節税の提案をしてくれない税理士に依頼するデメリット
顧問税理士がいるにもかかわらず節税の提案をしてもらえないと、経営者にとって多くの不利益が生じます。適切な節税策を講じずに、払わなくてもいい税金を払い続けることは、長期的な事業の成長にとってもマイナスです。ここでは、具体的なデメリットを詳しく解説します。
税金の負担が軽減されない
税理士に依頼する大きな目的のひとつが、税金の負担軽減です。しかし、税理士が節税の提案をしてくれない場合、本来であれば払わなくてよかったはずの税金を納めなければならないリスクがあります。
経費として計上できるものを見落としていたり、適用可能な税制優遇措置を知らずに活用できていなかったりすると、納税額が不必要に増加します。節税対策が不十分だと、将来的な投資や事業拡大に回せる資金が減ってしまい、結果的に経営を圧迫することになりかねません。
事業を長期的に安定化させるためにも、経営のパートナーとして、節税対策を積極的に提案してくれる税理士の存在が不可欠です。
有利な制度を活用する機会を逃す
税制は毎年改正されます。節税に役立つ特別控除や税制優遇措置も毎年アップデートされているため、制度を上手に活用するためには、常に最新情報にアンテナを張っておく必要があります。
しかし、節税提案に積極的でない税理士に依頼している場合は、必要な情報が経営者に届かないでしょう。税理士が情報収集やアドバイスをしてくれなければ、経営者が自ら調べることになります。しかし、専門知識がなければ制度を正しく理解することは難しく、気づいた時には制度を利用する期限が過ぎている、ということもあります。
たとえば「事業承継税制」や「中小企業経営強化税制」のような制度は、特定の条件を満たしている場合には大きなメリットがありますが、適用するために事前準備や申請が必要です。専門家のタイムリーなアドバイスがないと、経営者は節税のチャンスを逃してしまうおそれがあるのです。
税理士に依頼している理由がわからなくなる
多くの人は、税金のプロである税理士に依頼すれば節税対策もしっかりしてくれるだろうと期待します。税理士が期待通りに節税の提案をしてくれなければ、「税理士に依頼する意味があるのか」と疑問に感じることもあるでしょう。
帳簿の作成や確定申告書の作成だけであれば、最近ではクラウド会計ソフトや外部の経理代行サービスで対応できる場面も増えています。そのため、節税対策や資金繰りの改善など、事業の運営に直結するアドバイスを得られることが、税理士に依頼することのメリットであると言えます。
適切な節税によって事業資金を効率よく運用したいと考えている経営者にとっては、税理士が節税の提案をしてくれない状況は非常にストレスフルです。顧問税理士に要望を伝えたり、他の税理士に相談したりして現状を打開する必要があります。
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時間と労力を無駄に費やすことになる
税理士から節税の提案がなければ、経営者は自分で調べて対策しようと思うかもしれません。しかし、税制や税務を独学で学ぶためには膨大な時間と労力がかかります。誤った情報を取り入れたり、誤って理解してしまったりするリスクもあるため、おすすめはできません。
法改正への対応を誤ってしまうと、後から税務署の指摘により修正を余儀なくされ、場合によっては追徴課税となる可能性もあります。
また、税務の対応に追われることで、経営者が本来集中するべき事業運営や収益拡大に割く時間が削られること自体も大きな損失です。本業に専念できる環境を作るためにも、節税対策を安心して任せられる税理士に依頼するのが望ましいと言えます。
事業が成長する機会を逃す
中小企業にとって、税金の負担は重いものです。本来であれば支払わなくてよいはずの無駄な税金を支払うことで、事業の成長に必要な資金が不足するケースも少なくありません。たとえば、従業員の増員や新たな設備投資、さらにはマーケティング活動など、事業拡大のために必要な予算が確保できなくなります。
税理士に依頼しているのに、節税対策が不十分なことで事業の競争力を失っては本末転倒です。節税は、単に納税額を減らすだけでなく、事業の資金繰りを改善し、成長のための投資を可能にする手段でもあります。自社の事業をよく理解し、的確な節税の提案をしてくれる税理士に依頼するのがよいでしょう。
石黒健太税理士事務所では、経営者の皆様の税金や経費に関するお悩みを丁寧にヒアリングし、最適な節税対策をご提案します。節税を通じて事業の安定と成長を目指したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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税理士が経費にしてくれない理由
税理士に「これは経費にできません」と言われ、なぜだろうと疑問に思った経験のある経営者の方も多いのではないでしょうか。税理士が経費として計上しない理由には、法的根拠や実務的な判断が大きく影響しています。ここでは、代表的な理由を詳しく解説します。
証拠書類に不備があるから
経費として認められるためには、適切な証拠書類が必要不可欠です。領収書、請求書、契約書、取引の内容が分かるメモや記録などがこれにあたります。これらの書類がない、または内容が不十分な場合、経費として計上することができません。
たとえば以下のようなケースがあります。
・領収書を紛失して、取引があったことを証明できない場合
・領収書に「飲食代」や「サービス代」といった漠然とした記載しかなく、事業に関連した支出であることを説明できない場合
・領収書の日付と取引記録が一致しない場合
証拠書類に不備のある経費は税務調査で否認されるリスクがあるため、税理士としては経費として認めるわけにはいきません。意地悪で経費を認めてくれないのではなく、税務署とのトラブルを防ぐために、証拠がしっかりしていないものは最初から経費としないケースは珍しくありません。
同じような支出内容でも証拠書類を整えれば経費として認められる可能性もあります。日頃から書類の整理をするとともに、経費が認められなかった理由は税理士にきちんと確認しておきましょう。
プライベートな費用だから
事業に関連しない個人的な支出は、経費として認められません。これは税法上の明確なルールであり、税務署から厳しくチェックされるポイントのひとつです。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。
・出張や会議と称して、実際には家族旅行に行った際の費用を旅費交通費とした
・自宅の一部を事務所として使用しているところ、自宅の光熱費を全額事業経費とした
・仕事とは関係のない友人や家族との食事代を接待交際費とした
プライベートな支出をごまかして経費として計上した場合、税務調査で否認されるだけでなく、追徴課税やペナルティを課されるリスクがあります。経費として計上するためには、「その支出が事業に関連している」と客観的に説明できることが重要です。もし迷う場合は、税理士に事前に相談し、判断を仰ぐようにしましょう。
過去の税務調査で否認された事例があるから
税理士が経費として計上できるかを考える際には、過去の税務調査の結果も考慮します。以前の税務調査で否認された項目については、同様の支出は再度否認される可能性が高いため経費としないという判断をするケースがあります。
たとえば、以下のようなケースです。
・実際にはプライベートな支出であると判断された場合
・事業に必要不可欠な支出ではないと指摘された場合
・証拠書類の不備が指摘された支出で、問題点が改善されていない場合
仮に、税務調査で一度指摘を受けた支出を再び経費として計上し、再度調査で否認されれば、クライアントだけでなく税理士の信頼性も損なわれます。クライアントも、前回よりも重いペナルティを受けるおそれがあります。そのため、税理士が慎重になるのは当然でしょう。
節税の提案をしてくれない税理士の対策
「節税の提案がない」「事業の経費を認めてもらえない」といった不満がある場合、どのような対応をすればよいのでしょうか。税理士に期待した役割を果たしてもらえない場合は、適切な対策を講じる必要があります。具体的な対策を5つ紹介します。
素直に不満を伝える
まずは、税理士に対して率直に自分の不満や要望を伝えることが大切です。「節税の提案をしてほしい」「この経費は事業に必要な支出だと思うが、なぜ経費にできないのか」など、疑問や意見を素直に伝えることで、税理士もあなたの意図を理解しやすくなります。
クライアント側から要望や意見がなければ、税理士が現状に満足してもらえていると捉えてしまう可能性もあります。
不満を伝えることで税理士の反感を買うのではないかと不安に思う人もいるでしょう。しかし、不満を具体的な要望として伝えることで、税理士がよりクライアントに合ったサポートを提供できます。結果的に自社に適した節税提案を受けられる可能性が増すのです。
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コミュニケーションの機会を増やす
税理士とのコミュニケーション不足は、節税提案が出てこない原因のひとつです。クライアントの事業内容や収支の状況を正確に把握していなければ、適切な節税のアドバイスはできません。
税理士に自社の事業を深く理解してもらうためには、定期的なコミュニケーションの機会を増やしてみましょう。たとえば、毎月や四半期ごとに税理士との面談を設定したり、チャットやメールで事業の状況や新しい動きを報告したりする方法があります。
税理士が事業の成長を伴走支援するような関係を築くことができれば、税務以外の面でも強力なサポートを受けられる可能性があります。
税務に関するセミナーに参加する
経営者自身が税務や節税についての知識を持つことも重要です。税務に関するセミナーや勉強会に参加することで、税制の仕組みや節税のポイントを理解できます。
何も専門知識を身につける必要はなく、一般的な節税対策や経費として計上できる範囲などの基礎的なことを知っているだけで、税理士とのコミュニケーションがスムーズになります。
たとえば、税理士に具体的に質問できたり、税理士の提案内容が自分の事業に本当に合っているかどうか、経営者自身が検討・判断できたりするというメリットがあります。また、セミナーに参加することで優秀な税理士と出会うきっかけになるかもしれません。
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他の税理士に相談する
現在の税理士に不満がある場合、他の税理士にセカンドオピニオンを求めるのもひとつの手段です。別の税理士に相談することで、新たな視点から節税対策の提案を受けられる可能性があります。
「この支出は経費になるか?」と具体的に相談する、現在の税務対策についての意見を聞くなどして、現在の税理士のアドバイスが適切かどうかを客観的に判断できる良い機会です。
顧問税理士以外に相談するのがはばかられるという経営者の方もいらっしゃいますが、自社や自分自身と相性の良い税理士を見つけたり、今の税理士との関係を改善したりするきっかけが生まれることも多いので、他の税理士に気軽に相談してみるのもおすすめです。
関連記事:税理士は無料相談でどこまで対応してくれる?電話相談はおすすめできない理由と有意義にするポイント
税理士の変更を検討する
どうしても不満が解消されない場合、税理士の変更を検討することも選択肢に入れましょう。税理士は事業のパートナーであり、信頼関係が築けていなければ適切な節税対策や経営サポートは期待できません。
税理士を選ぶ際は、少し手間だと思っても、下調べを入念に行いましょう。節税対策や自社が望む形の経営サポートの実績があるか、自社の業種に詳しいかなどを調べてある程度絞り込み、面談でコミュニケーションなどの相性を確認するのがおすすめです。
信頼できる税理士に出会うことができれば、節税対策を通して事業の利益を最大化し、資金繰りの改善や事業成長につなげることができます。
関連記事:税理士を変えたいと感じたら?変えるデメリットとトラブルを避ける方法
節税アドバイスが期待できる税理士の特徴
一言で税理士と言ってもさまざまな税理士がいるため、あなたの目的にあった税理士を選ぶことが大切です。ここでは、節税アドバイスが期待できる税理士の特徴について解説します。
将来の展望や経営状況を丁寧に聞いてくれる
経営者のビジョンや事業の状況を丁寧にヒアリングしてくれる税理士は、あなたの状況を正しく把握して効果的な節税アドバイスをしてくれるでしょう。
目先の税金対策だけではなく、長期的な利益改善が期待できます。税理士と経営者が同じ目線で事業を見つめることで、今後の事業拡大や投資計画に合わせて柔軟な節税提案が可能になります。
複数の節税対策を提案してくれる
節税にはさまざまな手法があり、事業規模や業種によって最適な方法は異なります。税理士から複数の節税方法を提案してもらえると、複数の方法を組み合わせたり、より自社に合った方法を選択したりする余地が生まれます。
複数の節税対策を提案するためには、節税に関する幅広い知識が必要です。リスク分散を考慮しながら、経営者自身も納得できる最適な節税対策を見つけることができます。
最新の税制改正や節税に関する情報を発信している
税制は毎年のように改正されるため、最新の情報を正確に把握している税理士に依頼することで、自社に有利な制度をフル活用できます。
ブログやセミナー、ニュースレターなどで最新の税制改正や節税に関する情報を発信している税理士は、知識のアップデートを欠かしません。
このような税理士に依頼すると、税制改正をいち早く知り、適切に対応できます。また、常に新しい情報に基づいた節税対策を提案してもらえるので、節税のチャンスを逃さないでしょう。
文章や話し方には人柄が滲み出るものです。自分と相性が合いそうな税理士を探して問い合わせてみましょう。
特定の分野に特化している
税理士にはそれぞれ得意分野があります。特定の業種に特化している税理士は、業界特有の節税対策や優遇制度などを熟知していると言えます。
製造業、飲食業、不動産業など、業種ごとに最適な節税策が異なるため、自社の業種が得意な税理士に依頼することで、より的確な節税方法を提案してもらえる可能性が高いです。
業界特化型の税理士を見つけるには、ホームページに同業他社の事例を多数載せている税理士や、「〇〇業に強い税理士」として紹介されている税理士を探しましょう。同業者に税理士を紹介してもらうと言う手もあります。
クライアントからの評判が良い
実際に節税対策を依頼したクライアントからの評価が高い税理士は、適切なアドバイスをしてくれる可能性が高いです。節税の実績が豊富であることがわかっていれば、安心して相談できます。
また、評判が良い税理士はコミュニケーション能力やサポート体制も優れていることが多いです。税理士と円滑なコミュニケーションがとれることや、自社に必要なサポートを網羅していることは、節税に限らず、経営に大きなプラスの効果をもたらします。
税理士を選ぶ際には、口コミや評判、ホームページの事例なども参考にし、実績が豊富で丁寧に話を聞いてくれる税理士を選びましょう。
関連記事:自社にあった税理士の探し方は?気をつけることを税理士目線で解説
節税に関する悩みは気軽に相談を!
適切な節税は、事業の利益を守り、より成長していくために欠かせないものです。しかし、税理士とのコミュニケーション不足や知識不足が原因で、節税の機会を逃している経営者も少なくありません。
顧問税理士が親身に相談に乗ってくれないと感じる場合、まずは率直に意見を伝え、自社のニーズや事業の状況をきちんと理解してもらいましょう。それでも節税の提案が不十分だと感じられるときは、税理士変更も選択肢のひとつです。
石黒健太税理士事務所では、経営者の皆様としっかりと向き合い、事業の成長を支える節税対策や経営サポートを提供しています。「もっと節税のアドバイスがほしい」「税理士を変えようか迷っている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。