起業するにはまず何から始める?
起業したいと思ったら、最初にやるべきことは事業のビジョンを描くことです。なぜ起業するのか、何をビジネスにするのかなどを順序立てて整理し、できるだけ具体的な見通しを持ちましょう。ここでは、スムーズに事業を始めるための5つのステップをご紹介します。
ステップ1:起業する目的と理由を明確にする
あなたが起業する理由は何ですか?起業してどうなりたいですか?起業を成功させるための最初のステップは、起業する目的や理由をしっかり考えることです。
起業には時間と労力、そして資金が必要です。「サラリーマンとしての現在の仕事に不満があるから」という理由だけでは、起業後に壁にぶつかったときに事業を継続していくモチベーションを失ってしまう可能性があります。
一方、「自分の得意分野を活かしたい」「社会に新しい価値を提供したい」といった目的があれば、行動に一貫性が生まれ、起業後の方針がぶれにくくなります。目的を具体化するためには、「なぜそうしたいのか」を繰り返し自問自答して、自分の志向性を深掘りするのがおすすめです。
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ステップ2:何をビジネスにするかを決める
次に、自分の得意なことや興味がある分野を洗い出します。「エンジニアとしてのスキルを活かして独立したい」「長年の経験を活かしてコンサルティングをしたい」など、自分のスキルや知識を活用する方向性を探るとよいでしょう。
自分の得意分野が市場のニーズに合致しているかも確認が必要です。市場調査によってターゲットのニーズや競合他社の状況を把握し、自分が何を強みとして事業を展開していけるのかを見定めます。「誰に、どのような価値を提供するか」を具体的に言葉で表せる状態を目指しましょう。
自分のアイデアに自信が持てない場合や具体化が難しい場合は、家族や友人、専門家に相談することで新しい視点を得られることがあります。
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ステップ3:起業する方法を決める
起業する方法は大きく分けて「副業から始める」「個人事業主として開業する」「法人を設立する」の3つがあります。それぞれの方法のメリットとデメリットは後述するので、ここでは簡単に特徴を紹介します。
副業から始める場合、サラリーマンとしての安定した収入を維持しながら起業できます。起業後すぐに収益を上げるのが難しい場合や、ビジネスの市場性を確かめたい場合に効果的です。
個人事業主として開業する方法は、開業手続きが簡単で初期費用が抑えられる点が魅力です。法人を設立する方法は、手続きが複雑になり初期費用もかかる反面、個人事業主と比較して社会的信用度が高いというメリットがあります。
ステップ4:起業に必要な資金を調達する
事業に必要な資金を調達することは、起業の重要なステップです。事業の規模や業種によって必要な資金の額は異なります。しかし、どの事業であっても開業時に設備投資など大きな費用がかかったり、売上が伸びるまでの運転資金が必要になったりするため、自己資金だけではまかなえないケースは珍しくありません。
どれだけの資金が必要か、自己資金がいくらあり、いくら不足するのかを具体的に把握することが大切です。初期費用だけでなく運転資金も含めた見通しを持ち、経営が軌道に乗るまでに必要な資金を確保しましょう。
自己資金が限られている場合、金融機関からの融資や補助金・助成金を活用する方法があります。銀行融資を受けるには、審査の資料となる事業計画書や収支計画をしっかりと作成することが求められます。公的な助成金や補助金は業種や事業規模によって申請できるものが異なるので、情報収集が欠かせません。
ステップ5:起業後の手続きを完了させて事業を始める
起業したら税務署などへ届出の提出が必要です。事業開始から1ヶ月以内に管轄の税務署に開業届を提出しましょう。起業後、「青色申告承認申請書」を同時に提出することで、青色申告特別控除など税制面での優遇を受けることができます。
法人を設立する場合には、定款作成や登記など、さらに複雑な作業が必要となります。税理士や司法書士などに相談し、サポートを受けることでスムーズに手続きを進められます。
起業後の手続きを怠ると、後からペナルティや経営上の不利益を被るおそれがあります。どのような手続きが必要かを事前に確認し、漏れなく完了させて事業をスタートしましょう。事業に集中したい場合は、専門家に依頼することでミスを防ぎ、時間を有効活用することができます。
起業する3つの方法
前述したように、起業するには大きく3つの方法があります。副業として始める方法、個人事業主として起業する方法、株式会社などの法人を設立する方法です。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分に合った方法を選びましょう。
副業から始める
サラリーマンにおすすめしたいのが副業から始める方法です。副業の最大のメリットは、安定した収入を維持したまま事業を始められる点にあります。本業の収入があるため、事業の軌道に乗るまでの資金繰りに余裕が生まれます。また、市場の反応を見ながらビジネスモデルを改善していけるので、失敗のリスクが少ない点も魅力です。
一方、副業での起業の最も大きな課題は時間の確保です。本業と副業の二足の草鞋で労働時間が長くなり、心身に負担がかかる場合があります。また、時間的な制約があるため、一定以上のビジネスの拡大は難しいかもしれません。
会社の就業規則によっては、副業を制限している場合や申請が必要な場合があります。事前に勤務先に確認し、トラブルにならないよう注意しましょう。まずは副業として休みの日や夜間に少しずつ時間を取り、ある程度の収益が得られるようになった段階で本業を辞めて独立するケースも多いです。
個人事業主で始める
サラリーマンをきっぱり辞めて、個人事業主として起業する方法もあります。会社を立ち上げる場合と比較すると、手続きが簡単で初期費用も少なく済むので、まず個人事業主として起業する人も少なくありません。開業届を管轄の税務署に提出するだけで事業を開始できるため、起業を決めたらスピーディーに進められます。
また、事業で得た収入は事業主個人の収入となるため、税務処理が比較的簡単です。青色申告を利用すれば、最大65万円の控除などの節税効果を得られるため、初期段階で大きな利益が見込めない場合や、小規模なビジネスを始める場合には適した方法と言えます。
一方で、個人事業主は社会的な信用度が法人に比べて低いため、大口取引先や金融機関との契約が難しい場合があります。また、事業が拡大し利益が増えると、法人よりも税負担が重くなる場合もあるため注意が必要です。
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法人を設立する
法人は個人事業主と比べて社会的信用度が高いため、大口の契約や融資が受けやすく、事業を拡大する際に有利と言えます。
法人の場合、事業が失敗しても個人資産が守られる「有限責任」という仕組みが適用されるため、リスクを限定できる点も大きなメリットです。また、一定以上の収益が見込める場合には、個人事業主として所得税と住民税を支払うよりも税務面で有利になる可能性があります。
ただし、定款作成や登記など法人設立の際の手続きが煩雑で、法人の種類によってまとまった金額の初期費用がかかります。税務申告も個人事業主と比べると複雑で、自分で行うのは困難です。赤字であっても最低限の法人住民税の均等割を支払う必要があり、事業が軌道に乗るまでの負担が大きい点にも注意が必要です。
事業規模や目指す方向性によって、適した起業の方法は異なります。自分に最適な方法がわからない場合は、専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。石黒健太税理士事務所では、起業に関する相談を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。
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起業に成功する人の特徴
起業に成功する人には共通する特徴があります。困難を乗り越え、事業を成長させるための5つの素質を紹介しますが、すべてを兼ね備えていなければ起業できないわけではありません。起業に向いているマインドとして参考にしてください。
変化に柔軟に対応できる人
ビジネス環境は常に変化します。経営者は、技術革新や市場の動向、消費者のニーズなど、外部環境の変化に柔軟に対応することが求められます。
誰しも慣れた環境は心地良いものですが、成功する起業家は変化をチャンスと捉えて行動する傾向にあります。たとえば、コロナ禍で多くの人の生活スタイルが変わったことをきっかけに、オンラインサービスをいち早く導入し、多くの顧客を獲得した例があります。
自分のビジネスの軸を持ちながら、状況に応じて方向性を見直す柔軟性がある人は、長期的に成功を収めやすいと言えるでしょう。
コミュニケーション能力が高い人
どんな事業も人との関わりを避けては通れません。あなたが始めようとするビジネスの業種がいわゆる「接客業」ではなくても、顧客との信頼関係を築くための対話力や、従業員をまとめるリーダーシップ、取引先との円滑な交渉力が求められます。
サラリーマンの場合は、営業担当者が顧客や案件を獲得してきますが、一人で起業した場合は自分のビジネスの営業は自分で行うことになります。たとえ素晴らしいアイデアがあっても、それを他者に伝えられなければ事業として成立しません。業種にかかわらず、コミュニケーション能力は起業家にとって非常に重要です。
前向きな考えの人
起業には困難や失敗がつきものです。成功する人は、失敗を学びの機会と捉え、次に生かす前向きな姿勢を持っています。たとえば、計画通りに進まないことがあっても、「なぜうまくいかなかったのか」を分析し、次の手を考えることで成長できるため、同じ失敗は繰り返さないでしょう。
壁にぶつかった時に「もうだめだ、起業なんてしなければ良かった」と投げ出したり諦めたりしてしまうと、事業を続けていくことができません。逆に、ネガティブな状況にもめげず、粘り強く取り組む力があれば、長期的に事業を継続できる可能性が高くなります。
挑戦することを恐れない人
経営者としてリスクを適切に評価し、備えることは重要です。しかし、リスクを恐れるあまり行動を控えてしまうと、チャンスを逃してしまう場合があります。競争が激しい市場で、競合と差別化して生き残るためには、時として挑戦を恐れない姿勢も必要です。
慎重派の人は「自分にはできない」と感じたかもしれませんが、挑戦を恐れない経営者は、無謀なリスクを取っているわけではありません。失敗した場合の対策やリスクヘッジを考えた上で行動を起こしています。
元々の性格が慎重派でも、起業に向いていないと落ち込む必要はありません。何が最善かを熟考しつつ、チャンスを見極めて挑戦することで成功を掴んでいる経営者もいます。慎重派の経営者は、リスク管理やコスト管理を綿密にする傾向にあり、いざ挑戦するときに周囲からの信頼を得やすいのです。
周りの意見を素直に受け入れることができる人
自己判断だけで突き進むのではなく、周囲の意見を広く聴く力も必要です。たとえば、顧客の要望をサービスに反映させたり、専門家からのアドバイスを受けて経営改善したりすることで、事業をより良い方向に進められます。
一方で、他人の意見に左右されて自分のビジネスの軸を見失っては本末転倒です。自分のビジョンを実現するために有益なアドバイスや意見を取捨選択する能力も同時に磨いいきましょう。
起業に失敗する人の特徴
起業に成功し事業を継続していける人がいる一方で、起業に失敗してしまう人もいます。以下でご紹介する特徴に当てはまる人は、せっかく起業しても事業を続けていけない可能性があるため、注意が必要です。
ストレスに押しつぶされる人
起業は精神的にも肉体的にも負担が大きいものです。思うように売上が伸びずに悩んだり、自分の責任でやらなければならないことが多く疲弊してしまったり、サラリーマン時代とは違ったストレスがかかります。
ストレスを抱えすぎると、心身に不調をきたす可能性があります。一人で起業した場合、自分が働けなくなったら代わりはいません。従業員がいる場合も、経営者の代わりに経営判断をしてくれる人はいません。ストレスに押しつぶされてしまっては、事業を継続していくのは難しいのです。
起業すると仕事に集中してしまいがちですが、睡眠や運動など基本的な生活習慣に気を配る、悩んだ時には誰かに話をする、ストレスを解消できる趣味をもつなどして、ストレスを貯め込みすぎないようにするとよいでしょう。
責任感がなく他人のせいにする人
問題が起きた際に他人のせいにし、自らの行動を顧みない人は、起業に失敗する傾向にあります。たとえば、売上が低迷した際に、市場の状況や顧客のせいにして言い訳をするだけでは問題は解決しません。
ビジネスを行う上で問題や課題にぶつかることは避けられません。経営者が問題から目を背けてしまうと、事業の継続が困難になるおそれもあります。事業の成長のためには、課題にしっかり向き合い、解決しようとする姿勢が不可欠です。
無駄遣いが多い人
起業の段階で自己資金や創業融資などまとまったお金が手元にあると、先のことを考えずに無駄遣いをしてしまう人もいます。しかし、資金管理が甘いと、事業はすぐに行き詰まります。
一定の利益が出るまではオフィスの賃料などの固定費を抑える、毎月の資金繰りを事前に確認して資金のショートを防ぐなど、適切な管理が必要です。長期の見通しを立てるのが苦手な人は、専門家のアドバイスを仰ぐのも良いでしょう。
市場の変化に対応できない人
市場の変化に目を向けず、従来のやり方に固執してしまうと、ターゲットのニーズに応えられなくなり顧客が離れてしまうおそれがあります。
自分のビジネスの独自性を打ち出すことはもちろん大切ですが、「うちはオンライン対応しない」「現金払い以外は受け付けない」など、顧客の利便性などの観点で競合に遅れを取ると、市場競争で勝ち残れません。市場や顧客ニーズの変化に対応する柔軟性を持つことが大切です。
自分に都合のいい意見しか受け入れない人
顧客の声や周囲のアドバイスを「批判された」「否定された」と考えて拒絶すると、ビジネスの改善のチャンスを逃してしまいます。自分のビジネスのビジョンを大切にすることは、周囲の声をまったく無視することではありません。
起業したばかりでわからないことがあるのも、事業を進める中で問題にぶつかるのも当たり前です。成功するためには、厳しい意見にも耳を傾け、自分の考えを柔軟に見直す姿勢が必要です。
起業することがゴールではない
起業はスタート地点に過ぎません。事業を成功させるためには、起業後の継続的な努力と準備が欠かせません。収益を上げるための営業活動や、取引先や顧客との関係構築、資金計画や税務・労務など、経営者の仕事は山積みです。
知識がなく手続きに不安に感じる場合や、事業活動のための時間を確保したい場合は、税務や労務を専門家に依頼する方法もあります。事業をスムーズに進められるよう、起業の段階でしっかりと基盤を作っておくのがおすすめです。
起業の悩みや不安は気軽に相談を!
起業のステップや起業に成功する人の特徴などをお伝えしてきましたが、起業の最初の一歩は踏み出せそうでしょうか。初めて起業する際は、わからないことが多く不安に感じるのは当たり前です。
しかし、起業を諦めたり躊躇したりする必要はありません。あなたが描いているビジョンを明確にしていくことで、スムーズに起業できます。
石黒健太税理士事務所では、起業に関するご相談を受け付けています。開業の際に必要な手続きが知りたい、自分で考えたビジネスモデルにアドバイスがほしい、資金調達を支援してほしいなど、起業の準備から起業後までさまざまなご相談に対応いたします。電話でのご相談もできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。