クラウド会計

クラウドソフトだけを使って自力で法人税申告はできる?

目次

みなさん、こんにちは税理士の石黒です。

起業して、法人を立ち上げたら必ず行わなければならない決算申告。「決算時期は忙しい」などと耳にすることもあるかと思いますが、決算作業とは具体的にどんな業務を行う必要があるかご存じでしょうか?また現在クラウドの会計ソフトを利用されている方で、自社で申告作業をやってみたいと考えられたことはないでしょうか?

今回は「クラウドソフトだけを使って自力で法人税申告はできる?」をテーマに、決算作業の全容や自分で申告する際に便利なソフトの紹介を行っていきたいと思います。

 

【今日の内容】

1.      法人の決算とは?

2.    申告業務をできる人とは?

       ①経営者自身

       ②税理士

3.  自分で申告業務ができるクラウドソフト2選

4.  クラウド会計を使って決算するのが向いている人

5. クラウドソフトを使って自力で申告する際の注意点

6. まとめ

【法人の決算とは?】

はじめに決算というものがどういった手続きなのかを簡単に説明します。

「決算」と一言にいいますが、多くの場合は申告業務も含んだ「決算申告業務」の事を総称して“決算”と呼んでいることが多いです。

会社は事業年度(一般的には1年間の、会社の利益を計算する期間のこと)が終了すると、その期間の利益の金額を確定する決算業務と払うべき税金を計算する申告業務を行います。

この二つの業務の事をあわせて、「決算」や「決算申告」と呼んでいます。それぞれ全く別の手続きなのでまずはこちらの区別をして頂きたいと思います。それぞれの業務は次のような目的のために行われます。

 

決算業務:会社の1事業年度の会計を完成させて、その期間の経営成績や期末時点の財産の状況などを確定し、その会社の利害関係者(銀行や株主)に情報を提供する

 

申告業務:決算業務で計算された利益を基にその事業年度の払うべき法人税等を計算する

 

次に決算申告の流れを見ていきたいと思います。決算申告は次のような流れで行っていきます。

 

  • 日々の会計入力の完了 ・・・会計ソフトでする作業
  • 1年間の利益を確定させる(決算整理仕訳など)・・・会計ソフトでする作業
  • 税金の額以外の部分の決算書を作成・・・会計ソフトでする作業
  • ③を基に申告書を完成させる・・・申告ソフトでする作業
  • 未払法人税等を計上して決算書を完成させる・・・会計ソフトでする作業

 

こういった流れで作業はすすんでいきますし、それぞれ対応するソフトが異なります。

次に作成書類です。決算と申告で作成する主な書類は次のような書類です。それぞれ作る書類が異なるので、先ほど記載した通り使うシステムが異なり、難易度も変わってきます。

 

◆決算業務:決算報告書

 

◆申告業務:法人税申告書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書・地方税申告書・消費税申告書など

 

以上が会社の決算の概要になります。いかがだったでしょうか?

ここで押さえて頂きたいのは決算業務と申告業務は全く別物ということです。

多くの方が一緒に考えているのですが、会社の会計を確定するのが決算で税金を確定するのが申告になります。

既存のクラウド会計ソフトではこのうち決算業務までをできるものが多く、申告業務はできない仕様となっていることがほとんどです。

そのため、申告まで自社でやる場合には申告の機能も付いているクラウドソフトを選ぶか、別で申告用のクラウドソフトを利用する必要があります。

 

【申告業務をできる人とは?】

次に申告業務ができるのは誰なのかを見ていきたいと思います。申告業務を行うことが認められているのは、以下の2パターンのみです。

 

経営者自身(自社の経理担当含む)

ご自身(自社)で申告書の作成を行う方法です。日々の会計を入力し、法人税の申告を行います。自分で作業を行うため、会社全体のお金の流れを把握できるといった点や、費用がかからないといったメリットがあります。

 

税理士

次に税理士に申告業務を委託する方法です。顧問契約を結び、節税や資金繰りといったサポートを受けながら申告を行えます。より正しい決算報告書、税務申告書が作成できるメリットがあります。デメリットとしては費用がかかることや税理士によって得意分野やサービス内容に差があり、自社にあった税理士を探すのが難しい点です。

 

申告業務は税理士の独占業務となっており、他人の申告業務を行うことができるのは無償であっても税理士のみとなっています。(税理士資格のない方が申告書の作成や作成のための相談を受けることは無償であっても税理士法違反です)そのため自社で行うか税理士に委託するかの2択になります。

 

【自分で申告業務ができるクラウドソフト2選!】

ここでは、経営者自身で申告を行う際に利用できるクラウドソフトをご紹介します。先ほど記載した通り法人版のクラウド会計ソフトのほとんどは決算業務までが可能となっており、申告業務に対応していないものが多いですので、申告も自社で行う場合には次のソフトをご検討頂ければと思います。

 

★Freee★

クラウド会計といえば、マネーフォワードと2大勢力と言われているfreee会計。マネーフォワードでは申告業務まで行うことは出来ませんが、freeeでは2017年から申告作業も行えるようになりました。クラウドのソフトで会計入力から決算業務、申告業務までのすべてを行いたい方におススメのソフトです。

申告業務は税理士に委託される方でも、決算書作成までをfreeeを使うという方も多いので、会計業務だけの場合にも問題なく利用できます。

【サービス名】会計事務所向けfreee申告プラン

【料金】年払いで24,800円/年額(税別)

【URL】https://www.freee.co.jp/lp/ctax/02/

 

★全力法人税★

法人税の知識0でも自分で申告できる!と謳っている全力法人税。元国税調査官と税理士が完全監修していることもあり、自分で申告したい人には昔から人気のソフトウェアです。

こちらは申告用のソフトなので会計入力と決算業務については別のクラウド会計ソフトで行ったうえで申告書作成のみに使うことになります。

【サービス名】全力法人税

【料金】21,800円/年度(税別)※事務所が一カ所の場合です。

【URL】https://japanex.jp/HojinFinalReturns

 

【クラウドソフトを使って申告するのが向いている人】

この章ではどういった方がクラウドソフトでの申告にむいているのかを記載させて頂きます。自社で申告業務を行うメリットとしては「費用がかからないこと」と「全体像を理解できる」ことがあげられますが、費用対効果を考えると次のような方に限られると考えております。

★ITリテラシーの高い人

★会計入力を正確に行える人

★申告書作成に関する基本的な知識をお持ちの方

★時間がある人

★事業規模が小規模な人

 

会計については簿記の検定などで知識をお持ちの方が多いのですが、申告書作成までになると多くの方が知らない部分だと思います。説明書等はありますが、そもそもの専門用語が難しいので、シンプルな商売をされている方以外は委託されることをおすすめします。

 

【クラウドソフトを使って自力で申告する際の注意点】

この章では自力で申告業務を行うことのデメリットを記載させて頂きます。自主申告を予定されている方は次のことをちゃんと検討して頂ければと思います。

 

・時間と手間がかかる

社内で申告業務をおこなうには簿記の知識以外に税務に関する専門的な知識が必要になってきます。無料相談等もありますが、対応が限られております。そのために時間と手間がかかります。

 

・支払う必要のないお金を払う可能性がある

正確な申告書を作成できないと、納税額が過大になる可能性があります。また、逆に少ない税額を計算してしまい、後日税務調査で指摘さるようなことも考えられます。そうなった場合には本来払うべき税額と別に延滞税やペナルティの加算税など本来は払わずに済んだ税金を負担する可能性があります。

 

・消費税の申告は影響額が大きくなる

自分で申告する際に特に難しいのが消費税の処理です。消費税は計算方法によって負担額が大きく変わる税目です。システム提供側も一度問い合わせるようにと記載があるほどですので、消費税を払う義務のある方で「簡易課税や原則課税」「課税区分」と言われて意味がわからない方は注意しましょう。

 

【まとめ】

いかがでしたでしょうか?弊社としての結論は次の2点です。

 

★マイクロ法人のようなシンプルで小規模な会社については自身での申告が可能

⇒おすすめは申告のみで安い税理士に委託する方が費用対効果はいい

(ご自身の時間売上と比較してください)

★拡大路線の方やある程度の規模がある方は会計・決算業務は自社で行い申告業務は税理士に委託する。(例外:税理士事務所経験者を雇って自主申告を行う)

 

こういった形かと思います。

手数料の事を考えて、自主申告を検討される方が多いと思うのですが、リスクや手間を考えると専門領域は委託する方が費用対効果は高いです。逆にある程度の知識でできる会計入力の業務についてクラウドの仕組作りや社内の人材育成をしていくことがおすすめです。

 

クラウド会計の仕組作りについては、弊社は得意としております。何かあればぜひお声がけください。

 

以上で本日の内容は終わりにしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。