税理士

年末調整を税理士に頼むとどこまでしてくれる?報酬相場と提出するものを解説

 

年末調整は事務の負担が大きいだけでなく、税務に詳しくないと正確に行うのが難しいものです。できれば税理士に依頼したいけれど、頼んだらどこまでやってくれるのだろうか?費用はどのくらいかかるのだろう?と、悩みは尽きないものです。

 

この記事では、年末調整を税理士に頼むとどこまでやってもらえるのかと、費用の相場、税理士に提出する書類について解説します。

 

 

目次

年末調整を税理士に頼むとどこまでしてくれる?

年末調整は税金に関わる業務のため、税理士に依頼できます。従業員が提出した書類のチェックから、ひとりひとりの税額計算、書類作成と提出など、税理士は煩雑な年末調整の大部分を代わりに行ってもらえるのです。

 

まずは税理士が具体的に、どのような業務を代行してくれるのかを解説します。年末調整はどのようなことをしなければならないかも、併せて確認しましょう。

必要書類の収集と確認

自社で年末調整を行う場合、従業員から必要書類を集めて確認する最初の段階から一苦労です。すべて紙でもらう方法とシステムに入力してもらう方法がありますが、紙で受け取る場合は特に、計算誤りがないかを点検する必要があるため、大変な手間がかかります。

 

税理士に年末調整を頼めば、税理士が会社や従業員から必要書類を受け取り、内容を確認してくれるので、会社は書類を集めればよいだけです。税理士に提出する書類は以下のものがあります。

 

・扶養控除等(異動)申告書

・保険料控除申告書

・基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

・1年分の給料明細

・各種控除証明書

 

一般的に年末調整の際に従業員から提出してもらう書類のほかに、会社が従業員ひとりひとりに支払った給与や賞与の金額と、給与から引いた源泉所得税や社会保険料の金額などがわかる書類も必要です。各書類については後述します。

源泉徴収票の作成

源泉徴収票は、1月から12月までの間に支払った給与収入、扶養控除や社会保険料控除など各種控除の内容、所得税の金額などを記載する書類です。

 

年末調整が終わったら、従業員全員分の源泉徴収票を作成し、1月31日までに従業員本人に交付が必要です。また、給与の支払金額が150万円を超える役員や500万円を超える従業員など、一定の要件を満たす対象者の分は、後述する法定調書合計表と一緒に1月31日までに所轄の税務署に提出する義務があります。

 

税理士は、従業員や会社から受け取った書類の内容をもとに年間の収入や納めるべき税額を計算し、源泉徴収票を作成します。また、税務署へ提出の必要があるかを判断し、提出まで代行してくれるでしょう。

年末調整を反映した納付書の作成

従業員の給与から源泉徴収した所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに納付することになっています。年末調整によって所得税の過不足を調整した場合は、納付書に反映しなければなりません。

 

例えば、12月25日に支給する給与で年間の所得税の過不足を調整する場合で考えてみましょう。他の月と同じように、当月に支払う給与から差し引く所得税が発生します。それと同時に、年末調整によって従業員から追加でもらったり、還付したりする税額も発生します。そのため、1月10日に納付する所得税の金額は、年末調整の結果を反映して計算するのです。

 

税理士に依頼すれば、従業員ひとりひとりの税額だけでなく、会社として納めるべき税額も計算してくれます。納付書の作成までしてもらえるので、税額を間違える心配もありません。

 

給与支払報告書の作成と提出

給与支払報告書は、翌年度の住民税を計算するために市区町村に提出する書類です。従業員が1月1日時点で住民票をおいている市区町村へ、1月31日までに提出します。従業員ごとの個人別明細書と、提出先の市区町村ごとの総括表が必要です。

 

個人別明細書の内容は源泉徴収票と同じです。総括表は、個人別明細書を取りまとめる表紙の役割があります。給与支払者の会社名や代表者名、事業所所在地のほか、住民税を給与から引いて会社が納める「特別徴収」と、従業員自身で納める「普通徴収」の対象者の人数などの記載が必要です。

 

一般的には税理士は源泉徴収票とともに給与支払報告書も作成し、提出します。給与支払報告書は従業員本人に渡す必要はありませんので、書類の作成と提出を任せれば会社でやることは特にありません。

法定調書合計表の作成と提出

法定調書とは、所得税法などの法律で税務署への提出が義務付けられている資料のことで、給与所得の源泉徴収票もその一つです。法定調書合計表は、源泉徴収票などの法定調書を提出する際に同時に提出する表紙のような書類です。

 

給与の支払対象となった従業員の人数や1年間に会社が支払った給与、源泉徴収税額の総額などを記載します。源泉徴収票を税務署に提出しなくてもよい給与についても合計には含めることに注意が必要です。もちろん、税理士に依頼すれば法定調書合計表まで作成・提出してもらえます。

 

ただし、年末調整とは別に報酬が発生することもあるため、事前に確認しましょう。

 

関連記事:自社にあった税理士の探し方は?気をつけることを税理士目線で解説

年末調整を税理士に頼まないでもいいケース

以下のケースに該当する場合は、年末調整を税理士に頼まなくてもよいでしょう。

・従業員が少ないため年末調整事務の負担が重くない

・年末調整の担当者が税務に詳しく手続きに不安がない

・給与計算ソフトを活用して正確な計算ができる

上記に該当する場合などは、自社でも十分対応可能です。それぞれのケースについて詳しく解説します。

ケース1:従業員が少ない

年末調整の担当者の負担は、従業員数に比例して重くなります。従業員ごとに提出書類や給与の金額を確認して、書類を作成したり源泉所得税の精算をしたりするためです。従業員が少ない場合は、自社でも対応できる可能性があります。

 

従業員が少なくても、慣れない年末調整は時間や労力を費やすでしょう。従業員から提出してもらった書類を確認したり、誤りがあった場合に訂正してもらったりする時間を十分に確保するため、早めに書類を集めると安心です。

 

所得税の精算は12月に支払う給与で行う会社が多いです。給与計算や書類提出を含めたスケジュールを立てて、余裕を持って進めるのがよいでしょう。

 

ケース2:自社に税務に詳しい担当者がいる

年末調整の手続きは煩雑で、年に1回しか行わないため、毎年思い出すところから始めなければならず苦労するという会社も少なくありません。国税庁のホームページなどで調べて手続きを進めようとしても、税務に携わったことがない人には読み解くのが難しい場合もあります。

 

一方、税務に詳しい担当者は、書類の名前や用語を知っているので、手続きにわからない部分があったとしてもスムーズに手続きが進められる可能性が高いです。税制改正など今年の変更点がないかを確認し、提出書類は最新の様式を使用することで、より正確な手続きがしやすくなります。

 

ケース3:最新の税制改正に対応された給与計算ソフトを使用している

表計算ソフトや手書きの帳簿で給与計算をしている場合は、税額や控除額が自動で算出されないので計算誤りのリスクがあります。経営者や年末調整の担当者が、自分で最新の税制改正を確認しながら作業するのは容易ではありません。

 

しかし、最新の税制改正に対応している給与計算ソフトを使えば、逐一調べなくても正確に計算することができます。また、年末調整に必要な各種書類を作成する機能がある場合も多く、自分で計算する場合に比べて工数を大幅に削減できます。

年末調整を頼むときの報酬の相場

税理士に年末調整を頼む際のコストも気になるポイントです。顧問税理士に年末調整を依頼しようと考えている場合は、顧問料とは別に費用がかかる可能性があるので、依頼する前に確認しましょう。

基本料金は1万円~3万円

年末調整を税理士に頼む場合の基本料金は、1万円から3万円程度といわれています。税理士によって料金体系はさまざまですが、従業員数が増えると基本料金も高くなる傾向です。

 

近年はクラウド給与計算ソフトが普及してきて、1件ずつ電卓をたたいたり紙に書いてある数字を突合したりする手間は以前よりも減っています。そのため、基本料金を1万円台で設定している税理士も増えています。通常より早めに依頼したり、給与計算などの他のサービスと併用したりすることで料金が安くなることもあるでしょう。

従業員1名あたり1,500円~3,000円が追加される

一般的に税理士事務所では、基本料金のほかに、従業員1名あたり1,500円から3,000円の手数料がかかります。年末調整は従業員ひとりひとりについて扶養や控除の内容を確認しながら進めなければならないので、人数分の料金がかかるケースがほとんどです。

 

例えば、従業員数が20名の会社が、基本料金2万円、従業員1名あたりの手数料が2,000円の税理士に依頼する場合は、費用は2万円+2,000円×20名でトータル4万円になります。

年末調整に関連する業務はオプション費用が発生する

顧問税理士に依頼する場合でも、年末調整に伴う業務は顧問料に含まれず、オプション費用が発生する可能性があります。また、給与支払報告書や法定調書合計表の作成が別料金となる場合もあります。

 

税理士に依頼しようと考えている場合は、年末調整時期の前に一度相談し、依頼できる業務の範囲と費用を確認しておくとよいでしょう。

 

石黒健太税理士事務所では、年末調整に関するご相談を受け付けています。顧問契約を結んでいる企業様でなくても相談できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

年末調整を税理士に頼むメリット

費用対効果を考えると、年末調整を税理士に頼んだ方がいいのか悩む方もいるでしょう。年末調整を税理士に頼むことで、経営者も従業員も安心できるメリットが多くあります。

年末調整業務の負担が軽減される

小規模事業所の場合は特に、労務専任の担当者を置いておらず、経営者や総務担当者が給与計算や年末調整を兼務している場合も多いものです。年末調整の時期になると、普段の業務に加えて年末調整業務を行わなければならず、大変だという声も聞かれます。

 

税理士に年末調整を依頼すれば、経営者や担当者の事務負担は大幅に軽減されます。会社側で対応が必要なのは、従業員からの書類収集や年末調整の結果を反映した給与計算など一部のみです。年末年始の忙しい時期に年末調整に煩わされることなく、本来の事業に集中できます。

知識不足や人的ミスが軽減される

年末調整では、給与収入や所得税額、各種控除額の計算をするため、紙で書類を作成する場合は特に人的ミスが起こりやすいといえます。また、知識が不足していると、正しく書類が作成できなかったり、期限までに提出できなかったりという問題が生じます。

 

後から誤りが見つかったら、訂正しなければいけません。源泉徴収票が誤っていたら、従業員の確定申告に影響が出る可能性もあります。税金の専門家である税理士に任せれば、手探りで年末調整を行わなければならない不安から解放されます。

従業員の安心につながる

税理士が年末調整を行うと、従業員にとっても安心です。給与や税金の計算に誤りがあると、従業員は会社に対して不信感を抱いてしまいます。

 

2箇所以上の事業所から給与を受けている人や、副業収入がある人、後から控除を追加したい人などは、会社からもらった源泉徴収票をもとに確定申告をします。記載に誤りがあると確定申告の計算も誤ってしまい、従業員が税金の面で損をしたり、訂正する手間がかかったりするかもしれません。

 

こうした誤りで従業員からの信頼を損なうのは非常にもったいないことです。税理士に任せれば、従業員も安心できる上に、専門家に依頼するという選択をした会社に対しても信頼が増すでしょう。

 

年末調整に関する不安や疑問が解消される

年末調整は、やるべきことが多い上に、前年と全く同じとは限りません。税制改正などで前年とは手続きの方法や提出書類の様式が変わる場合もあり、常に知識のアップデートが必要です。専門用語が多く、人によっては調べても理解するのに時間がかかるでしょう。

 

税理士に依頼すれば、自分でやらなければならないことが減るだけでなく、わからないことがあった際にすぐに聞くことができます。「これでいいのかな?」と不安を抱えながら手続きを進めなくてよいので、ストレスが軽減されます。

 

関連記事:いい税理士はすぐわかる?面談やホームページで見極めるポイントを解説

 

年末調整を税理士に頼むときに提出するもの

年末調整の手続きを税理士にやってもらうために、必要書類を揃えて提出します。

 

従業員に書いてもらう書類は、「扶養控除等(異動)申告書」、「保険料控除申告書」「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」、の3種類です。控除を受けるためには、控除証明書の添付が必要です。

 

また、年間で支払った給与の総額や、給与から引いた社会保険料や所得税の金額がわかる給与明細などの資料も会社から提出しましょう。以下では、各書類について詳しく解説します。

扶養控除等(異動)申告書

配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者がいるか、扶養している親族がいるか、本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に該当するかなどを記載します。該当する項目がない場合でも、従業員本人の住所と氏名などを書いて提出してもらいましょう。

 

この書類がない場合、給与から引く源泉所得税は乙欄で計算する必要があります。従業員の手取りにも影響するため、注意が必要です。

 

扶養控除申告書は、今年と来年の2年分が必要です。今年の分をすでに提出してもらっていれば、来年分だけです。来年分は、来年支給する給与から控除するべき源泉所得税を計算するために使います。

保険料控除申告書

生命保険料、地震保険料、国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険・国民年金などの社会保険料、iDeCoなどの小規模企業共済等の掛金を支払った人は、一定の金額を所得から控除できます。

 

保険料控除申告書に支払った保険料の内容や金額を記載し、控除額の計算をします。保険会社などから発行される控除証明書を添付してもらいましょう。

 

紙で提出してもらう場合、転記ミスや計算ミスがないかを控除証明書と照らし合わせて1件ずつ確認しなければなりませんが、税理士に依頼すれば確認作業は税理士に任せることができます。

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

3つの申告書が1枚にまとまっている様式です。

 

基礎控除は、所得控除のひとつで、所得金額が2,400万円以下の場合は一律48万円です。基礎控除申告書の部分では、給与所得とそれ以外の所得を合わせた所得金額を計算し、基礎控除の対象となるか、基礎控除の金額はいくらになるかを確認します。

 

配偶者控除等申告書の部分には、配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者の情報を記入します。従業員本人と配偶者の所得から控除額を計算しましょう。

 

所得金額調整控除は、年末調整の対象となる給与の収入が850万円を超える場合に記載が必要です。本人や配偶者、扶養親族が特別障害者に該当する場合や、23歳未満の扶養親族がいる場合に、一定の金額が所得から控除されます。

 

令和6年分は定額減税があるため、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称になっており、本人や配偶者が定額減税の対象かをチェックする項目が追加されています。

1年分の給料明細

従業員ではなく会社から税理士に提出する書類です。年末調整をするためには、1月から12月までに支払った給与の金額と、給与から控除した社会保険料や源泉所得税の金額を知る必要があります。年末調整をしない従業員も源泉徴収票の作成は必須ですので、退職者を含めた従業員全員分の1月から12月の給料明細を提出しましょう。

 

関連記事:年末調整とはいつからいつまでの収入が対象?12月分を1月支払いする場合の対処法を解説

各種控除証明書

保険料控除申告書に記載した保険料などは、控除証明書を添付します。従業員ごとに保険料控除申告書とセットで保管するとよいでしょう。

 

保険料の控除証明書は、10月下旬から11月頃に届く場合が多いです。生命保険や地震保険は各保険会社から、国民年金は日本年金機構から送られてきます。国民健康保険、後期高齢者医療保険、介護保険は証明書の添付が不要ですが、従業員自身が支払金額を知りたい場合は、領収書等を確認するか、自治体に問い合わせて確認できます。

その他の書類

ここまでに紹介した書類以外にも提出が必要な場合があります。例えば、年の途中で入社した人の前職の源泉徴収票や、年末調整で住宅ローン控除を受ける場合の住宅借入金等特別控除申告書などです。必要書類に漏れがないように、税理士と連携して収集することが大切です。

 

関連記事:源泉徴収票がないと年末調整はどうなる?対処法や間に合わないケースを解説

年末調整は気軽にご相談を!

年末調整を税理士に頼むと、従業員から提出された書類の確認から税額の計算、必要書類の作成と提出まで、一連の手続きを代行してもらえるため、自社で行うよりも大幅に手間が減ります。

 

従業員が少ない場合や、税務に詳しい担当者がいる場合は税理士に頼まなくても自社で対応できる可能性があります。しかし、年末調整業務に負担や不安を感じている場合は、税理士に頼むのは有効な選択肢です。

 

わからないことがあってもすぐに税理士に確認できる点や、ミスが生じやすい書類作成も専門家に任せることが可能です。経営者、労務担当者、従業員が安心できるというメリットもあります。

 

費用はある程度の相場はありますが、従業員数によって大きく変わります。税理士への依頼を検討している場合は早めに相談して、依頼できる業務の内容や費用を確認するのがおすすめです。

石黒健太税理士事務所では、年末調整に関する相談を受け付けています。年末調整を税理士に依頼するか悩んでいる方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

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