創業計画書の作り方

創業において「事業の見通し」は根拠を計算式で示す

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創業において「事業の見通し」は根拠を計算式で示す

半年くらいで「軌道に乗る」メドを立てる

「事業の見通し」については「創業当初」と「軌道に乗ったあと」の二つに分けて記入します。
その「軌道に乗ったあと」の欄の「日付」は自分自身で記入する形になっています。
これが少々“クセもの”です。

通常は当月や翌日にすぐに軌道に乗るとは考えられず、そうであれば、「お金を借りなくてもいいのでは?」と思われてしまいます。
かといって2年後、3年後に軌道に乗るというのも長すぎで、「その期間の生活のやりくりを融資に頼るのは身勝手だ」と判断されるかもしれません。
一般的に考えると、1年後にはメドが立つというのでは、事業をスタートさせるあなた自身に少し甘いところがあるといえるでしょう。

もしくは、最初から自分のビジネスを大きなものとして考えすぎているのかもしれません。
「これが正解です」という期間はありませんが、特殊な事情がない限り「半年後」くらいが妥当でしょう。
半年後くらいにめどを立てるつもりで事業の見通しを捉え、それを数字で表現していくことを心がけてください。
ちなみに、日本政策金融公庫の調査によると、事業の開始からおおよそ1年のうちに黒字基調となった企業は65%に上るとされています。

この欄でも問われる「計算の根拠」

この「事業の見通し」欄の右側に、「売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算した根拠」を記入する欄があります。
このうち、売上高の予測の計算方法についても触れておきましょう。売上高の予測は自分の会社の実情に即して妥当な方法を選択すればよいのですが、「創業の手引」にもあるように、基本的にには業種・業態によっていくつかのパターンに分類できます。

①店舗売りのウェートが大きい販売業

→単位面積(1㎡または1坪)あたりの売上高×売り場面積
で計算します。売り場面積が50㎡で、1㎡あたりの月間売上高が10万円なら、10万円×50㎡で500万円。
年間売上高だと12倍して6000万円と計算できます。

このような販売業では、仕入れにいくらかかるかによって利益が大きく変わります。
先の計算で月300万円の仕入れをすると、月の粗利益は200万円、その粗利益から店舗の家賃や借入金の返済、さらにパート・アルバイトの人件費をまかなうとすると、黒字化するのは簡単ではないということがわかります。

②飲食業や理容・美容業といった店舗を持つサービス業関係

→客単価×設備単位数(座席など)×回転数
で計算するとよいでしょう。
3台の椅子がある美容室で、1台あたりの回転数が1日3.5回転、客単価が4000円として月に25日稼働すると、月の売上高は4000円×3.5回転×3台×25日で105万円。年間売上高は1260万円です。

この売上予測の数字を上げるには、客単価、設備単位数、回転数のそれぞれの項目を増やすことができるかどうかを考えます。
単なる数字合わせではなく、「実際にどの数字を上げることが可能か」と現実的な経営状況を踏まえて判断することが大切です。
また、この場合、3台の椅子を創業者1人で切り盛りするのは大変で、美容師1名を雇うとなれば、その分の人件費も考慮に入れないといけません。

③自動車販売、化粧品販売、ビル清掃など労働集約的な業種

→従業員1人あたりの売上高×従業員数
で計算できます。自動車の販売業で、従業員が5名で、1人当たりの月売上高が200万円とすると、月の売上予測は200万円×5人で1000万円と計算できます。
労働集約的な業種では、文字通り従業員数とともに労働の質が売上を左右します。
優秀な人を採用できるかどうかに加えて、従業員教育が大きな鍵を握ります。

④部品加工、印刷、運動業など、設備依存型の業種

→設備の生産能力×設備数
設備に依存する面が大きい業種の場合は、設備単位1あたりの生産能力を計算の基準とするとよいでしょう。
たとえば部品加工業で、旋盤が2台あり、1台あたりの生産能力が1日8時間稼働で300個加工でき、1個あたりの加工賃が100円で月に25日稼働とすれば、100円×300個×2台×25日で月の売上高は150万円になります。
年間を通してみると、1800万円です。他の業種に比べて1人当たりの売上高の観点からみれば低い印象がありますが、効率的な設備稼働にすることにより、売上の上昇が見込めるという面もあります。
これは、倉庫業などにも言えることです。
設備の負担は大きいのですが、それを乗り越えれば、あとは稼働効率を上げることが重要になる業種です。