お金がない会社の特徴とお金が残らない本当の理由は?経営を安定化するための改善策
会社を経営する上で、「黒字だから経営は順調だと思っていたのに、実際はお金がない」と悩んだことはありませんか?会社の資金繰りがショートすると、最悪の場合は倒産のおそれもあります。
お金がなくて困っていても、会社にお金が残らない本当の理由を経営者が把握できていない場合も少なくありません。お金がない会社の特徴を知り、自社の経営の問題点を早期に発見・解決することで、倒産のリスクを回避し、安定して事業を続けていくことができます。この記事では、資金繰りのポイントや経営を安定させるための改善策を解説します。
目次
- お金がない会社の特徴は?会社にお金が残らない本当の理由
- 売れない在庫を過剰に抱えている
- 回収できていない売掛金がある
- 入金と支払いのサイクルがあっていない
- 売上に対する利益の割合が低い
- 会社の継続に必要な売上が確保できていない
- 黒字なのに現金がない会社は倒産する?
- 黒字倒産は珍しくない
- 借入金に依存すると危険
- 会社の資金繰りがショートしそうなときにできる対策
- 資金繰りが上手くいかない原因を調べる
- 資金調達の融資を受ける
- ファクタリングを利用する
- 不要な資産を売却する
- 支払いの延長を交渉する
- 銀行融資の返済条件を変更してもらう
- 経営を安定化するための改善策
- 資金繰り表を作成しキャッシュフローを明確にする
- 過剰な在庫を抱えないようにする
- 請求漏れや回収漏れを毎月確認する
- 入金と支払いのサイクルを見直す
- 無駄な経費がないか見直す
- 税理士に相談する
- 資金繰りの悩みは気軽に相談を!
お金がない会社の特徴は?会社にお金が残らない本当の理由
会社にお金が残らない原因は、売れない在庫を抱えている、売掛金を回収できていない、入金と支払いのタイミングが合っていないなど、いくつか考えられます。
「なぜかお金がない」と感じている場合は、自社の経営の問題点に気がついていない可能性があるので要注意です。問題を改善しないままだと、たとえ黒字であっても資金繰りが悪化し、現金が不足してしまいます。お金がない会社の特徴と具体的な対策を確認しましょう。
売れない在庫を過剰に抱えている
売れない在庫を抱えていると、お金の流れが止まってしまいます。仕入れにかかった費用は、商品を売って初めて現金として回収できます。売れない在庫も会社の資産ではありますが、現金化できる見込みがないため、在庫を過剰に抱えすぎるとキャッシュフローが悪化しがちです。
また、在庫を持っていること自体にかかる費用もあります。例えば、保管場所の家賃や光熱費のほか、管理や輸送にかかる人件費などです。過剰な在庫を抱えていれば、その分余計なコストがかかることになります。品質劣化などの理由で売れないまま廃棄することになれば、処分費用もかさみます。
回収できていない売掛金がある
売掛金は、実際に現金として手元に入るまで会社のお金になりません。売上が十分にあるつもりでも、売掛金がきちんと回収できなければキャッシュフローが悪化してしまいます。
顧客の支払遅延や倒産によって売掛金が回収できないと、現金不足に陥るリスクが高くなります。実際に、主要な取引先の倒産によって自社も倒産してしまう例は後を絶ちません。
入金と支払いのサイクルがあっていない
入金よりも支払いが先のサイクルになっていると、現金不足が発生します。例えば、商品やサービスを売ってから売掛金が回収できるまでの期間が長い場合や、逆に仕入れや外注費などの経費の支払いまでの期間が短い場合です。
大きい額の売上の裏には、多額の経費がかかっていると考えられます。入金より支払いが先のサイクルになっている場合、売掛金が入金される前に大きい額の経費を支払うことになります。利益が出ているにもかかわらず、現金が不足することは想像しやすいでしょう。
売上に対する利益の割合が低い
いくら売上があっても、固定費や変動費が多くかかれば、差し引きで手元に残る現金は少なくなってしまいます。「月商や年商は多いはずなのに、なぜお金がないのだろう?」と悩んでいる経営者の方は、利益率を確認してみましょう。
業種によって適切な利益率は異なりますが、売上に対する利益の割合が低い状態ではないでしょうか。利益率を上げるためには、収益性の低い商品やサービスを見直したり、固定費を削減したり、業務の体制を効率化したりすることで、会社全体のコストを改善する必要があります。
会社の継続に必要な売上が確保できていない
事務所の家賃や借入金の返済などは、売上の金額にかかわらず一定のサイクルで支払わなければならないものです。最低でもこれらをまかなうだけの売上が確保できていなければ、事業を続けていくことが難しいでしょう。
固定費や借入金の返済負担が大きい場合は、個々の取引では相応の利益を出しているにもかかわらず資金がショートするおそれがあり、特に注意が必要です。固定費や変動費について詳しくは、後述します。
黒字なのに現金がない会社は倒産する?
「黒字倒産」という言葉をご存じですか?帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な現金が不足して倒産してしまうことです。資金繰りの悪化が原因で黒字倒産してしまう中小企業も少なくありません。黒字倒産はどのような場合に発生し、回避するためにはどうすればよいのでしょうか。
黒字倒産は珍しくない
黒字倒産は珍しいことではなく、資金繰りの管理が甘い企業で発生しやすい傾向にあります。利益が出ているのに現金が不足する原因は、売掛金の回収遅れや、過剰な在庫、入金と支払いのサイクルのずれなどがあります。
黒字倒産を防ぐためには、資金繰り表を確認して自社のお金の流れを把握し、資金がショートしないように早めに対処することが大切です。
借入金に依存すると危険
金融機関などからの借入金は、一時的な資金不足を補う手段としては有効です。しかし、借入金に過度に依存すると、返済の負担が大きくなり経営を圧迫します。また、借入は一時的な資金不足は解消しますが、資金繰りの根本的な解決にはなりません。
借入金の返済は、借りているお金を返済する支払のため経費になりません。返済して現金が出ていっても、利益には影響ないのです。経営者が資金繰りをきちんと把握できていない会社では、利益が出ているから経営は問題ないと思い込んでしまったり、お金がなければ借りればよいと考えてしまったりします。
しかし、借入金の返済が滞ると会社の信用が低下し、新たな融資が受けられなくなるおそれがあります。無理なく返済できる範囲で資金を調達することが大切です。
会社の資金繰りがショートしそうなときにできる対策
資金繰りがショートしそうだと気がついたら、できるだけ早急に対策を講じる必要があります。資金繰りが悪化する原因を特定し、適切な方法で資金を確保することで、経営危機を回避できます。
資金が足りないときは金融機関からの融資を検討する経営者が多いでしょう。もちろん融資を受けることは資金調達の有効な手段ですが、資金繰りを改善するためにできることは他にもあります。以下では、資金繰りがショートしそうなときの具体的な対策を紹介します。
資金繰りが上手くいかない原因を調べる
適切な対策を講じるために、まずは資金繰りが悪化している原因を調べましょう。先述のとおり、売掛金の回収が遅れている、売り上げに対してコストがかかりすぎている、必要以上に在庫を抱えているなど、さまざまな原因が考えられます。
自社の問題を特定するためには、資金繰り表を作成し、入金と支出の流れを具体的に把握することが重要です。原因がわかれば、何を優先的に改善すべきかが見えてきます。資金繰りが上手くいかない原因によっては、追加の融資が不要なこともあります。
資金調達の融資を受ける
一時的な資金不足を解消するために、金融機関から融資を受ける方法もあります。運転資金を確保するために融資を受けている企業は珍しくありません。
ただし、融資を受ける際には返済計画をしっかり立てることが重要です。無理に借入を増やすと、返済負担が大きくなり経営を圧迫するため注意しましょう。
融資を受けて一時的にお金が手元に入ってきても、会社にお金が残らない体質を改善しないとまた現金不足に陥る可能性があります。お金がないことには本質的な原因があるはずです。毎月のお金の出入りをきちんと把握し、経営課題の解決に努めましょう。
関連記事:運転資金の融資が受けられる金融機関は?資金不足を解消する方法を解説
ファクタリングを利用する
ファクタリングとは、会社が持っている売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらい、現金化できるサービスです。売掛金の回収サイトが長期の場合、ファクタリングを活用すれば一時的な現金不足を解消することができます。
一方で、利用には手数料がかかるため、信頼できる業者を選定し、利用コストを事前に確認することが大切です。ファクタリングを装って、高金利の貸付けを行う違法な業者もいるため注意が必要です。
ファクタリングは一時的な現金調達の手段にはなりますが、利用が常態化するのは経営にとってよくありません。本来であれば不要な手数料のコストが積み重なっていくためです。
ファクタリングを利用する会社は、売掛債権を持っているのに現金がない状態です。取引条件の交渉により、売掛金の入金を早めてもらう、または支払いを遅らせてもらうなど、根本的な解決を図ることで、経営を安定させることができます。
不要な資産を売却する
資金繰りが悪化して資金を調達したい場合、不要な資産を売却して現金を得ることもできます。使っていない機械や設備、不動産などがあれば、整理して資金に変えることを検討しましょう。
売却する際には、資産の市場価値を正確に把握し、適切な価格で取引することが大切です。すぐに現金を得たいからと言って、よく検討せずにとりあえず売ってしまうと損をする場合があるため注意が必要です。
支払いの延長を交渉する
支払期日に手元に現金がなくて支払えないが、売掛金が入れば支払えるような場合は、取引先と支払い期限の延長を交渉することが一時的な解決策になる場合もあります。
ただし、支払期日の延長は、取引先にとっては売掛金の回収が遅くなるということですので、会社の信用が低下するリスクがあります。ただ「支払えないので延長してほしい」と言うのではなく、支払えない現状を誠意をもって説明し、この日に売掛金が入金されるので支払える、というように支払いの目途を伝えて交渉するといいでしょう。
売掛金の入金が支払いより後のサイクルになっていると、一度支払いを延長してもらうと何とか遅れて支払える可能性があります。しかし、次も同じように「支払期日に現金がない」という状態に陥るおそれがあります。取引条件の見直しやキャッシュフローの管理強化によって、長期的な経営改善の努力が必要です。
銀行融資の返済条件を変更してもらう
銀行などの金融機関から融資を受けている場合は、返済条件の変更を検討する方法もあります。具体的には、返済期間を延長してもらう、一定期間元本の返済を猶予してもらい返済負担を減らすなどの措置が挙げられます。
ただし、返済条件の変更を行うと会社の信用情報に影響を与える可能性があるため、リスクを理解した上で慎重に進めましょう。対応に悩むときは、融資支援に強い税理士に相談するのもよいでしょう。
石黒健太税理士事務所では、資金繰りや融資に関する相談を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。
関連記事:法人の銀行融資の種類と特徴は?審査に通らない理由を解説
経営を安定化するための改善策
一時的に資金繰りがショートしそうな状況をなんとか切り抜けても、資金繰りを改善しないと根本的な解決になりません。資金繰りの管理が甘いままだと、取引先や金融機関からの信用が低下するだけでなく、経営が行き詰まってしまう可能性もあります。
経営を安定化するためには、資金の流れをきちんと管理する体制を構築する必要があります。「お金がない会社」を脱却するための改善策を確認しましょう。
資金繰り表を作成しキャッシュフローを明確にする
経営者が忙しかったり会計に苦手意識があったりして、毎月の資金繰りをきちんと把握できていない場合があります。しかし、お金の流れを把握していないと、資金がショートするリスクに気がつくのが遅れてしまいます。
資金繰り表は、一定期間の収入と支出を記録した表です。資金繰り表を作成することで、売掛金がいくら入ってくる予定なのか、経費はいくら支払わなければならないのかなどを事前に把握することができ、現金不足のリスクを予測できます。
事前にリスクがわかっていれば、支払いタイミングや取引条件を調整するなどの対策をとることができます。また、経営者が資金の流れを理解していることは、適切な経営判断を行う上でも重要です。
過剰な在庫を抱えないようにする
売れ残った商品を、処分した経験はないでしょうか。過剰な在庫は、資金繰りを圧迫します。在庫管理の効率化・適正化は、資金繰り管理の重要なポイントです。管理の適正化のためにできることはいくつか考えられます。
例えば、過去の販売データを分析して正確な需要予測を行うことです。季節性商品などの需要を見誤ると大量の売れない在庫を抱えるリスクがありますが、前年の同じ時期の傾向を見て発注数の判断をすることでリスクを回避することが可能です。
また、在庫管理システムを導入する方法もあります。入庫、出庫をシステムで管理し、リアルタイムで正確な在庫状況を把握できるのが魅力です。システム導入のコストはかかりますが、過剰な在庫を抱えるコストや、人の目で在庫を確認する手間は確実に減るでしょう。
在庫を把握できていると、回転率の悪い在庫や売れ残りを早めに処分するなどの対策も講じやすくなります。過剰な在庫を抱えないだけでなく、逆に在庫切れも起こしにくくなり、事業に与えるメリットは大きいと言えます。
請求漏れや回収漏れを毎月確認する
せっかく売上があがっても、請求や回収が漏れてしまうと会社に現金が入ってきません。毎月、顧客ごとに取引状況を確認し、請求書を発行する段階で漏れがないようにしましょう。
営業担当が取引を登録して経理担当が請求書を発行している場合などは、請求書を発行する前に取引内容が正しいかを確認してもらうと安心です。
売掛金の入金はこまめにチェックし、未回収を放置しないようにすることも大切です。もし指定した期日までに支払いがない場合は、顧客に連絡して支払いを依頼するなど迅速に対応してきちんと回収しましょう。
入金と支払いのサイクルを見直す
先述のとおり、入金よりも支払いが先のサイクルになっている場合は、入金と支払いのタイミングを見直すことでキャッシュフローを改善できます。必要に応じて取引条件の変更や支払期間の調整を交渉しましょう。
無駄な経費がないか見直す
無駄な出費をなくすのは資金繰り管理の基本です。固定費や変動費を見直して、コストを削減できるものがないか検討しましょう。
固定費は事務所の家賃や光熱費、人件費など、売上に関係なく必ずかかる費用です。固定費を減らすのは難しく思えますが、抑えられればその分毎月手元に残るお金が増えます。
変動費は売上によって金額が変動する経費で、材料費や外注費などがあります。頻繁に使うものであれば、一度に発注する数を増やして単価を下げたり、取引先と価格交渉をしたりすることも有効です。
税理士に相談する
自社がどのように経営改善していけばよいか悩む場合は、税理士に相談するのも効果的な手段です。税理士は税務の専門家でもありますが、資金繰り表作成や融資支援など経営に関する幅広いサポートをしているケースも多いです。気軽に相談してみるとよいでしょう。
関連記事:融資に強い税理士の特徴は?探し方と資金不足の改善について解説
資金繰りの悩みは気軽に相談を!
会社にお金が残らないのには理由があります。いま資金繰りに不安を抱えている会社も、適切に対応すれば、経営を安定化させることは十分可能です。
現状なぜお金が残らないのかわからない場合は、自社の資金繰りを把握し、問題点を特定することが先決です。一時的に現金を調達するだけでなく、長期的に資金繰りを改善する対策を講じることで、資金繰りの不安を解消できます。
石黒健太税理士事務所では、税金だけでなく資金繰りに関する相談を受け付けています。経営のパートナーとして、資金繰り表の作成や経営改善のアドバイスなどさまざまなお手伝いが可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。