも多く、申請には書類作成が必要ですが、適合する要件を満たしていれば大きな助けとなるでしょう。
資金調達だけでなく、外部資金を導入したあとにどのようにビジネスを成長させていくのかが大切になります。資金調達だけで満足せず、そのお金をもとにキャッシュフローを改善する取り組みを進めることで、黒字倒産への不安を大きく和らげることができます。
関連記事:法人の銀行融資の種類と特徴は?審査に通らない理由を解説
早めに専門家に相談する
経営の数字を管理する作業は、経営者ひとりの力だけでは限界があります。忙しい現場では、毎月の売上や支出の把握すら後回しになることも珍しくありません。
税理士や中小企業診断士などの専門家に早めに相談し、客観的な視点からアドバイスをもらうことが効果的です。自分では気がつかなかった支払条件の改善点や、資金調達先の選択肢などを提案してもらえる可能性があります。
業績は良好だったにもかかわらず、キャッシュフローの悪化を見逃していたために緊急の支払いに対応できず、黒字倒産寸前になるケースは珍しくありません。こうしたリスクを回避するうえでも、数字に強い第三者の目を入れることは効果的と言えます。
資金繰り表の作成方法や会計ソフトの使い方、金融機関との交渉ノウハウなど、専門知識を持つ人に相談することで、経営者は自分の強みに集中できます。
多忙な経営者ほど、第三者のサポートを活用しながら、会社の数字を早めに改善する習慣を身につけることが重要です。悩みを抱える前に行動を起こすことが、安定した経営のカギとなります。
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経営状態の悩みは気軽に相談を!
決算書では黒字になっていても、以下の理由で黒字倒産になる可能性があります。
・取引先の倒産で多額の売掛金が回収不能になる
・過剰な在庫を抱えている
・会社の資金が経営者に流れている
・粉飾決算をしている
・主要な取引先との関係が悪化する
・新規事業に失敗する
・市場環境が急激に変化する
・人手不足が解消されない
・後継者が不足している
黒字倒産は珍しくありませんが、資金繰り表の作成やキャッシュフローの改善、早めに専門家に相談することで回避できます。
しかし、専門家であれば、誰でもいいわけではありません。資金繰りや経営改善を得意としている専門家に相談することが大切です。
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